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スマートペイメントの将来と今後の動向

オンライン決済全般を指すスマートペイメント。電子マネーやクレジットカード、QRコード決済を中心とした電子商取引サービスが大きく普及しています。経済産業省が目標として掲げるキャッシュレス決済の比率に到達するためには、スマートペイメント市場の更なる成長が欠かせません。

当記事では、野村総合研究所の調査資料や海外の導入事例を基にスマートペイメントの動向を展望します。

Win-Winの関係性を生み出すスマートペイメント

スマートペイメントとは

スマートペイメントはB2C(企業と個人間の取引)の電子的な決済手段全般を指しています。元々スマートフォンでの決済を目的にしていたため「モバイルペイメント」と呼ばれていましたが、昨今Apple Watchやwena wristといったウェアラブルデバイスを用いた決済が可能となり「スマートペイメント」という言葉が誕生しました。

事業者側のメリット

事業者がクレジットカード決済を導入するためには加盟店に登録する必要があります。据え置き型の決済システムを要するため導入費用がかかる他、決済毎に手数料が生じます。カード会社にもよりますが、手数料率は4%~7%程。個人商店にとって初期費用や手数料は大きな負担に繋がります。

とはいえ、カード決済システムの導入は顧客獲得に繋がるため、現金以外の決済手段を設けたいと考える事業者がほとんど。

そこで得できるのがスマートペイメントです。モバイル決済システムの導入費用を実質0円に設定している会社が多い他、手数料率が約3%と費用面のメリットを享受できます。

更に、売上金の入金サイクルが早い点も特徴です。据え置き型のカード決済システムでは、最大でも月に6回までの入金サイクルになっていますが、モバイル決済の場合翌日入金に対応する決済会社が存在します。

クレジットカード決済の導入において、店舗とネットショップの両方を持つ事業者は「対面決済」と「非対面決済」のそれぞれの契約が必要でした。ところが、スマートペイメントの普及により1つの契約で2つの決済方法が可能になったのです。カード決済導入にためらいを感じていた事業者が新たに取り入れやすい決済システムがスマートペイメントの強みだと言えます。

利用者側のメリット

スマートペイメントは利用者にも大きなメリットをもたらしてくれます。

1つは公共交通機関の利用です。従来の決済システムは、各公共交通機関の利用ごとに切符や小銭の用意が必要でした。クレジットカードを使った決済システムが導入されていないため、決済に時間がかかるほか、ポイントサービスの付帯がなくお得に利用する方法はありませんでした。

当時は当たり前の光景でしたが、現代ではスマートフォンやウェアラブルデバイスなどを専用端末にかざすのみで決済ができます。時間効率が良くなるだけでなく、クレジットカードやデビットカード、プリペイドカードなどのポイントが貯まるため、単なる移動の場においてもお得に利用できるようになりました。

2つ目は、いかなる少額決済の場においてもカード決済が可能な点です。コンビニやファストフード店といった少額決済の場でカードを提示することにはためらいを感じますが、クレジットカードやデビットカードを登録した各端末で決済をおこなうことにより、わざわざカードを提示する手間が省けます。

スマートペイメントという画期的な決済手段は個人・法人の双方にメリットがあり、人々の生活をより豊かな物にしてくれるのです。

スマートペイメントの市場規模は右肩上がり

モバイルデバイスやウェアラブルデバイスを決済端末に利用する決済サービスが登場したことで、スマートペイメントの市場規模は右肩上がりに成長しています。以下は野村総合研究所による日本国内のスマートペイメント市場規模の予測グラフです。2017年に公表されたグラフで、2023年には114兆円規模にまで膨れ上がるとの予測を立てています。

出典:野村総合研究所

野村総合研究所は2018年末に再びスマートペイメントの市場規模を予測したグラフを公表しており、2017年の予測図からそれぞれ約10兆円ずつ増加しています。2017年に約73兆円だったスマートペイメントの市場規模は、2024年は約122兆円にまで拡大するとの予測を出しているのです。

