仮想通貨交換業の登録が必要なケースと、申請の方法について

 

平成29年4月1日から、資金決済法が改正され仮想通貨の取扱いの際には、仮想通貨交換業の登録が必要になりました。

 

そうだとしても、具体的には、どのような業務を行うときに仮想通貨交換業の登録が必要なのでしょうか?

仮に、個人間で仮想通貨の交換をするときなどにも仮想通貨交換業の登録が必要だとすると、大変面倒です。

 

また、仮想通貨交換業の登録の方法や、無登録で仮想通貨の取扱いをした場合の罰則なども把握しておきましょう。

今回は、仮想通貨交換業の登録が必要なケースや、登録申請の方法について、解説します。

 

仮想通貨交換業者とは

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最近、ビットコインの人気が世界的に過熱しています。
アメリカの宝石店などでは、店頭に、毎日の金価格と銀価格、そしてビットコインの価格を並列して表記しているお店もあるくらい、ビットコインは日常に溶け込みつつあります。

 

ただ、仮想通貨は金銭的な価値があり、適当に取り扱われると、利用者も大きな損害を被りますし、マネーロンダリングなどに利用されるおそれも高いです。

 

そこで、法律は、仮想通貨の取扱いができるのは「仮想通貨交換業者」に限るとしています(資金決済法63条の2)。

 

仮想通貨交換業の登録をしていないものが仮想通貨の取扱いを行うと、資金決済法という法律違反となりますし、罰則を科されることもあるので、注意が必要です。

 

仮想通貨交換業者とは、以下のような行為を業として行うものです(資金決済法2条7項)。

  • 仮想通貨の売買または他の仮想通貨との交換
  • 上記の行為の媒介、取次ぎや代理
  • 上記の行為に関して、利用者の金銭や仮想通貨の管理をすること

 

つまり、ふだんの業務として、ビットコインを円やドルなどの別のお金を交換したり、ビットコインを他の仮想通貨と交換したり、それらの行為を代理したり、利用者のお金を預かったりするときには、必ず仮想通貨交換業の登録が必要だということです。

 

仮想通貨交換業者の登録が必要なケースと不要なケース

 

以下では、具体的に、どのようなケースで仮想通貨交換業の登録が必要となるのか、見ていきましょう。

 

個人がビットコインの取引をする

 

まず、個人が友人とビットコインの売買をしたケースなどを考えてみましょう。

 

たとえば、友人にお金を渡してビットコインを買ったり、ビットコインを売ってお金を支払ってもらったり、別の仮想通貨と交換してもらったりしたケースです。

この場合には、「業として」ビットコインの取引をすることになりません。

 

業として、というのは、一般の公衆に対して、反復継続して行うことです。

ですので、単発で友人や家族などとビットコインの取引をしても、「業として」には該当せず、仮想通貨交換業の登録は不要です。

 

ただし、個人であっても、日常的に不特定多数に向けたビットコイン交換を行い、商売にしていたら、仮想通貨交換業の登録をしていないため、資金決済法違反となる可能性があります。

 

企業がビットコインの取引や仲介をする

 

では、企業がビットコインの取引を仲介したり、ビットコインの売買をしたりする場合には、どうなるのでしょうか?

この場合にも、「業として」に該当するかどうかが問題となります。

 

企業が、その商売の内容として、不特定多数の人に向けて、ビットコインの購入や売却の仲介を行ったり、他の仮想通貨との交換を行ったりするときには、仮想通貨交換業の登録が必要です。

無登録営業をすると、資金決済法による罰則が適用されます。

 

ただ、企業であっても、単発で、資産としてビットコインを購入しただけのケースなどでは、「業として」とは言えないので、仮想通貨交換業の登録は不要です。

 

ビットコインで支払いをする、支払いを受ける

 

それでは、商品やサービスを購入したときに、ビットコインによって支払いをするときや、支払いを受けるときには仮想通貨交換業の登録が必要なのでしょうか?

 

これについても、基本的に登録不要です。

仮想通貨交換業が必要なのは、仮想通貨を、お金や他の仮想通貨と交換したケースであり、支払いに充てただけであれば、制限を受けないからです。

 

ビットコインによる支払いは、法律的には「代物弁済」となります(民法482条)。

代物弁済とは、お金の代わりに「モノ」によって支払いをすることです。

 

仮想通貨は、「通貨」とは言っても、法律上は「お金」として取り扱われていません。

宝石や骨董品などと同じ、単なる「資産」として取り扱われています。

そこで、ビットコインによって支払いをすることは、お金の支払いではなく、モノによる「代物弁済」となります。

 

代物弁済をしたり、代物弁済を受けたりすることについては、特に資金決済法による規制が行われていません。企業が、日常的にビットコインによって支払いをしたり、支払いを受けたりしていても、仮想通貨交換業の登録は不要です。

 

ビットコインで収納代行を行う

 

次に、「収納代行」を行うケースについて、考えてみましょう。

 

