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リストラ相次ぐ!メガバンクに求められる「伝統的銀行業務」からの脱却への道はあるのか

次世代金融産業の覇権を巡る戦いで、最も苦しい戦いを余儀なくされているのは、日本のメガバンクかもしれません。米国金融機関と比較しても、デジタルトランスフォーメーションの遅れは否めません。金融ディスラプターが優れたUI/UXを提供する顧客接点を開発する一方で、メガバンクの顧客接点は店頭窓口やATMというビジネスモデルから脱却ができていないのです。

そのため、時代はメガバンクに不利な方向へと変化しています。ここでは、メガバンクの現時点の状況と今後の動きについて詳しく解説します。

モバイルバンキングサービスの時代へシフト

時代はメガバンクに不利な方向へと変化していますが、Business Insider Intelligenceの調査「モバイルバンキング・コンペティティブ・エッジ(Mobile Banking Competitive Edge)」のデータを見ても明らかです。調査によると、モバイルバンキング利用者のうち64%が、銀行口座を開設前に、その銀行のモバイルバンキングサービスを調べており、61%がモバイルバンキングの使い勝手が悪いと銀行を乗り換えると回答しています。

この調査結果から分かることは、米国では既にユーザーが銀行を選ぶ際の決め手は”モバイルサービスが充実しているかどうか”となっているのです。

メガバンクの厳しい現状と打開策

日本の大手メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)では、2016年までの10年間で銀行窓口を訪れる客数が4割減少する一方で、ネットバンキングの利用者は5年間で約4割増加しました。このようなモバイルシフトの影響を受けて、各銀行の支店の閉店が相次いでいます。2017年に公表された3大メガバンクの店舗統廃合、大幅な人員削減(リストラ)、人員の配置転換は相次ぎ、深刻な問題となっているのです。

更に追い打ちをかけるフィンテック企業同士の手数料合戦

こうしてフィンテック企業が顧客を銀行のリテール部門からじわじわ奪っている一方で、加速しているのがフィンテック企業同士の金融サービスの価格競争の促進です。現在のフィンテック企業の金融サービスは圧倒的に手数料が安く、既存金融機関では比較にならないほど存在感をアピールしている現実があります。こうしたフィンテック企業の取り組みが金融機関の収益を押し下げる要因となっている一方で、各大手の金融機関も手をこまぬいているわけではありません。以下の項目では大手の金融機関の最新の動きを見ていきます。

三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)

三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は、本業の儲けである業務純益が大幅に減少しています。このような背景に伴い、無人店舗を作り出し動きに乗り出しています。

業務純益40.4%減少

三井住友フィナンシャルグループの2017年9月決算は、前年同期比40.4%減少の3,053億円となっています。最終利益は、グループ会社の証券会社の業況が好調だったため、前年同期比17%の増益ですが、業務純益は前年度比40%以上の減益となっています。

4,000名の部署配置転換

三井住友銀行は、今後3年間かけて全店舗を次世代型店舗へ移行すると発表しました。全店舗を次世代型店舗へ移行することができれば、当然ながら店舗の人員を削減できるようになります。三井住友銀行は、次世代型店舗への移行により、約4,000名の行員を店舗から他の部署へ移行する計画も併せて発表しています。

オープンイノベーションの基盤作りに注力

オープンイノベーションとは、自社内の経営資源だけに頼らず、社外のフィンテック技術などを活用して新サービスに繋げる試みのことです。フィンテック企業と敵対するのではなく、上手く技術やアイデアを組み合わせて、市場ニーズの多様化にアジャストしていく動きです。

三井住友銀行は、ITを用いたイノベーションを強化する目的で「ITイノベーション推進部」を設置しました。ITイノベーション推進部の主な取り組みは、次のようなものが挙げられます。

2015年:GMOとSMBC GMO PAYMENTを設立して、決済代行ビジネスをスタート

2017年:NTTデータなどと共同で生体認証プラットフォームを提供するPorarifyを設立

2018年:マイクロソフトと共同で対話型自動応答システムを展開すると発表

上記の他にも、ブロックチェーンやAI、IoTなどの技術を用いた実証実験を進めています。また、オープンイノベーションを生み出すための基盤づくりにも注力しています。海外では、シリコンバレーに要員を派遣し、先進的なベンチャー企業やITベンダーとの関係作りを行っています。

また、グルーバル規模のベンチャー企業やITベンダーとの関係作りを積極的に行っています。また、グローバル規模のベンチャーキャピタルであるプラグアンドプレイとの連携などを通じて、優良なベンチャー企業との提携を進めています。この動きは日本国内でも展開していて、2017年9月には、オープンイノベーションの拠点として「hoops link tokyo」を東京都渋谷区に開設しました。

