
2017年10月18日、警視庁から「リップルトレードの代表者を詐欺容疑で逮捕した」という発表がありました。
リップルトレードが取り扱っていた仮想通貨は、その名のとおり、リップルコインです。
そもそも、リップルトレードの代表者が逮捕された理由はどのようなことだったのでしょうか?
リップルトレードを利用していた場合の対処方法や、今後のリップルコインの展望、仮想通貨取引で、詐欺に遭わないための注意点などについても、これを機会に把握しておきましょう。
今回は、リップルトレードの詐欺に関する説明と、今後のリップルコインの行方、仮想通貨取引所が破綻した場合の対処方法等を、わかりやすくご説明します。
目次
リップルコインとは
そもそも、今回問題になっている「リップルコイン」とは、どのような仮想通貨なのでしょうか?
リップルコインの最大の特徴は「リップル社」が発行し、管理していることです。
仮想通貨は、通常ネット上のブロックチェーンにマイニングを行うことによって、情報を日々更新しています。世界中のユーザーが情報にアクセスし、ダウンロードして仮想通貨の管理が行われています。特定の誰かが、仮想通貨の管理や発行をしているわけではありません。
ところが、リップルコインは、このような、管理者不在のブロックチェーンシステムを採用していません。
すべてのリップルコインは、リップル社1社が発行し、リップルコインのブロックチェーンはリップル社が管理します。
このように、リップル社が集中的に管理をするため、リップルコインは「中央集権的な仮想通貨」とも言われています。
リップルコインの特徴
リップルコインは、リップル社の高い技術力によって生み出された仮想通貨です。
通貨単位は「XRP」という独自のものとなっています。以下で、その特徴を説明します。
交換の自由度が高い
リップルコインを媒介として、円やドルなど、各種の法定通貨や他の仮想通貨と簡単に両替することができます。ネット上で送信をしなくても、リップルコインのウォレット内だけで両替することも可能です。個人間で送金をすることもできます。
送金処理速度が早く、コストが低い
また、リップルコインは、送金処理が非常に早いです。ビットコインの場合には、送金処理に1時間以上かかりますが、リップルコインの場合には4秒程度で完了します。
1秒あたり送金できる回数は、ビットコインの場合4回程度ですが、リップルコインの場合には1000回です。
送金にかかるコストは、ビットコインの場合0.48ドルですが、リップルコインの場合、0.0003ドルです。
金融機関や有名企業が投資している
このように、リップルコインには、多くのメリットがあることと、責任者が明確(リップル社)であること、また送金が非常に簡単でコストがかからないので、国際送金などに非常に便利であることから、世界中の多くの金融機関や有名企業が期待し、投資をしています。
有名なところではgoogleが出資者となっていますし、日本でも「住信SBIネット銀行」がリップル社と共同して、「SBI Ripple Asia株式会社」という会社を設立、運営しています。
リップルコインの時価総額
このように、リップルコインは非常に期待されている仮想通貨であることから、2017年10月18日現在において、リップルコインの時価総額は、ビットコインの約10兆円、イーサリアムの約3兆円に次いで、3位となっており、1兆円にものぼっています。
リップルコインが抱えるリスク
しかし、反面、リップルコインには、高いリスクがあるとされています。
それは、発行責任者がリップル社1社であるため、同社に何かあったときには、リップルコインが無価値になってしまうおそれがあることです。
リップル社が倒産すると、リップルコインが一瞬で紙くず(実際には仮想通貨なので紙ではありませんが)になってしまうおそれもあります。
他の仮想通貨の魅力は「発行主体がなく、自由な通貨」である点であるにもかかわらず、「中央集権的」なリップルコインに対して批判的な目を向けている仮想通貨利用者も多く存在します。
リップルトレード代表者が詐欺で逮捕
リップルトレード代表者が逮捕された経緯
今回、このリップルコインの取引を専門的に取り扱っていた、「合同会社リップルトレードジャパン」という会社の代表の竹中優樹氏が逮捕されました。
リップルトレードジャパンは、2014年5月に設立された会社です。
「リップルトレード」という名称の、リップルコインの取引所を運営していましたが、2015年3月ころから破綻状態となり、リップルトレードにおいても、突然出金停止となったり、取引所と連絡が取れなったりするなどのトラブルが発生していました。
ところが、リップルトレードジャパンの代表者は、破綻状態となっていて払い戻しができる見込みがないにもかかわらず、「IOU」を発行して、顧客の男性から、現金140万円の交付を受けたのです。
このことが、今回の逮捕の直接の原因です。
