最近、ビットコインへの投資が過熱しているので「ビットコインを購入したり、売却したりしたい」、と考えている方はたくさんおられるでしょう。ビットコインなどの仮想通貨は、投資の対象ですから、株式や債券に似ています。
ただ、株式などの金融商品を取り扱う場合には、「金融商品取引法」という法律による規制を受けます。もし、ビットコインにも金融商品取引法が適用されるなら、ビットコインの購入や売買を行うとき、金融商品取引業者に依頼しなければならなくなります。
そこで今回は、仮想通貨の購入や販売について、金融商品取引法について解説します。
目次
ビットコインが金融商品なら、金融商品取引業の登録が必要になる
みなさまは、「金融商品取引法」という法律がどのようなものか、ご存知でしょうか?これは、株式や債券、FX取引や先物取引などの金融取引について、まとめて規制している法律です。
もともと「証券取引法」という法律でしたが、近年、株式などの証券以外にも、スワップ取引やデリバティブ取引、FX取引など、多種類の金融商品が登場してきました。そこで、こうした金融商品に広く対応するため「金融商品取引法」として改めて制定されました。
金融商品取引法では、金融商品を取り扱うことができるのは「金融商品取扱業者」のみであるとしています。そこで、もしビットコインなどの仮想通貨が「金融商品」に該当するなら、ビットコインの取引を行うときにも、金融商品取扱業者の登録が必要となります。
金融商品取引法とは
それでは、金融商品取引法は、どのようなものを対象として、どういった規制を及ぼしているのでしょうか?以下では、その基本的な内容を確認しておきましょう。
金融商品取引法の規制対象
まずは、どういったものに対して金融商品取引法が適用されるのか、その規制対象から確認していきましょう。金融商品取引法の適用対象は、非常に広いです。この法律が、投資の対象となる取引を、横断的に規制しようとするものだからです。
株式、国債、地方債、社債、投資信託、信託受益権、集団投資ファンド(多くの人から出資を受けてお金を集めて事業を行うこと)の持分、デリバティブ取引(日経平均先物やスワップ取引など)などが広く含まれます。スワップ取引には、金利スワップや通貨スワップ、クレジットデフォルトスワップなどがありますし、天候デリバティブ取引なども、金融商品取引法の規制対象になります。
金融商品取引業者の種類
上記に挙げたような金融商品を取り扱う業者は、金融商品取引業の登録をしなければなりません。金融商品取引業には、いくつかの種類があります。取扱い業務の内容により、必要とされる資格が異なります。以下で、順番にご紹介します。
第一種金融商品取引業
第一種金融商品取引業は、高い流動性を持った有価証券を販売・勧誘する業務です。
顧客資産を適切に管理し、「市場デリバティブ取引」だけではなく、当事者同士が直接取引を行う「店頭デリバティブ取引」も取扱います。市場デリバティブ取引というのは、証券取引所における、上場株式などの取引です。
これに対し、店頭デリバティブ取引には、未上場の株式などの取引が含まれます。未上場の株式購入や売却などの助言を行う場合には、第1種証券取引業の登録が必要だということです。第1種金融商品取引業者の登録を受けるための要件は非常に厳しいです。一般的な証券会社などが、これに該当します。
第二種金融商品取引業
第二種金融商品取引業は、比較的流動性が低い有価証券を販売・勧誘する業務です。顧客資産を適切に管理しながら、市場デリバティブ取引の取扱い(販売や勧誘)をします。信託受益権や、集団投資スキームの配当を仲介するときなどに登録が必要となります。証券会社だけではなく、個人でも資格を取得していることがあります。
投資運用業
投資運用業は、顧客に代わって資産運用を行ったり、顧客から資産を預かって投資して資産運用をしたりする業務です。
こうした業務を行うときに、投資運用業の登録が必要となります。代表的なものは、投資信託委託会社やJ-REIT運用会社などです。
投資助言・代理業
株式投資などの助言や代理を行う業務です。たとえば、購入する銘柄や、購入するタイミングなどについて、アドバイスします。また、投資家と投資顧問会社の契約を仲介する場合などにも、投資助言・代理業の登録が必要となります。
登録の要件はさほど厳しくないので、個人でも登録して活躍している人がいます。
金融商品取引業者に課される義務
金融商品取引業者には、以下のような、いろいろな義務が課されます。
