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仮想通貨の取引に「銀行法」の規制が及ぶ?

 

ビットコインなどの仮想通貨は、近年どんどん存在感を増しています。平成29年4月からは改正資金決済法という法律が施行されて、仮想通貨にも本格的な法規制が及ぶようになりました。

 

お金の取引を規制する法律には「銀行法」がありますが、仮想通貨には銀行法は適用されないのでしょうか?仮想通貨も「お金」だと思われているので、取扱いの際に銀行業の登録が必要になるのかとも思えます。

 

今回は、仮想通貨取引に銀行業による規制が及ぶのか、解説します。

 

1.仮想通貨を取り扱う業者は、銀行ではない

バツのポーズをしている女性

ビットコインなどの仮想通貨は、「お金」の1種だと思われていることが多いです。

ただ、お金の取引を取り扱っているのは、銀行です。それでは、仮想通貨を取り扱っている業者も「銀行」なのでしょうか?

 

実際に、仮想通貨を取り扱っている業者は、銀行ではありません。

たとえば、ネットなどで簡単に仮想通貨の取引所で口座を開くことができますが、そういった取引所は、銀行業の登録をしていません。「仮想通貨交換業」という資格で、営業を行っています。

 

これは、いったいどうしてなのでしょうか?

このことを理解するためには、そもそも銀行とは、法律上どういったものなのかを理解しておく必要があります。

 

2.銀行とは

 

銀行については、銀行法に定義があります。

まず、「銀行」とは、内閣総理大臣の免許を受けて「銀行業」を営むものです。

 

そして、「銀行業」とは、次のいずれかの営業です。

  • 預金または定期積金の受入れ、資金の貸付けまたは手形の割引をあわせて行う
  • 為替取引を行う

 

ビットコインなどの仮想通貨を取り扱う業者は、定期預金などの預金を受け入れているわけではありませんし、貸付や手形の割引きもしていません。

そして、基本的には「為替取引」もしていません。

 

そこで、仮想通貨を取り扱う業者は、銀行である必要がなく、通常銀行業の登録をしていないのです。

ただし、銀行が仮想通貨の取扱いをすることは可能ですし、最近では、実際に銀行が、仮想通貨の発行に乗り出してきています。

 

3.為替取引とは?

 

先ほど、仮想通貨の取引業は、基本的には「為替取引」に該当しないと言ったのですが、

このことにはもう少し説明が必要です。

 

それは、仮想通貨取引においても、ときには「為替取引」に該当するケースがあると考えられるためです。その場合、仮想通貨取引業者が銀行業の登録をしていないと、銀行法違反になってしまうおそれがあります。

 

そこで、以下では「為替取引」とは何か、ご説明します。

 

「為替取引」とは、離れた場所にいるもの同士が、直接現金を受け渡すことなく、資金を移動することです。

典型的な為替取引は、預金の「送金」です。

 

振込先などに預金を送金するときには、送金者と送金相手は異なる場所にいますが、振込送金を利用することにより、お金を移動させることができています。

 

そして、このような「為替取引」を仲介することができるのが「銀行」なのです。銀行は、内閣総理大臣から「銀行」としての免許を取得しているので、合法的に「為替取引」を行うことができます。

 

4.無登録で銀行業、資金移動業を営んだ場合の罰則

 

もし、無資格で為替取引業を営んでしまったら、どのようなことが起こるのでしょうか?

