会計・経理

1.フィンテックとは

フィンテックとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。金融やIT業界だけでなく、会計業界でも注目を集めています。フィンテックはITを使い、さまざまな金融ソリューション(問題解決)を提供するサービス。基本的な技術は以下の3つです。

(1)API(Application Programming Interface)

APIは、あるシステム(ソフトウェア)で管理するデータなどを外部の他のプログラムから呼び出して使用する手順を定めた規約です。ソフトウェアの一部を Web 上に公開することによって、外部から誰でも利用することができるようになります。

自分のソフトウェアに他のソフトウェアの機能を埋め込んだりすることができるので、アプリケーション同士で連携することが可能です。

ネットワークを通じて外部からソフトウェアを呼び出すことができることから、「WEB API」を呼ばれることもあります。たとえば、会計ソフトがデータを取得し、他のサービスと連携させることなどができます。

(2)AI(Artificial Intelligence)

AIは人工的に作られた人間のような知能のことで、コンピューターに人間と同じような思考力を持たせる試みです。 具体的には、人間の使う言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータープログラムのことをいいます。マイクロソフトやグーグルなどのIT企業が開発を進めています。

(3)ブロックチェーン(Blockchain)

ブロックチェーンとは、分散型台帳技術、または分散型ネットワークのことをいいます。「分散型」とは、取引データを記録する元帳が、ネットワークにつながっているすべてのノード(パソコンなどのコンピュータ)に分散して保存されていることです。

ブロックチェーンは、ビットコインに代表される暗号通貨の主要技術で、データの改ざんがほぼ不可能です。伝統的な方式では、銀行や証券会社などが元帳を持って取引データの情報を集中管理する「中央集中管理型」でした。

これに対して、ブロックチェーンは元帳が分散して保有管理される「分散管理型」という意味で、金融のフレームワーク自体を大きく変えるポテンシャルがあります。取引記録をブロックに入れて数珠つなぎにして扱うことから、ブロックチェーンと呼ばれています。

2.フィンテックによる会計・経理業務とは

フィンテックにより、企業の経理部分が手作業で行なってきた様々な事務処理を合理化・自動化することができます。これまでもテクノロジーが企業に定着するにしたがい、多くのルーティンワークが消えていきました。

しかし、ITの導入が比較的遅れていた経理部門はいまだに多くのルーティンワークが残っています。フィンテックが対象とする事務処理は以下のようなものがあります。

1給与の自動計算
2経費の精算
3売掛金と入金のマッチングによる自動振込
4確定申告の自動計算
5自動仕分けによる経理事務

こうした事業がフィンテックにより可能になり、単純作業しかできない経理は不要になります。今後、AI(人工知能)の導入はますます広がり、経理業務に大きな影響を及ぼすことが予想されます。

また、監査法人においても AI の導入が広がり、次世代監査システムの開発が進んでいます。たとえば、企業の帳簿データを解析し、通常の値段よりも大幅に高い単価での取引など不正の兆候を見つけることが可能です。また、財務諸表の解析・過去に不正があった企業の例に照らし、類似する特徴がないかを洗い出すこともできます。

これまで、人が行ってきた時間と手間のかかるチェック機能をAIに任せることができるのです。テクノロジーの進化は人間の想像を超えており、今後は AI が担う領域も大きく広がっていくことでしょう。現在おこなっている、事務作業やルーキールーティン作業、チェック作業などはテクノロジーに代替されていくことは明らかです。

銀行でも、顧客データから融資の可能性をスピーディーに判断することも当たり前の時代になっています。

現在のフィンテックは個人向けのサービスが中心ですが、今後は企業向けも広がっていくことが予想されます。すでに財務管理・資金調達・決済・送金などで新しいサービスが登場。企業を取り巻く新しい金融サービスの動向には常に関心を持っておく必要があります。