出典:第273回NRIメディアフォーラムPDF資料(野村総合研究所)

2017年から2019年までクレジットカードの取扱高は全体の約80%前後をキープしていますが、2020年に約75%、2021年には約70%台にまで減少しています。一見クレジットカードの市場規模が減少しているとの見方もできますが、スマートペイメント全体の市場規模自体は拡大しているため、実質的な取扱高が減少しているわけではありません。

デビットカードの成長が最も著しく、2019年の2.4兆円から2024年には33兆円規模にまで拡大するとの見通しを公表しています。

日本国内におけるデビットカードの利用率が上昇する根拠として、クレジットカード発祥の地である米国が影響していると思われます。米国は数あるカードの中でクレジットカードの利用率が最も高い傾向にありましたが、2018年の調査によるとデビットカードの利用率が上回っているのです。

出典:creditcards.com

上記はクレジットカード・デビットカード・現金の中で、どの決済手段を用いたかを店舗タイプ別に表したグラフです。上から順にデパート・ディスカウントストア・ガソリンスタンドが表示されており、他にもスーパーマーケット・飲食店・ファストフード店・カフェなどの調査結果も出ています。

デビットカードは登録された銀行口座から即座に引き落としがおこなわれることもあり、Apple PayやLINE Payなどとの相性が良いとの意見もあります。

スマートペイメントの活用事例を国内外で比較

決済の利便性向上に繋がるスマートペイメントは、国内外ともに着々と導入が進められています。中でも米国における電子決済サービスは幅広いジャンルに導入されている上進化を遂げており、今後日本国内の場においても導入される可能性が非常に高いです。

米国のスマートペイメント事情

米国では様々な決済サービスをオンライン上で決済できるようシステム構築や導入がなされており、次の4つを主要としています。

⦁ プレミアムSMS(ショートメッセージでコンテンツ利用料を課金できるサービス)
⦁ 携帯キャリア決済
⦁ Webベースの支払い
⦁ NFC(非接触通信技術)

大手カフェチェーンの「スターバックス」や、大手ファストフードチェーンの「マクドナルド」、配送サービスを展開する「Uber Eats」などが実際にオンライン決済システムを導入しています。中でもUber Eatsに関しては現金取引が一切なく、専用アプリでモバイル決済をしないと注文できない仕様になっているのです。

ここまでのサービス事例は日本国内においても導入されているため想像がつく方もいるかもしれませんが、米国では教育や行政サービスの場でもオンライン決済が可能になっています。小中学校の給食サービスや大学授業料などの支払いだけでなく、交通違反の反則金の支払いにおいてもスマートペイメントは活用されているのです。

また日本では一部のユーザーしか利用できませんが、世界中に10億人以上のユーザーを抱えるインスタグラムにもスマートペイメントを活用した決済サービスが登場しています。その名もInstagram Payment。インスタグラムアカウント内で決済方法を登録することでインスタグラムを通した決済ができるのです。インスタグラム内には幅広いジャンルの投稿がなされており、アパレル商品のショッピングやレストランの予約などで事前決済ができるようシステム構築が進められています。

国内で実装されているソーシャルペイメント

国内におけるスマートペイメントといえばソーシャルペイメントが流行しつつあります。中でもLINE経由で決済ができる「LINE Pay」は、日本の登録ユーザー数が3,000万人を突破したことで一躍話題になりました。

LINE Payの利用者数が拡大した理由はポイント還元率の高さです。サービス開始当初ポイント還元率2%を誇り、高還元率決済システムとして一気にユーザー数が拡大しました。

LINE PayはLINEユーザー同士の送金やQRコード決済が可能となっており、決済スピードの速さに定評があります。

次に大々的な広告宣伝で一世を風靡したPayPayもソーシャルペイメントに分類されます。PayPayは100億円キャンペーンという利用金額に応じてポイントを付与するサービスを計2回実施しています。