収納代行とは

収納代行とは、業者が利用者から商品やサービスの代金を受けとり、受けとったお金を商品やサービスを提供したものに渡すことです。

 

たとえば、コンビニで水道光熱費や電話代などを支払うことができるのも、コンビニによって収納代行が行われているからです。

これからは、こういった収納代行も、ビットコインによって行われる可能性があります。

 

資金移動業に該当しない

まず、収納代行業については、「資金移動業」に該当するかどうかが問題です。

 

資金移動とは、振込などのように、お金を離れた人のところに送ることです。

資金移動に該当する行為をするときには「資金移動業」の登録が必要となります

 

ただ、収納代行の場合、法律的には、基本的に資金移動に該当しないと考えられています。

それは、収納代行の場合、収納代行業者は、支払人からお金を預かった時点で預けた人との決済を終えており、お金を商品やサービスの提供者へ支払うときには、それとは異なる別の取引となるからです。

 

つまり、「お金を預かる取引」と「お金を支払う取引」が別になっているので、「お金を移動させている業者」とはみなされていないのです。そこで、収納代行業を行うときに、資金移動業の登録は不要です。

 

仮想通貨交換業に該当するケースとしないケース

 

そうだとしても、ビットコインで収納代行を行うときには、「仮想通貨の交換」に該当し、仮想通貨交換業の登録が必要となるのではないかが、次に問題となります。

 

この点、単にビットコインを受け取り、ビットコインによって支払いを行うのであれば、「現金をビットコインに換えたり、ビットコインを現金に換えたり、または別の仮想通貨に換えたり」は、一切していません。

そこで、その限度であれば、ビットコインによる収納代行をするときにも、仮想通貨交換業の登録は不要です。

 

ただし、利用者からはビットコインで支払いを受けて、サービスや商品の提供者には現金で支払う、あるいはその逆(利用者から現金を受け取り、ビットコインに交換してサービスの提供者に支払う)をすると、ビットコインと現金を交換することになるので、仮想通貨交換業の登録が必要となります。

 

以上より、収納代行をするときには、基本的に資金移動業も仮想通貨交換業の登録も不要ですが、場合によっては仮想通貨交換業の登録が必要になるので、注意が必要です。

 

ビットコインを人に貸し付ける

 

次に、ビットコインを人に貸し付ける場合には、仮想通貨交換業の登録が必要かどうか、検討してみましょう。

 

ビットコインは、法律上はお金として取り扱われていないので、ビットコインの貸付をしても、基本的には貸金業の登録が不要と考えられています。

 

そして、ビットコインを人に貸して、ビットコインを返してもらう場合、ビットコインを現金に換えたり、現金でビットコインを購入したりするわけではありませんし、別の仮想通貨に交換することもありません。

 

そこで、ビットコインを人に貸し付ける場合にも、仮想通貨交換業の登録は不要です。

 

ただし、ビットコインを人に貸して、返済は現金で受ける場合や、現金を人に貸して返済はビットコインやその他の仮想通貨で受けとる場合などには、仮想通貨交換業の登録が必要になる可能性があるので、注意が必要です。

 

仮想通貨交換業の登録が認められるための要件

 

仮想通貨交換業の登録を受けるためには、おおむね、次のような要件を揃えることが必要となります。

 

組織的な要件

株式会社であるか、国内に営業所を有していて、国内に代表者が置かれている外国の仮想通貨交換業者であることが必要です。単なる個人は、仮想通貨交換業者となることはできません。

 

財産的な要件

資本金が 1000万円以上であり、純資産額(貸借対照表の資産から負債の額を控除した金額)がマイナスになっていないことが必要です。

 

業務遂行体制の要件

仮想通貨交換業を適正かつ確実に行っていくために必要な社内体制が整備されていることが必要です。

 

法令遵守体制の要件

仮想通貨に対する法規制を守っていくために必要な社内体制が整備されていることが必要です。

 

商号についての要件

他の仮想通貨交換業者が使っている商号や名称と同じ商号や類似の商号を使うことは、認められません。

 

他事業についての要件

その業者が仮想通貨交換業以外に行っている事業が、公益に反しないことが必要です。

 

上記の要件を揃えた業者が仮想通貨交換業の申請をすると、審査が行われ、仮想通貨交換業の登録をすることができます。

 

仮想通貨交換業の登録申請方法

 

財務局に連絡して、必要書類を作成する

 

まずは、登録申請用の書類を入手して、書類を作成しなければなりません。

申請先は各都道府県の財務局となるので、管轄の財務局に電話をして「仮想通貨交換業の登録申請をしたい」と伝えましょう。

 

申請窓口の一覧

http://www.fsa.go.jp/news/28/sonota/20161213-3/04.pdf

 

すると、「事前に書面を送付してほしい」と言われます。

書式は担当者から送付してもらうことができますが、自分で作成する必要があります。

 