それでは、フィンテックが経理業務に取り入れたらどうなるのでしょうか。具体例を見ていきましょう 。

3.経理業務における代表的なフィンテック活用事例

(1)送金サービス

国際間での送金は、フィンテックを利用することにより便利になります。従来の国際送金では、「手数料+処理日数」が必要でした。しかし、オンライン上で送金が完了するサービスを利用することで、手数料を抑えながら瞬時に国際送金できます。

その際、為替レートが有利なタイミングで送金を行うことも可能です。グローバル化が進み、海外企業や海外支店との送金機会が増えるなか、フィンテックによる送金サービスの利用価値は高まっています。

(2)決済サービス

フィンテックを利用することにより、クレジットカードなど決済サービスの導入が安価で簡単になります。たとえば、スマートフォンやタブレットに専用のリーダーを接続することによりクレジットカードで決済できるようになり、決済手数料も安くなるサービスがあるのです。

スマートフォンやタブレット決済端末に活用するアメリカの「Square」や日本の「コイニー」などは、小規模な店舗では導入の負担が大きかったカード決済を普及させました。

さらに、決済履歴をクラウド上で管理・確認できるサービスや、ビットコインなどの仮想通貨も新しい決済サービスとして注目されています

(3)財務管理

財務管理をスムーズにするためのツールも次々と登場しています。オンラインバンキングやクレジットカードを利用すれば、自動仕分けができるなど高い利便性が魅力です。

さらに、クラウド会計が請求書の発行や代行まで請け負うことで、売上高や利益・取引先情報を把握し、これらを与信情報としてクレジットカードによる支払・提供する新しいサービスも誕生しています。

インターネット環境とパソコンがあれば利用できる「クラウド会計サービス」が代表例です。たとえば、クラウド会計ソフトの「 freee」や「マネーフォワード」、請求書管理の「Misoca」や「楽楽明細」などがあります。自社サーバーの構築など初期投資の必要がないことから、中小・零細企業や個人事業主に広がっています。

4.フィンテックによる経営・業務支援システムとは

(1)会計ソフトの導入

会計ソフトを導入することにより、煩雑な入力業務を補佐してくれるだけでなく、経営状況を分析するレポートもすぐに出力できます。経理業務を効率化することによる人件費の削減だけでなく、経営判断の迅速化も可能になるのです。

これまでの企業の会計処理は、専用の会計ソフトを使用するか銀行との連携ソフトであるファームバンキングソフトを使用することが一般的でした。

ファームバンキングは、インターネット回線を使用せず一般電話回線でデータ伝送を行います。企業はファームバンキングで使うパソコンを他のパソコンと離した環境にすることにより、インターネットからのサイバー攻撃を防止することができるからです。

現在は「クラウド型の会計サービス」が普及しています。これは会計サービスにとどまらず、人事管理・顧客管理等を含む企業のバックオフィス業務を総合的に提供するサービスです。

クラウド型とは、クラウドコンピューティングを活用するタイプで、会計ソフトのユーザーがインターネットを通じて会計ソフトサービスを提供するデータセンターのサーバーにアクセス。そこに保管してあるソフトウェアやデータなどを利用できるシステムです。

(2)フィンテック導入のメリット

フィンテックを導入していられる一番のメリットは、経理入力や経理の精算にかかる時間や手間を大幅に削減できることです。また、決済サービスを充実させることで、顧客満足度も上がります。

さらに、銀行の取引データやクレジットカードの情報を会計ソフトに読み込ませて業務の効率化を図ることができます。販売管理システムなどとも連携することができるので、一度設定しておけば定型的な処理を間違いなく処理することができるため、会計・経理業務の飛躍的な効率化が図れるのです。

(3)フィンテック導入のデメリット

クラウド会計がターゲットとする企業は、個人事業主もしくは小規模事業主が中心。新規取引への参入障壁を下げて、会計だけではなく人事や労務へとサービス領域を広げていくことがクラウド会計の狙いです。