銀行法は、銀行業登録をせずに銀行業を営むと、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑を科すと定めています(銀行法61条1号)。

 

そこで、もしも仮想通貨の取引業が「為替取引」に該当するなら、仮想通貨取引業者は、銀行として登録しておかないと、上記のような重い刑罰を受けることになってしまいます。

 

5.合法的に、為替取引業を行う方法

 

5-1.資金移動業の登録をする

 

合法的に「為替取引」業を行うためには、基本的に、銀行登録をしなければなりません。

ただ、銀行業の登録をすることは、簡単ではありません。非常に厳しい要件があるので、どのような企業でも「銀行」として、為替取引を行うことはできません。

 

しかし、それでは規制が厳しすぎることが問題となりました。そこで、規制緩和が行われ、現在では「資金移動業」の登録をした場合、為替取引業を取り扱っても良いこととされています(資金決済法2条2項)。

 

つまり、資金移動業の登録をしていたら、為替取引業を営んでいても、銀行法によって処罰されることはないのです。

資金移動業の登録をしている業者のことを、「資金移動業者」といいます。

 

5-2.資金移動業とは

資金決済法は、資金移動業を行う資金移動業者について、次のように定めています。

 

  • 為替取引を、業として営んでいる
  • 銀行許可を受けていない
  • 取引額の上限額は、100万円

 

つまり、銀行としての許可を受けていないけれども、常々営業行為として為替取引を行っている場合、取引の上限額が100万円までなら、資金移動業者として登録をして、為替取引をすることができる可能性がある、ということです。

 

5-3.資金移動業の登録が認められるための要件

 

ただ、為替取引も、人の大切なお金を取り扱う仕事ですから、

どのような業者でも資金移動業の登録が認められるわけではありません。

 

銀行業の登録よりは簡単ですが、それでも以下のような要件を整えていないと、登録を拒否されてしまいます。

 

  • 財産的な基礎が確立されていること
  • 資金移動業(為替取引)を確実に遂行するための体制を整えていること
  • 法律を遵守することができる体制が確立されていること

 

おおむね、上記のような要件が揃っていると、資金移動業の登録ができます。

そして、資金移動業の登録をした業者は、利用者を保護するために、さまざまな規制を受けます。

 

まずは、きちんと資産を保全しなければなりませんし、入手した顧客などの情報を適正に管理しなければなりません。また、行政庁による監督を受けることになりますし、取引の際の本人確認なども義務づけられることになります。

こうした決まりを守らないと、行政指導を受けたり、業務停止されたり、登録を取り消されたりする可能性があります。

6.仮想通貨取引は、為替取引になる?

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それでは、仮想通貨の取引が「為替取引」に該当するのでしょうか?もし該当するならば、ビットコインなどの取引をするときにも、銀行や資金移動業者に依頼しなければならない、ということになってしまいます。

為替取引の対象になるのは「資金」なので、仮想通貨が「資金」に該当するのか、検討しましょう。

6-1.仮想通貨とは

 

仮想通貨は、資金に該当するのでしょうか?それを理解するには、そもそも仮想通貨とは何か、把握しておくことが必要です。

仮想通貨については、資金決済法において、定義がされています(改正資金決済法2条5項)。

  • 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
  • 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 

規定内容はわかりにくいものとなっているのですが、まとめると、「インターネットにおいて移動が可能なものであり、不特定多数の人を対象に、商品やサービスの代金支払いや、購入や売却ができるもの」ということになります。

 

6-2.仮想通貨は、基本的に「資金」に該当しない

 

それでは、仮想通貨は、為替取引の対象になる「資金」に該当するのでしょうか?

法律上、「資金」というのは、「金銭または、簡単に金銭に変わるもの」「必ず一定の金額に換金できるもの」であると考えられています。現金、預金や外貨が、「資金」の典型例です。

 

これに対し、価値が変動するものや、簡単には換金できないものは、基本的に資金に該当しないと考えられています。たとえば、株式や債券などは「資金」ではありません。

仮想通貨は、価値が激しく変動しますし、現在、外国との取引の決済手段としても認められていません。

 

また、資金決済法における定義でも「財産的価値」と表現されていて、「通貨」としての取扱いを受けていません。

さらに、税制上も、仮想通貨は「お金」ではなく「資産」として取り扱われています。

 

すなわち、仮想通貨は、「現金」や「外貨」「預金」などとは異なり「宝石」や「絵画」「不動産」などと同じ「資産」としての取扱いを受けるのです。

 