また、警視庁としては、他にも竹中氏が架空のIOUを発行して、他の顧客から現金をだまし取っている疑いがあると考えて、捜査を継続しているようです。
1説には、被害総額は1億2千万円にもなる可能性があると言われています。
詳細は、今後の捜査の経過を待つことになるでしょう。
IOUとは
IOUは、リップルコインの請求権
ところで、今回竹中容疑者が逮捕されたのは、「IOU」を顧客に渡して現金140万円を受けとったことです。IOUは、リップルコイン利用の鍵になる重要なポイントですから、どういったものなのか、簡単に説明をしておきます。
IOUは、電子借款です。
リップルコインを利用している人が、発行します。借用書や債券のようなものだと考えると、わかりやすいです。
IOUを保有している人は、IOUの発行者に対し、IOUが表示しているリップルコインの請求をすることができます。
たとえば、100XRP分のIOUを持っている人は、IOUの発行者に対し、100XRP分のリップルコインの払い戻しを請求することができるのです。
IOUは、発行者の信用が重要
ただ、IOUの発行者は、リップル社ではありません。そこで、IOU発行者が破綻したり逃げたりしても、リップル社が責任を持ってくれることはありません。
IOU発行者が破綻すると、IOUは紙くず(実際には形がないので、「紙」とは違いますが)となってしまいます。
今回、竹中氏は、「到底支払いができないことをわかっていながら、IOUを発行して現金の交付を受けた」ことが詐欺行為であるとされています。
つまり、「払い戻しのできない無価値なIOUを渡すことにより、現金をだまし取った」と評価されているのです。
IOUは、スムーズな資金調達の方法として、非常に便利であると考えられています。確かに、そういった面はあります。
しかし、今回の件では、IOUを簡単に悪用できることが明らかになりました。
IOUを購入するときには、本当に発行者が信頼できる人物(または会社)か、しっかりと見極める必要があります。
正体がわからない相手や、資金力があるのかないのかわからない相手が発行するIOUを購入することは、極めて危険です。
IOUを購入して、相手が破綻してしまったら、1円も返ってこない可能性があります。
詐欺罪の刑罰
今回、リップルトレードの竹中容疑者は詐欺罪容疑で逮捕されています。
詐欺罪の刑罰は、懲役10年以下です(刑法246条1項)。
現時点で問題とされているのは、140万円分の詐取のみですが、今後、他の顧客に対する詐欺罪や他の関連犯罪などが明らかになってくると、どんどん罪が重くなっていく可能性があります。
仮想通貨に対する信用を大きく揺るがした事件ですから、今後の動向を、見守っていく必要があるでしょう。
今後のリップルコインの展望
さて、今回リップルコインの取引所の運営者が詐欺行為をはたらいたことにより、リップルコインに対しては、どのような影響が及ぶのでしょうか?
リップルコインの将来という点では、過去に「MTGOX社」というビットコインの取扱い業者が倒産したときの例が、参考になります。
なぜなら、リップルトレード社は、現時点ではまだ正式に破産していませんが、既に2015年頃から破綻状態にあったこと、今回代表者が詐欺容疑で逮捕されたことから、今後、破産などの法的手続をとる可能性が高いと言えるからです。
まず、仮想通貨の取引所が倒産すると、その取引所に置いているコインを引き出すことは、不可能になります。実際にリップルトレードの場合、2015年の時点において、すでに取引所内のコインを出金できない状態になっているようです。
次に、トラブルのあった仮想通貨の価値が下落する可能性があります。その仮想通貨に対する世間の信用が、一気に失われるからです。
MTGOX社が破綻したときには、ビットコインの価値は、3万円から1.8万円に、一気に下がっています。その後も1年以上の間、ビットコイン価格は5万円台を突破することはありませんでした。
このようなことからすると、今回のリップルトレードの破綻の影響により、リップルコインの下落が起こる可能性が十分にあります。
ここで恐ろしいのは、リップルコインの場合、発行主体がリップル社1社であることです。
リップルコイン下落の損失は、リップル社が集中的に被ることになります。
すると、リップル社がコインを維持できなくなり、リップルコインそのものが世界から消滅してしまう、というリスクもないとはいえません。
今回のことだけでリップル社が倒産することはないでしょうけれど、リップルコインを利用するときには、常にそういったリスクも頭に置いておくべきと言えます。
仮想通貨は「世界中の人が共有している」ことが強みです。その強みを捨てて、あえてリップル社1社に集中させたリップルコインは、良い面もたくさんあるのですが、大きな弱点も抱えているのです。
リップルトレードを利用していた場合の対処方法
破産配当を待つのが基本
さて、今回リップルトレードを利用されていた方は、どのように対応すれば良いのでしょうか?
