
世界においても仮想通貨の存在感が、ますます高まっています。これから、仮想通貨の取引を始めようという方も多いでしょう。
仮想通貨取引をするとき「名義貸し」「名義借り」をすることがありますが、実は、こういった行為には大きな危険があります。
見つかると、口座取引を止められたり、犯罪の疑いをかけられたりすることもあるので、注意が必要です。
今回は、仮想通貨で名義貸しをするリスクについて、解説します。
目次
名義貸しとは
仮想通貨への投資を行うときには、どこかの仮想通貨取引所で口座を開設する必要があります。
そして、取引所に口座を開設するときには、「名義」が問題となります。誰の名義で口座を開設するかということです。
このとき、「名義貸し」が行われることがあります。
名義貸しとは、他人が口座を開設するときに、自分の名義を使わせることです。
貸すのは名義だけであり、実際に取引するのは、名義を借りた人となります。
名義を借りた人は、貸してくれた人の名前を名乗りながら、自分のお金を口座内で動かします。
名義貸しをするパターン
それでは、名義貸しをするケースとしては、どのようなものが考えられるのでしょうか?
一般的に多いのは、以下のようなパターンです。
- 既に他の口座を持っているので、あまり口座を増やしたくないから、友人の名義を借りる
- 親が子どもの名義を借りる、子どもが親の名義を借りる
(ただし、親権者となっている親が未成年の子どもの口座を作ることは、名義貸しにはなりません)
- 友人や恋人の名義を借りて口座を作って、運用をしてあげる
- 身分証明書を持っていないので、他人の名義を借りて口座開設する
- 海外居住などで、自分で口座開設する手続きが面倒なので、家族や友人の名義を借りる
しかし、こういった名義貸しには、大きなリスクを伴うので、注意が必要です。
軽い気持ちで名義貸しを行うと、思わぬ不利益を受けることになります。
名義貸しの問題点
名義貸しには、どのような問題があるのでしょうか?
一番の問題は、マネー・ロンダリングや犯罪に利用される可能性が高いことでしょう。
マネー・ロンダリングとは、資金洗浄のことです。
もともと犯罪収益やテロ資金だったお金を、いろいろな口座などを介することにより、きれいなお金に換えてしまいます。
たとえば、人から盗んできたお金でも、無関係な人の名義の仮想通貨に変えてしまうことにより、盗んできたお金であることがわからなくなってしまいます。テロ資金などでも同じことが言えます。
また、名義貸しが、詐欺に利用されることもあります。
他人名義で口座を開いて取引をするとき、取引の相手は、名義人を相手に取引していると考えます。
しかし、実際には異なる人が操作をしています。操作をしている人が詐欺行為をしたら、取引相手は、名義人を犯人だと考えるでしょう。
その間に、本人は逃げてしまいます。
また、名義借りをして口座開設し、仮想通貨を購入すると、取引所に対する詐欺になることもあります。
実際に、他人名義で口座を開設して仮想通貨を購入することが、犯罪になったケースもあります。
2016年11月、他人名義のクレジットカードを使って取引所から90万円分の仮想通貨を受けとった3人組が、電子計算機使用詐欺罪という罪で逮捕されました。
この場合、取引所は、クレジットカードの名義人に対して仮想通貨を交付したつもりになっているのに、実際に仮想通貨の交付を受けたのは、名義借りをしていた3人ですから、取引所が騙されたことになるのです。
このように、名義貸し、名義借りにはいろいろな危険がつきまとうので、法律によって規制されています。
名義貸しを規制する法律
名義貸しは、さまざまな犯罪に利用されるおそれがあるので、法律は名義貸しが行われないように対処しています。
代表的な法律は「犯罪収益移転防止法」です。
犯罪収益移転防止法は、マネー・ロンダリングが行われやすいサービスを対象に、名義貸しが行われないように対応する義務を定めています。
仮想通貨交換業者も、その対象となっています。
セキュリティ万全の交換業者↓
まず、仮想通貨交換業者は、取引を行うとき、必ず本人確認をしなければなりません。
また、違法行為をしていることが疑われる取引がある場合には、所轄庁に報告しなければならないこととなっています。
このことにより、名義貸しが行われにくくなりますし、実際に名義貸しを利用した犯罪が行われたときには、摘発しやすくなります。
名義貸しに伴うリスク
名義貸しや名義借りをすると、どのようなリスクがあるのでしょうか?