三菱東京UFJフィナンシャルグループ(MUFG)

三菱東京UFJ銀行は、3大メガバンクの中では、最も業務純益の減少が少なくなっていますが、それでも業務純益は大幅な減少となっています。そのため、他2行と同様に店舗削減・省力化・人員の配置転換を発表しました。

業務純益13.3%減少

三菱東京UFJフィナンシャルグループの業務純益は、前年同期比13.3%減の4,422億円、グループの最終利益は27.8%増の6,269億円となり、3大メガバンクの中で最終利益は増益となっています。しかし、増益の原因は円安要因や持ち分法適用会社の業績拡大や保有株式の要因が大きく、業務純益は大幅な減益となり、他の2行と同様に厳しい経営状況を反映した結果となっています。

店舗数を2割削減へ

三菱東京UFJフィナンシャルグループでは、2018年度からの3年間で、国内の516店舗の支店を約2割削減する方針を発表しています。

9,500名の部署配置転換

店舗の統廃合によって、行員の9,500名分の業務削減を見込んでおり、この9,500名は他の部署へ配置転換される見通しとなっています。

6,000人の直接的な人員削減

三菱東京UFJ銀行は2023年度末までに、約4万人の従業員の内の約6人を削減することを発表しました。

イノベーションのジレンマを打ち破る

デジタルトランスフォーメーションへの取り組みで先行するのは、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)です。2017年9月には「デジタルトランスフォーメーション戦略」を発表し、伝統的な銀行業務からの変革を宣言しました。この戦略の改革の具体策は2017年5月に発表された「MUFG再創造イニシアティブ」に記されています。改革の柱は、ビジネス・カルチャー・プロセス・社会の4つとなっており、事業変革で営業純益効果2,0000億円を目指すと示されています。

参考資料:デジタルトランスフォーメーション戦略(PDF)

優秀なエンジニアが活躍する組織作り

改革にあたり、MUFGは新たな役職CDTOを設置しました。また、デジタル企画部を設置して、外部の知見も活用することで、従来の銀行員的発想から脱却した施策を推進するとしています。デジタルトランスフォーメーションには、優秀なエンジニアが必要不可欠です。

世界の金融ディスラプターたちも欲しがっている優秀なエンジニアをいかに惹きつけ、採用して定着させるかが問題になってきます。この問題は、容易に解決できるものではありません。邦銀が勝ち残れるかは、優秀なエンジニアを惹きつけて、自律的に働くことを促進し、スタートアップ企業のような組織文化に刷新し、イノベーションを生み出すことができるのかにかかっているということが鍵を握るのです。

チャネル改革と業務効率化

MUFGのデジタルを活用した事業変革の具体的な取り組みとしては、「チャネル強化」が挙げられます。例えば、スマポアプリや電話のFAQの自動応答などをはじめとする非対面チャネルの拡大が挙げられます。これにより、キャッシュカードや通帳の再発行、住所変更なども、わざわざ実店舗を訪れる必要がなくなります。

この取り組みには、店頭来客数の減少、ネット決済を選ぶユーザーの増加という取引スタイルの変化に合わせた取引チャネルを提供する意図があります。その一方で、有人チャネルも変革します。国内に約500ある店舗のうち100店舗を新型店舗「MUFG NEXT」に切り替える方針を発表しました。税金や公共料金の支払いを機会化し、テレビ電話でオペレーターと相談できる窓口が設置されます。このような仕組みによって、店頭事務を効率化し、店舗に配置する人員を削減することができるのです。

ブロックチェーン活用などオープンイノベーションも推進

MUFGはメガバンクでありながら、ブロックチェーンを用いた仮想通貨の開発を進めることでも話題となりました。決済のデジタル化という潮流を踏まえて、日常的な支払いから企業間の送金、インターバンク決済に至るまで様々なユース・ケースを想定して開発が進められています。

その1つに「MUFGコイン」の試験導入があります。これまでの仮想通貨の課題を解決し、銀行発行による価値安定(1コイン=1円)によって、信頼される決済インフラとして利用されることを目指しています。また、MUFGは、インターネット企業が得意とするオープンイノベーションにも積極的に取り組んでいます。

金融サービスの機能を「MUFG APIポータル」を通じて外部に公開し、外部企業と提携しながら新しい金融サービスを展開する基盤が用意されました。会社の芯までデジタル化しようとしている姿勢が見受けられます。