リップルトレード取引所が凍結されている以上、すでに預けているリップルコインは、払い戻すことができません。
また、リップル社のIOUを購入してしまった方は、リップル社に対して払い戻しの請求をすることができますが、リップル社には、支払い能力はないでしょう。
結局、リップル社が破産申請を行い、配当があるのを待つほかない可能性が高いです。
破産するまでは、取り立て可能
ただし、破産するまでの間は、リップル社に対して裁判をするなどして、財産を差し押さえることは可能です。
破産すると、差押えができなくなりますが、破産するまでの間は、自由に取り立てをすることが認められているからです。
たとえば、リップル社にリップルコインを預けている人や、リップル社のIOUを保有している人は、リップル社に裁判を起こして判決をもらいリップル社の資産に強制執行することができます。
竹中氏本人に対して貸し付けている場合には、竹中氏本人に対して裁判を起こし、その資産を差し押さえることができます。
取引所破綻で被害に遭わないための対処方法
今回は、リップルコインの詐欺の事件ですが、このようなことは、他の仮想通貨でも起こりうることです。
仮想通貨の取引所を利用するときには、身を守る術を身に付けておくべきです。
仮想通貨を取引所に置かない
1つの方法としては、仮想通貨の取引所に、仮想通貨を置いたままにしないことです。
自分のウォレットを作り、仮想通貨交換所から購入した仮想通貨を送ると、その後はウォレット内で仮想通貨の管理ができます。
すると、その後に取引所が倒産しても、出金できなくなる、ということがありません。
なるべく早めに回収する
また、取引所が破綻してしまった場合には、なるべく早めに取り立てと回収を行うべきです。
破産や民事再生をされると、個別の債権者による取り立てができなくなりますが、こうした法的な整理が行われるまでの間は、裁判をして、会社資産を差し押さえることができるためです。
確実に配当を受ける
もし、破産や民事再生などの手続きが始まってしまったら、もはやそれらの手続きから配当を受けるしかありません。そのときには、裁判所から「債権調査票」が送られてくるので、確実に債権届出書を送りましょう。
債権届けをしておかないと、配当を受けることすらできなくなってしまうので、注意が必要です。
手違いで債権届が送られてこない場合などもあるので、ニュースなどをチェックしていて、自分の利用している取引所が破綻したというニュースを聞いたら、裁判所や管財人に問合せをすると良いでしょう。
仮想通貨を安全に利用するための注意点
今回、リップルトレードを利用されていた方は、大きな被害を受ける可能性も高くなっていますが、このような悪徳業者に引っかからないようにするには、どのようにしたら良いのでしょうか?
「仮想通貨交換業」登録業者を利用する
重要なことは「仮想通貨交換業」の登録業者を利用することです。
例えば、ここですね↓
2017年4月1日、資金決済法が改正されて、仮想通貨の取引業を行うときには「仮想通貨交換業」の登録が必要となりました。
そして、仮想通貨交換業者には、さまざまな法規制が及びます。
まずは、財産的基礎がしっかりしていなければなりませんし、取引するときに顧客に対する各種の説明義務も負います。
顧客の資産と会社の資産を別々に管理しなければならないという義務もありますし、帳簿等を適切に保管し、顧客の個人情報も守らなければならないという義務も負っています。
そこで、仮想通貨交換業者を利用すると、ある程度財産的基盤がしっかりしていることが保証されますし、顧客の預かり金(仮想通貨)と会社の資産が別管理されているので、万一仮想通貨交換が倒産しても、預けたお金(仮想通貨)が全額返ってくることも期待できます。
今回のリップルトレード社は、仮想通貨交換業者ではないので、おそらくこのような対処はしていないでしょう。
同社の顧客は、一円も取り戻すことができないかもしれない、というのは、リップルトレード社が仮想通貨交換業者ではないこととも関連しているのです。
2017年10月18日現在の仮想通貨交換一覧
2017年10月18日現在、仮想通貨交換業者として正式に登録されているのは、以下の11社です。
- 株式会社マネーパートナーズ
- QUOINE株式会社
- 株式会社bitFlyer
- ビットバンク株式会社
- SBIバーチャル・カレンシーズ株式会社
- GMOコイン株式会社
- ビットトレード株式会社
- BTCボックス株式会社
- 株式会社ビットポイントジャパン
- 株式会社フィスコ仮想通貨取引所
- テックビューロ株式会社
これらの業者を利用すると、万一破綻されても安心です。
また、上記以外にも、「コインチェック」や「みんなのビットコイン」などの19の業者が登録申請中なので、そういった業者も合法的に利用することができます。
まとめ
今回は、リップルトレード社の詐欺事件概要と、今後の展望、仮想通貨交換所が破綻するリスクについて、解説しました。
今回の詐欺行為にはIOUが利用されていますが、IOUは、発行者の状況次第で無価値になるので、非常に危険です。
購入するときには、慎重になるべきです。
仮想通貨取引所が破綻したときに、できるだけ多くの資産を守るためには、必ず仮想通貨交換業の登録業者を利用しましょう。
今後のリップルコインの動向と、リップルトレード社の行方についても、注目していきたいところです。
今回の記事を参考に、リスクを抑えて安全に仮想通貨を利用しましょう。