しかし、新しいサービスなので注意点もあります。まず、サービスの安定性が未知数であることです。経理は企業の根幹を担う業務なので、情報の漏洩やサービス終了によって被るリスクは非常に大きくなるのです。

また、経理業務は分割支払いや按分計上・相殺など例外処理が数多くあります。現状だと経費精算・家計簿レベルのものが多く、とくに上場企業などでは内部統制の面からも導入するハードルが高い面があります。

さらに、フィンテックはクラウドを使うなどインターネットを通じて利用するサービスがほとんどなので、オンライン状態でなければ業務ができないというデメリットもあります。業務形態が大きく変わるので、企業規模が大きければ大きいほど導入に向けての体制や社内調整などにかかるコストが高くなるという懸念もあります。

5.会計・経理業務におけるフィンテックベンチャー

(1)freee

出典:freee

freeeはクラウド型の経理業務・給料計算などのサービスを提供するフィンテックベンチャーです。簿記や経理の知識に詳しくなくても利用でき、入出金明細を取り込む自動記帳などの特徴があります。

freeeが対象とする企業は、主としてベンチャー企業をはじめとする中小企業で、会計処理や給料計算といった日常業務のサポートを中心に、事業管理を実施するソリューションの提供を行っています。

バックオフィスを効率化するクラウドERP(ヒト・モノ・カネを有効活用する計画)で、個人事業主や中小企業を中心に人気を集めているのです。

freeeの中心プロダクトである「クラウド会計ソフトfreee」は、中小企業のバックオフィス業務の自動化を実現するソフトとして活用。経理簿記に詳しくなくても使用できるように設計されています。

具体的には、日々の記帳から請求書や納品書の作成、決算書・経費精算・レポート作成が可能。また、クレジットカードや銀行口座を登録しておくと、取得した利用履歴明細に記載された摘要欄から適切な勘定科目を推測し、自動で仕訳して会計帳簿を作成できます。データはクラウド上で暗号化されて保存されるため、パソコンの紛失や破損があっても安全性は確保されます。

(2)マネーフォワード

出典:マネーフォワード

マネーフォワードは、バックオフィスの総合的なサービスをクラウドで提供しています。

1.銀行口座と連携し、データ入力や仕訳を自動化
2.スマホでレシート読み込んで経費精算
3.請求書の作成から郵送までクラウド上で可能

などの特徴があります。また、みずほ銀行はマネーフォワードと提携して企業向けの会計支援サービスを提供。給与計算や給与振込データの作成・銀行宛送信といった一連の給与支払事務の自動化を実現しています。

企業は、マネーフォワードからワンクリックするだけで、みずほ銀行への給与支払依頼が完了するなど、事務処理の効率化の向上を期待することができるのです。

(3)misoca

出典:misoca

misocaは2011年にスタートした見積書や納品書・請求書の作成・管理サービス。主として中小企業やフリーランス向けにパソコンやスマホなどのモバイル端末で請求書の作成や管理サービスを提供しています。

2016年には業務ソフトウェア「弥生シリーズ」を提供する弥生株式会社に買収され、会計機能の連携などを行っています。

misocaで請求書を作る時は、豊富なデザインテンプレートの中から好みのものを選んで文字を入力するだけです。イラストやロゴを入れたオリジナルの請求書が素早く簡単に作成できます。

また、見積書から納品書・請求書への変換や、請求書から領収書の作成も簡単に行えるので、本業に集中することができます。スマホアプリも利用できるので、外出先や移動中のスキマ時間を効率的に利用することが可能です。

6.まとめ

企業が手作業で行っている入金と売掛金との照合や経費精算、給与計算などの会計処理を、ソフトウェアやクラウドコンピュータの活用で自動処理するサービスが普及しています。これにより低コストで効率的な事務処理を行うことができます。

経理や会計部門には多くのルーティンワークが残っていますが、フィンテックの活用により多くの業務が効率化できるだけでなく、経営判断の迅速化も進んでいくでしょう。