
1998年に新改正外為法が制定され、誰もが参加できるようになったFX(外国為替証拠金取引)。
FXは株取引よりも口座開設の容易であり、直感的なインターフェースによる取引が可能であるため、サラリーマンや主婦、学生などにも投機対象として人気が高い。
FX長者と呼ばれるFXで莫大な利益を得た個人投資家もいる陰で、FXは株取引よりも相場が不透明であり、莫大な損失を出してFXから引退する個人投資家もいるのが現実だ。
しかしAIによるビックデータの活用と画像認識技術が、知識と経験のない個人投資家にとって希望の光となるのかもしれない。
なぜFXで個人投資家が勝てないのか?
FXは数か月から数年にわたって運用をしていく株式取引とは異なり、デイトレードやスイングトレード(数日から数週間の決済)が主流だ。
一応、為替市場に変化をもたらす経済指標や金融政策というものが存在するが、それが為替市場にどのような影響を及ぼすかはプロのカバーディーラーであってもわからないのである。
テクニカル分析を阻害する認知バイアス
不確実の高い為替市場では、チャートによるテクニカル分析が有効とされている。
テクニカル分析とはチャートの推移から過去の法則を適応して利益を出していく方法
経験や知識がない個人投資家のテクニカル分析は認知バイアス(正しいと思っていたことが間違いであること)が生じやすいのが現実である。
テクニカル分析は30分チャートのテクニカル分析では上昇トレンドがあっても、3時間チャートのテクニカル分析では下降トレンドであることがある。30分単位で分析をすれば買い時でも、3時間単位で分析をする売り時となってしまうのである。
そのような場合に個人投資家は悩み、結局は自分の直観に頼るのである。
直観による運用の場合でも為替市場は非常に不確実なため、利益を確保することは確率的には可能である。
しかし、直感による取引で利益が出た個人投資家はチャートを自分の都合の良いように解釈しがちである。
利益が出ているのは偶然の産物であるのにも関わらず、自分のチャート分析による結果だと勘違いをして過信をしてしまい、それが将来的に大きな損失となって個人投資家をFXから引退へと導くのである。
じぶん銀行の「AI外貨予測」
個人投資家の希望の光となりうるのが、2017年6月28日にサービスを開始したじぶん銀行の「AI外貨予測」である。
AI外貨予測はネット専業銀行のじぶん銀行と米国のフィンテックベンチャーの共同開発で誕生したサービスである。
AI外貨予測のサービスは「特微量抽出技術」という画像技術を利用しており、現在の値動きを画像認識し、過去の為替市場の値動きと比較する。
過去のデータから今後の為替相場やレートを判断し、ユーザーをサポートするのである。
公開後1か月を過ぎた「5営業日以内」の解析では平均期待値が55%以上であり、AI外貨予測の画像診断によるデータ分析は効果的であることが証明された。(https://innovation.mufg.jp/detail/id=198)
AIによるサポートが個人投資家にもたらすものとは
為替取引市場はプロのカバーディーラーであっても予想が難しく、求められるのは直観力とされている。
しかし彼らの直観が個人投資家と大きく異なるのは、彼らの直観は経験によって裏打ちされたものである点だ。
個人投資家と違って、カバーディーラーは為替取引に関わる時間は比べ物にならないぐらい長く、経験がある。
そのため、直観で取引をしていても彼らの頭の中には過去の運用結果があり、その記憶が取引に成果として現れるのである。
しかしAIが画像認識を行い、過去のデータを基づく分析をすれば経験や知識のない個人投資家であっても認知バイアスなく、経験に裏打ちされたカバーディーラーのような投資が可能になる可能性がある。
まだAIによるサービスが開始されてばかりではあるが、将来的によりアルゴリズムが強化され、精度の高い結果を導き出すことのできるAIによるサポートサービスやHFT(超高速取引)サービスが誕生する可能性はあるだろう。
総論
FXサービス提供会社は「手軽にFXをしよう」というキャッチフレーズのもと、宣伝を行ってきた。
しかしFXは手軽に始めた多くの人々が、「予測不可能な相場情勢」と「自らの認知バイアス」によって袋孤児に迷い、多額の損失とともにFXを去っていた現状がある。
元JPモルガン・チェース銀行為替資金本部副部長である富田公彦氏は著書の中で「『気軽にFX』という言葉は『気軽に死のう』と言っているのに等しい」と述べている。
しかしAIによる為替相場予想は素人には知るよしのなかった過去のデータを定量的に分析し、個人投資家に提供しているため、認知バイアスに惑わされることなく、勝率をあげることが可能になるだろう。
現在、大手信託銀行やヘッジファンドにおいてもAIのビッグデータ解析とアルゴリズム分析による投資運用が主流になりつつある。
より精度の高いAIサービスが将来的に誕生をすれば個人投資家であっても、不確実要素の強い為替市場で資産を形成できる日が来るのかもしれない。