
AI(人工知能)市場が拡大する中で、国内大手メガバンクが融資の際にAIを活用する「AI融資」を2017年に開始しました。フィンテック関連のベンチャー企業が誕生している中で、大手企業ならではの戦略で、業務効率化や顧客満足度の向上に向けて動いているようです。
メガバンクも参入するAIが審査を行う融資とは、どのようなものなのでしょうか?当記事、日本初のAI融資サービス「AIスコア・レンディング」を事例にして、AI融資の魅力について解説します。
AIスコア・レンディングとは
画像:JSCORE(以下画像全て同様)
AIスコア・レンディングは、みずほ銀行とソフトバンクが開発した個人向け融資サービスです。
AIスコア・レンディングの運営会社は、双方が折半出資して2016年11月に設立をした株式会社ジェイスコア(J.Score)。関東財務局に登録している貸金業者として、2017年9月25日に人工知能(AI)を使用して、若手社会人や学生に融資するサービスを始めました。
同社によれば、AIが信用力を自動計算して、個人向けに融資するサービスは日本初。米国では、クレジットカードの利用履歴などを基に信用力を算出する「FICOスコア」などの手法が普及しているが、日本では個人の信用力を表す数値化された指標はほとんどありません。そのため、注目すべき金融と先端ITを組み合わせたFin Techサービスと言えます。
人工知能を使用した融資サービス
AIスコア・レンディングはAIを活用して、利用者の信用力を自動で算出して、その結果を基に融資するサービスです。利用者が登録した年齢や性別、学歴、年収というデータを自動アルゴリズムによって処理して「AIスコア」を計算します。独自指標であるAIスコアの数値に応じて貸付利率や、借り入れ可能な最高金額である契約極度額を決めていく仕組みです。
審査から融資までスマホで完結
AIスコア・レンディングは、借入の際の情報登録から審査、契約までの全てをスマホで済ませられます。AIスコアを算出するための質問に回答すれば、5分もかからずに貸付金利を算出してもらえます。また、融資の本審査もWeb上で手続きが行えて、平日であれば最短当日で融資を受けられる速さもサービスの強みとなっています。
株式会社J.Scoreの会社概要
事業内容
株式会社J.Scoreは、同意された顧客情報を基にしたビッグデータと先進的なAI技術を活用して、お客さまの信用力と可能性をスコア化する「AIスコア」を提供しています。2018年10月からは、AIスコアに基づくスコアランクに応じたリワードが受けられるサービス「AIスコア・リワード」のサービスも提供しています。
AIスコア・レンディングの強み
株式会社J.ScoreのAIスコア・レンディングは、他の融資サービスと比較すると下記のような強みがあります。
1.全く新しいFinTechブランド
2.先進的なテクノロジーを活用したビッグデータ、AIによる明快なスコア化
3.優れた商品サービス(競争力のある商品性)
4.快適な操作性のUI/UX(すべてがネットで完結)
5.店舗を持たないローコストなオペレーション
AIスコア・レンディングの審査の流れ
スマホ・PCのみで対応ができて、平日はお申込みから融資まで最短即日が魅力的なAIスコア・レンディングでは、どのような流れで審査が行われるのでしょうか?ここでは、AIスコア・レンディングの審査の流れについて解説します。
1.メンバー登録
AIスコア・レンディングのメンバー登録をします。登録に必要なものは、メールアドレスとパスワード設定のみです。
登録確認メールに記載されているURLにアクセスをして、メンバー登録を完了します。
2.質問事項への回答
質問には、ニックネームや生年月日、仕事、住居に関する18種類の必須項目と、性格やライフスタイルに関する約150種類の質問項目が用意されています。
すべて回答する必要はありません。しかし、すべてに回答した方がAIスコアの数値は高くなります。
3.AIスコアを診断
チャット上での質問解凍後に、AIスコアが表示されます。AIスコア診断実施後に、仮審査結果がメールで送られてきます。
4.本審査
仮審査結果を確認後、スマホやPCから本人確認書類や収入証明書類をアップロードして提出します。本審査結果もメールで通知されます。
5.契約手続き
本審査の結果を確認して、スマホ・PCで契約手続きを行います。ご契約と同時にお借り入れも可能です。
AIスコア・レンディングの魅力
みずほ銀行とソフトバンクが共同出資をしたジェイスコアが開発したAIスコア・レンディングは、従来の個人融資サービスと異なる魅力があります。金融と先端ITを組み合わせたことにより実現した魅力をご紹介します。
将来性を加味した信用力の判定
ジェイスコアが開発したアルゴリズムの特徴は、利用者の将来の年収を推定できる点です。現在は、年収が低い20代の社会人でも、将来性まで加味して適切に信用力を判断できるようにしています。アルゴリズムの導入によって、従来型のローンと比較して、若手の社会人にも融資がしやすいサービスが誕生しました。実際に、AIスコア・レンディングの5割は教育資金を目的とした借り入れです。
融資審査のスピードの向上