もっと言うと、仮想通貨は「金融商品」としてすら、扱われていません

そこで、仮想通貨は、「通貨」とは言うものの、実際には「お金」とは全く異なるものです。

 

今、世の中で「仮想通貨」という言葉が出回っていることによって、多くの人の誤解を招いていますが、

実際には仮想通貨はお金ではなく、単なる資産、モノにすぎない扱いです。

このようなことを考えると、仮想通貨は、基本的に「資金」に該当しないと考えるべきです。

例外的に、「資金」に該当するケース

 

ただし、例外的に、仮想通貨が「資金」となり、仮想通貨による取引が、為替取引になってしまうケースも考えられます。それは、たとえば、人からお金(円などの現実の通貨)を預かって、それを仮想通貨に換金して、それを海外の別の拠点で、現地通貨などで現金化することにより、事実上「送金」をしたのと同じ結果を発生させた場合です。

 

この場合、中間で仮想通貨を使ってはいますが、実際には「お金」を送金したのと同じ結果になっているので、資金を移動させたこととなり、為替取引に該当する可能性が高いです。また、仮想通貨の価値を固定している場合にも、「資金」とみなされる可能性があるので、注意が必要です。

 

そこで、仮想通貨を使っていても、仮想通貨の交換を伴う送金取引を業として行う場合や、レートを固定している場合などには、「資金移動業」の登録をしないと、銀行業違反になってしまうことになります。

 

今は、仮想通貨取扱い業者は、「仮想通貨交換業」という登録をすることで、仮想通貨の取扱いをしています(なお、平成29年10月12日時点において登録業者は11社です。現在、その他に19社が登録申請中です。)。それ以外に、銀行業や資金移動業の登録をしている業者は、ほとんどありません。

実際に、現時点において、仮想通貨の取扱いに銀行法による規制が及ぶ場面は、少ないことは事実です。

 

しかし、将来、仮想通貨がさらに普及してきて、さまざまな利用方法が発展してきたら、仮想通貨の取扱いにおいても、銀行業による規制が及んでくる可能性が十分にあります。

そのときには、きちんと銀行業や資金移動業の登録をしている業者を選ばないと、利用者の方にも思わぬ不利益が及ぶ可能性があります。

 

大切な資産である仮想通貨を預けている業者が違法とされて、刑事罰を受けたり行政処分を受けたりすると、利用者としても不安を感じるでしょうし、最悪の場合、預けている仮想通貨が一部または全部、返ってこなくなってしまうケースもないとは言えません。

そこで、仮想通貨の取引業者を選ぶときには、きちんと法令を遵守している業者を選ぶべきです。

 

安全に仮想通貨を利用するために

 

以上のように、仮想通貨は、基本的には「お金」や「通貨」ではありません。

ということは、送金(お金を送ること)に対する規制である、「為替取引」に対する規制を受けることはありません

 

銀行法による規制が及ばないので、仮想通貨取引業を行う業者は、銀行である必要はありませんし、資金移動業の登録をする必要もありません。

 

しかし、例外的に、資金移動業の登録が必要なケースも考えられます。

そういった場合、仮想通貨交換業の登録しか受けていないと、業者は違法となります。

 

現在、ネット上での仮想通貨取引所などで、通常のビットコインの取引をするだけであれば、特に問題になることはないかもしれません。しかし、今後、ビットコインによる決済がどんどん増えてくると、上記のような問題が具体的に発生してくる可能性もあります。

 

仮想通貨法は平成29年4月1日に施行されたばかりですので、仮想通貨の法律的な解釈や運用は、まだ始まったばかりで、あまり内容が定まっていないというのが実情です。

 

これからどのような方向に進むとしても、いろいろな可能性を知って、適切に対処することが、身を守るコツです。

 

今回の記事を参考に、ビットコインを使った取引では、どのような業者にどれだけの権限が認められるのか、把握しておくと良いでしょう。