書類には、以下のような内容を書き込む必要があります。

  • 会社概要(株主や役員、組織体制、資本金額、純資産額、収益など)
  • 仮想通貨交換業の予定される形態(売買、交換、媒介、取次、代理から選択する)
  • 差金決済取引の有無
  • 取り扱い予定の仮想通貨の種類
  • 仮想通貨交換業を開始する時期
  • 取り扱う仮想通貨の適切性

 

財務局の担当者と面談する

 

書類を送ると、その後、財務局において、担当者と面談を行います。

面談では、仮想通貨交換業の登録を希望する業者が、金融庁の定めるガイドラインに沿って運用できているかどうか、チェックされます。

 

確認されるのは、以下のような点です。

  • 監査を行う部門
  • 外部監査を依頼している先
  • 本人確認措置の実施方法
  • 財産の分別管理方法
  • 反社会性のチェックを行う方法
  • 犯罪収益移転への利用が疑わしい取引の確認方法
  • 紛争解決方法

 

そこで、面談前に、上記について、しっかりと準備していく必要があります。

面談は、1時間半くらいかかります。

 

 

書類審査

 

面談後、申請書の作成を行いますが、

申請書の提出前に、担当者に申請書を渡して書類の内容チェックを受ける必要があります。

 

担当者とのやり取りは、メールで行われます。まずは書類を作成して担当者に送りましょう。すると、担当者が確認し、不備があったら指摘されます。修正があったら修正を行い、提出して最終的にOKが出るまでやり取りします。

 

また、申請をするためには、いろいろな事項についての社内規定を整備する必要があります。

たとえば、以下のような事項を定めなければなりません。

 

  • コンプライアンス規定
  • 利用者保護規定
  • 財産の分別管理に関する規定
  • 帳簿書類保管に関する規則
  • 取引時確認等の措置
  • 反社会的勢力による被害を防止するための社内規則
  • 苦情処理方法についての社内規則
  • ADRについての社内規則
  • システムリスクマネジメントについての社内規則

 

所定のガイドラインがあるので、それに従ってきっちり規則を策定しておく必要があります。

 

本申請

 

書類審査を終えると、本申請を行います。

本申請では、揃えた書類を財務局に提出します。

 

審査では、資金決済法に定められた登録拒否事由がないかどうかが審査されます。

審査に要する期間は、標準的に2ヶ月です。

 

審査に通過すると、正式に仮想通貨交換業の登録ができて登録番号を与えられ、合法的に仮想通貨交換業を行うことが可能となります。

 

登録申請に必要な書類

 

登録申請に必要な書類は、以下の通りです。

  • 登録申請書
  • 登録申請者が、資金決済法上の登録拒否事由に該当しないことの誓約書
  • 取締役、監査役、会計参与(外国仮想通貨交換業者の場合には国内における代表者)の住民票の抄本

 

取締役等が外国人の場合、在留カードの写し、特別永住者証明書の写しまたは住民票の抄本

  • 取締役等が成年被後見人や被保佐人、破産者等ではないことの証明書

 

取締役等が外国人の場合、取締役等が成年被後見人や被保佐人及び破産者等ではないことの誓約書

  • 取締役等の履歴書
  • 株主名簿
  • 定款
  • 登記事項証明書

 

外国仮想通貨交換業者の場合、外国法の規定によって、仮想通貨交換業と同じ種類の登録を受けていることを証明する書面

  • 最終の貸借対照表及び損益計算書か、それに代わる書面

 

新設会社の場合、開設時の貸借対照表

会計監査人設置会社の場合、直近2事業年度の会計監査報告書面

  • 事業開始してから3年分の仮想通貨交換業による収支の見込みを記載した書面
  • 取り扱い予定の仮想通貨の概要を記載した書類
  • 仮想通貨交換業の組織図
  • 仮想通貨交換業の責任者の履歴書
  • 仮想通貨交換業についての社内規則
  • 利用者と取引するときに使用する契約書
  • 仮想通貨交換業を第三者に委託する場合には、委託契約書
  • 苦情処理措置や紛争解決措置の説明書類
  • その他参考となる事項についての説明書類

 

無登録で、仮想通貨交換業を営んだ場合の罰則

 

仮想通貨を現金や他の仮想通貨と交換する「仮想通貨交換業」を営む場合、必ず仮想通貨交換業の登録が必要です。

もし、登録をせずに仮想通貨交換業に該当する行為を行ってしまったら、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という、非常に重い刑罰を科されることになるので、注意が必要です。

 

今回は、仮想通貨交換業の登録が必要なケースと不要なケースについて、解説しました。

 

個人や企業が、単発で仮想通貨の交換をする場合や、仮想通貨によって支払いをしたりされたりするだけであれば、仮想通貨交換業の登録は不要です。

しかし、業務として仮想通貨の交換を行うなら、必ず仮想通貨交換業の登録をしなければなりません。

 

違反すると厳しい罰則もあるので、十分注意しましょう。

また、仮想通貨を利用するときには、無登録の業者を利用しないことも大切です。

今回の記事を参考にして、安全に、仮想通貨を取り扱っていきましょう。