借り入れの際の情報登録から審査、契約までの手続きをスマートフォンで済ませられることも、AIスコア・レンディングの特徴です。利用者は、スマホのWebブラウザから質問に答える形で、学歴や年収など自身の情報を登録します。すると、5分もかからずに貸付利率を算出。
従来型の個人向け融資の場合、店舗に出向く必要があり、ネットで申し込めるサービスも審査結果が出るまでに1週間かかりました。個人向け融資サービスは、書類を準備して審査を受ける必要があるため時間も手間もかかっていましたが、スマホでの入力で完結するため融資審査のスピードが大幅に向上しました。
柔軟に貸付利率の変更が可能
AIスコア・レンディングは、チャット形式で質問に回答しながら、個人情報を登録します。年齢や性別、学歴、勤務先の業種と職種、雇用形態、住居に関する質問は必須項目で、正確やライフスタイルに関する約150項目の質問が用意されています。質問の回答が完了すると、瞬時に利用者のAIスコアが算出。
AIスコアは最高1,000点で、融資を受けるためには600点以上が必要です。AIスコアが高いほど信用力が高く、低金利で融資を受けることができます。
AIスコア 貸付金利(年率、%) 契約限度額の上限(万円)
950~1,000 0.9~2.1 1,000
900~949 1.9~3,7 730
850~899 3.5~5.4 540
800~849 5.2~7.0 400
700~799 6.8~9.5 260
600~699 9.3~12.0 150
~599 利用できない
債務不履行の発生率の低下
AIスコアを算出するためのアルゴニズムは、ジェイスコアが独自に開発しました。詳細は公開されていませんが、みずほ銀行の個人融資審査業務やソフトバンクの割賦販売における与信モデル構築のノウハウが活用されています。このアルゴリズムは、みずほ銀行が持つ個人向け融資データを学習しています。ジェイスコアの発表によると、統計学に基づく信用リスクモデルの評価方法と比較して、デフォルト(債務不履行)の発生率が低いという結果が出ているようです。
AIスコアリワードの付与
AIスコア・レンディングを採用することで、迅速な融資審査や債務不履行の発生率の低下が行えます。従来の融資審査にかかるコストを省くことにより実現できる、AIスコアリワードの付与が開始されました。毎月変化するAIスコアランクに応じて、利用者は特典が受けられます。
たとえば、語学教室のレッスン券のプレゼントや、旅行会社がコーディネートしてくれるオリジナルツアーなどのリワード(特典)が受けられるのです。AIスコア・レンディングは、個人融資を受けられるだけではなくて、特典も付与してもらえるということが大きなメリットです。
注目のAI融資の市場規模
AI融資の市場規模はどうなのでしょうか?ここでは、国外と国内のAI融資の市場規模について解説します。
中国や米国では驚異的な成長
中国や米国では、AI融資は驚異的な成長を遂げています。IDC社の調査結果によると、フィンテックAIは急速に普及し、年平均成長率は46.4%で、2023年には国内AIシステム市場全体で、3,578億円に達すると予測しています。
参考資料:IDC(国内AIシステム市場予測を発表)
世界の金融サービス期間において、最も変化が見込まれる分野は、信用評価、資産管理、株取引、ヘッジファンドといった分野です。世界では、各顧客向けにパーソナライズされたバンキングサービス、AIチャボットによるアシスタントサービス、人工知能による資産運用などのサービスが提供されています。
日本国内でもサービスが普及
世界では驚異的な成長を見せているAI融資は、日本国内にも普及し始めています。ここでは、どのような広がりを見せているのかをご紹介します。
株式会社J.Scoreは想像以上の結果
日本初のAIを活用した個人融資サービスのAIスコア・レンディングは、早々から想定以上に利用者が増えています。CEO(最高経営責任者)の大森隆一郎社長は「10年後までに融資残高1兆円という目標が見えてきた」と発表しています。
同社は、個人向け融資サービス開始から10年以内に融資残高を5,000億円以上積み上げる目標が掲げられていました。この目標の2倍にも昇る結果が出せる可能性も充分あるのです。
三菱UFJ銀行やソニー銀行などのメガバンクも参入
住宅ローンでもAIスコア融資が導入され始めています。仮審査に要する時間を大幅に短縮するためにソニー銀行もAIを導入し始めました。三菱UFJ銀行も住宅ローンの仮審査にAIを導入。NECの最先端AI技術を利用しており、最短15分で仮審査の結果が確認でます。このように、日本国内でもAI融資サービスが普及し始めています。
まとめ
さまざまな分野でAIが活用され始めていますが、金融業界も急激な変化を迎えています。今回は、日本初となる個人向け融資サービスのAIスコア・レンディングをご紹介しました。融資審査の時間を短縮するだけではなくて、各個人にパーソナライズ化した金利や将来性を加味した信用による融資の提供などが、AIスコアを活用することで実現できるようになったのです。
また、店舗を持たないローコストなオペレーションや業務短縮により、AIスコアリワードなど手厚い特典も付いています。AIが金融機関にもたらす影響は計り知れないのです。今後も進化し続けるAIには、注目をしておきましょう。