PayPayは大規模な宣伝が功を奏し、2018年6月に設立した若い会社ながら600万人に迫る勢いでユーザー数が伸び続けています。

スマートペイメントへの意識が着実に高まっている
従来、米国では30歳~44歳の世代が最もモバイル決済を利用しており、若者世代は現金決済を利用するという傾向でした。しかし、Apple PayやGoogle WalletなどのWebベースの支払いによるセキュリティ対策や信頼度が高まってきたことを受け、スマートペイメントへの意識が着実に高まっています。

また米国の小売業者はチェックアウトプロセスを簡素化し、ショッピングに伴う煩わしさを排除したいと考えており、常に最良の決済手段を消費者に提供しようと模索しています。実際に2016年度全米小売業者の約半数がNFC技術を店舗に導入しており、スマートペイメント促進のためのインフラ整備が着々と進められています。

日本においてはスマートペイメントという言葉があまり浸透していないものの、キャッシュレスやQRコード決済という言葉は広く知れ渡っています。それも各社による大々的な広告の成果だと言えます。

スマートペイメントの将来

アメリカのマーケティング会社Transparency Market Researchが発表した「Mobile Payment Technologies Market – Global Industry Analysis, Size, Share, Growth, Trends, and Forecast, 2018–2026」という市場レポートによると、2026年までにモバイルペイメント市場のみで約5,000億ドル(約5兆円)規模の取引にまで拡大するとの見込みを公表しています。

2016年のモバイルペイメント市場は約750億ドル(約7,500億円)であり、2026年までの約10年間に約70%の成長が見込まれていることになります。

中でもアジア太平洋地域の成長率が最も著しく、2026年には世界市場の50%以上を占めると予想されています。モバイル決済テクノロジーの進化が大きな理由として挙げられますが、スマートフォン所持者の拡大もスマートペイメント市場を力強く牽引していると言えます。

スマートペイメント市場の中でもモバイルペイメントの成長率が高い理由は、決済の利便性が高いことだと言えます。モバイルウォレットは消費者にとって使いやすいよう着々と改良が進められており、専用アプリをインストールして支払情報を追加するのみでオンライン決済を利用できます。

目を見張るほどの成長率

更にユーザー認証やWebサイトでクレジットカード情報を入力する必要がないこと、クレジットカードを物理的に利用する必要がないことなど、セキュリティ技術も格段に向上しています。

日本のスマートペイメント市場も成長する見通しとなっており、2017年度におけるクラウド型決済プラットフォームの取扱高が約400億円、富士キメラ総研による2022年度予測は1,420億円とのことです。またウォレットサービスの2017年度取扱高が1兆7,430億円、富士キメラ総研による2022年度予測は3兆3,390億円にまで拡大するとの見込みを公表しています。

スマートペイメントによるウォレットサービスは、2014年10月にサービスを開始したApple Payの普及により大きく世に浸透していきました。決済処理にトークン化技術を取り入れたことで、決済時にカード情報ではなく暗号化された文字列を用いた支払いをおこなう仕様になっています。したがって、携帯端末の中にクレジットカードの情報を保存する必要がない上に、店側にクレジットカード情報が渡る心配がありません。これまでにないセキュリティの高さが人気を呼んでおり、今後益々スマートペイメントの市場規模が拡大していくことでしょう。

まとめ

世界的に見てもスマートペイメントの市場価値は拡大しつつあります。決済における利便性の高さや、クレジットカードを持ち歩かないことによる安全性の高さなど多くの魅力的なポイントがあります。

一方で、2019年現在モバイルペイメントを導入している店舗が少ないことや、キャッシュレスの必要性を感じないなど日本国内におけるスマートペイメントに関する課題が山積みです。市場規模を拡大していくためには、現金主義国家である日本国民の心を動かす画期的なシステムや、魅力的なサービスを展開していき、安全性の高さを強調していくことが大切でしょう。