適合性の原則
まず、顧客に応じた商品を勧めなければならないという、適合性の原則が適用されます。顧客の知識や経験、資産内容や投資目的に応じて商品を選別して勧めなければなりません。
契約締結前交付書面と説明
契約締結前に、商品概要や報酬、手数料などの費用についての書面を顧客に渡し、説明しなければなりません。
広告等の規制
金融商品取引業者は、広告内容についても規制を受けます。手数料がかかることや元本割れが発生する可能性があることなどを記載しなければなりません。
禁止行為
金融商品取引業者は、顧客を勧誘したり契約したりするときに、虚偽を告げたり、重要なことを隠したり、強引な勧誘をしたりしてはいけません。上記の各種の規制に違反すると、金融商品取引業者は行政指導を受けたり、罰則を受けたりする可能性があります。
無登録で営業した場合の罰則
金融商品を取り扱うときには、必ず金融商品取引業の登録が必要です。
無登録で営業をした場合には、以下の罰則が適用されます。
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその両方(金融商品取引法197条の2第10号の4)
法人に対しては、5億円以下の罰金刑が適用されます(金融商品取引法207条2号)。
仮想通貨には、金融商品取引法が適用されない
それでは、仮想通貨は有価証券に該当するのでしょうか?
もし該当するのであれば、ビットコインの販売や勧誘を行うときに、金融商品取引業の登録が必要なことになります。金融商品取引法2条では、金融商品取引業の規制対象となる「有価証券」について、いろいろなものが列挙されています。その中に、「仮想通貨」は含まれていません。
また、一般的に「有価証券」は「財産的価値を持つ権利を表す証券」であると考えられていますが、仮想通貨は、こういったものには該当しないと考えられています。そこで、現時点においては、仮想通貨は「有価証券」とは考えられておらず、金融商品取引法が適用されることはありません。
仮想通貨の販売や購入の勧誘をするときに、金融商品取引業者や投資運用業などの登録をする必要はないということです。
仮想通貨が先物商品として売買される場合は?
このように、仮想通貨そのものを売買するときには、金融商品取引業者の登録が不要ですが、仮想通貨が先物消費などのデリバティブ商品(派生商品)として取引される場合にも、同様に金融商品取引法の規制が及ばないのでしょうか?
現時点においては、ビットコインのデリバティブ商品であるビットコインの先物取引に対しても、金融商品取引法が適用されないと考えられています。そこで、ビットコインの先物取引を業務として行うとき、金融商品取引業の登録をする必要はありません。また、先物取引の場合には、「仮想通貨交換業」の登録が必要かどうかも問題となります。
この点、先物取引の中でも、「差額決済取引」を行う場合には、仮想通貨交換業の登録は不要であると考えられていますが、現物取引を行う場合には、仮想通貨交換業の登録が必要と考えられています。
ビットコインと先物取引の関係については、仮想通貨交換業と先物取引の関係の記事において、詳しく解説しているので、ご覧下さい。
今後、ビットコインにも金融商品取引法が適用される可能性
以上をまとめると、現時点において、ビットコインそのものの取引に、金融商品取引法が適用されることはありませんし、ビットコインの先物取引所を開業するときにも、金融商品取引法は適用されません。ビットコインの取引所は、金融商品取引業の登録なしでも開設できます。
ただし、金融商品取引法は、非常に改正が多い法律です。
今はビットコインの先物取引に金融商品取引法の規制が及んでいませんが、今後、ビットコインなどの仮想通貨取引がさらに活性化し、投資対象としての価値がさらに大きくなってくると、状況が変わる可能性があります。
投資によって個人がさまざまな不利益を受ける事件が起こったりすると、法改正が行われることも十分に考えられます。その場合、金融商品取引法の規制対象である「有価証券」に仮想通貨が追加されて、仮想通貨やその派生商品(先物取引など)にも金融商品取引法が適用されることでしょう。
ビットコインを取り巻く状況は日々刻々と変わるので、今後の法改正の動向には、しっかり注目していきましょう。
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