カニバリゼーションの実施

カニバリゼーションとは、既存事業と新規事業が食い合いになることを意味します。通常は、既存事業が破壊されることを恐れて大胆な計画を打ち出すことが困難な中で、MUFGはカニバリゼーションとなることを推進しようとしています。MUFGはAmazonのようにイノベーションのジレンマを打ち破ろうとしているのです。

みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)

みずほ銀行も業務純益が三井住友銀行と同様に大きく減少しました。また、みずほ銀行は三井住友銀行や三菱東京UFJ銀行よりも大きく踏み込んだ大幅なリストラ計画を発表しています。

業務純益40.5%減少

みずほファイナンシャルグループも、2017年9月決算の業務純益は、前年同期比40.5%減少の1,807億円で最終利益も前年同期比11.5%の3,166億円となっています。日銀のマイナス金利の影響による貸出し利益の悪化などが減益の理由です。

100店舗削減へ

みずご銀行は、2024年末までに、総店舗数の2割にあたる100店舗を削減する方針を打ち出しました。

19,000名の部署配置転換

みずほ銀行は、2026年度末までに行員を19,000人削減すると発表しています。店舗数を削減し、IT化による業務の効率化の徹底を図り、人員を大幅に削減する計画です。

有力テクノロジー企業との提携を発表

人型ロボット「Pepper」を皮切りに先進的な取り組みを続けているのがみずほです。現在では人工知能「Watson」でのコールセンター支援やロボアドバイザーサービスの「SMART FOLIO」の提供をしています。

みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は、2018年の採用活動において「みずほらしくない人に会いたい。」をキャッチフレーズにしました。これは旧態依然とした金融機関特有の守りの文化を壊す、創造的な人材の採用を目指すものです。

デジタルトランスフォーメーションにあたっては、人材の刷新も不可欠なのです。また、2015年7月には、グループ横断的な取り組みにより新ビジネスの創出を目指す「インキュベーションプロジェクトチーム」を設立しました。また、2017年4月には、デジタルイノベーションを選任する役員としてCDIOを設置して、デジタルイノベーション部を再編しました。

モバイルコンピューティング導入

2017年10月には「みずほダイレクト」アプリに生体認証機能を導入しました。2018年4月にはスマホを使用したデビット決済「スマートデビット」と、スマートデビットが使えるスマホアプリ「みずほWallet」の提供が始まりました。クレジットカードではなく、銀行口座から直接チャージされるため、決済と同時の引き落としが実現。

2018年8月には、JR東日本との提携により「みずほスイカ」の機能が追加されました。このような取り組みの結果、モバイルコンピューティングの導入により高度なシステムを構築し、顕著な成果をあげている企業や団体を表彰する「MCPC award」を8年連像で受賞しました。

AIスコアによる融資サービスの提供を開始

2016年11月、みずほ銀行がソフトバンクと共同で立ち上げた株式会社ジェイスコアがあります。この貨車では、融資を受けたい顧客が質問に回答することでデータを提供し、これをもとにAIが信用スコアを算出して融資するというものです。すべての手続きはスマホ内で完結します。事業開始から半年で貸付残高が35億円に達すると滑り出しは好調です。

地域銀行の主なフィンテックへの試み

LINE銀行設立でデジタルネイティブ世代の囲い込み

2018年には、株式会社LINEとタッグを組み、LINE銀行を設立することが発表されました。2020年中にも開業する見通しです。いまだに新興企業であるLINEにとって、メガバンクが持つ信頼、安心は金融サービスを強化する上でなくてはならないものです。みずほ銀行側は、LINEユーザーのデジタルネイティブ世代を取り込みたいという狙いがあります。みずほ銀行の

まとめ

マイナス金利や超低金利時代の中、メガバンクはこれまでの投資信託や保険商品などで収益があげにくくなってきます。

また、フィンテックの登場により、銀行の立場が危険に脅かされています。そのため、メガバンクにもフィンテックの導入などの必要が迫られています。ブロックチェーンやフィンテックの可能性は現時点では無限大です。これらを活用することによって、融資や送金などのサービスは進化していきます。メガバンクでも、ブロックチェーン技術やフィンテックの導入を検討していますが、このような技術はIT企業が最も得意とするところです。

そのため、メガバンクのライバルは他の銀行ではなく、IT企業に切り替わる時代もそう遠くないかもしれません。各銀行から発表される新サービスなど、スケールメリットを活かした銀行のサービスがこうしたIT企業にどのように対抗しうる策を取っていくのか、生き残りをかけて「伝統的銀行業務」からの脱却への道を模索する日が続きそうです。