以下で、確認していきましょう。
口座を止められる
名義貸し、名義借りをすると、口座を止められるリスクがあります。
仮想通貨交換業者は、犯罪収益移転防止法の適用を受けるため、厳格に本人確認を行います。
しかし、それでも、名義貸しが行われてしまうことはあり得ます。
その場合、仮想通貨交換業者は、その口座の取引を停止してしまいます。
そうすると、口座内に入れていた仮想通貨を一切動かせなくなってしまうので、お金を入れていた人は、大きな不利益を受けることとなります。
このリスクは、主に名義を借りる側に発生するものです。
なぜなら、口座内のお金は、基本的に名義を借りた人のものだからです。
疑わしい取引として届けられてしまう
仮想通貨交換業者には犯罪収益移転防止法による「疑わしい取引の報告義務」があります。
そこで、本人確認時に、何らかの問題があって、仮想通貨取引を不正に利用しようとしているのではないかと疑われる場合には、行政庁に報告されてしまう可能性があります。
報告をするときに、いちいち本人の許可をとることはないので、自分が知らない間に、告発されてしまうかもしれないのです。
このことで、身に覚えのない犯罪の疑いや脱税の疑いをかけられてしまうおそれもあります。
このリスクは、名義を借りた人にも貸した人にも両方発生するものです。
名義を借りた人、名義を貸した人が結託して悪事を働こうとしていると思われてしまう可能性があるので、注意が必要です。
詐欺罪になるおそれ
名義貸しや名義借りによって口座を開設し、取引所から仮想通貨の購入をすること自体が詐欺罪となる可能性があります。
取引所は、名義人と取引しているつもりなのに、実際に取引しているのは名義を借りている人になるためです。
詐欺罪が成立すると、10年以下の懲役刑が科されるおそれがあります。
実際に逮捕される事例も出ているので、注意が必要です。
このリスクは、主に名義を借りた人に発生しますが、名義を貸した人も共犯になってしまうおそれがあります。
口座が不正利用されたときに、名義人に責任が及ぶ
名義貸しをすると、口座が不正利用されたときに、名義を貸した人にいろいろな責任が及ぶことがあります。
名義貸しをするとき、名義人は、単に名義を貸すだけなので、実際には口座の操作をしません。
一度もアクセスしたことがない、ということもあるかもしれません。
しかし、名義人となっている以上、外部から見たら、名義人が操作しているように見えます。
そこで、口座の利用者が第三者に詐欺を働いた場合や脱税その他の犯罪に使った場合、まず疑いをかけられるのは、名義人です。
「自分は関係ない」と言っても通用せず、損害賠償をしなければならなくなったり、刑事罰を受けたりするおそれもあります。
このように、名義貸しは非常にリスクが高いので、絶対にしてはいけません。
友人や家族、恋人などから頼まれても、頑として断る姿勢が大切です。
名義貸しが法律で禁止されていることや、犯罪になるおそれがあることなどを説明して、理解を求めましょう。
本人確認書類なども、絶対に貸してはいけません。
まとめ
名義貸しは、昔からよくあるものです。預金口座、株式取引、借金などで、頻繁に行われてきました。
仮想通貨取引でも、同じように軽い気持ちで名義貸し、名義借りをしようと考えることがあるかもしれません。
しかし、今は名義貸しが法律によって禁止されています。名義貸しや名義借りをすると、身に覚えのない犯罪を疑われたり、責任を背負わされたりしてしまうおそれもあるので、注意が必要です。
今回の記事を参考にして、名義貸しや名義借りをせずに、安全に仮想通貨取引をしましょう。