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アマゾン銀行が誕生する日に世界や日本にもたらす大きな影響

今ではAmazonは書籍だけではなく、生活用品や家電、デジタルコンテンツなどを含めたエブリシング・ストア化しており、収益構造を見ると世界のクラウド市場のシェアを3割占めています。そのようなAmazonが金融事業を始め、Amazon銀行が誕生するとどのような影響が出るのかを検証します。

既存金融産業をディスラプトするプレイヤーとしてAmazonは押さえておきましょう。Amazonを金融会社と答える方は少数派だと思います。しかし、オンライン書籍サービスという回答も十分ではありません。今では、Amazonは書籍のみならず、生活用品や家電、デジタルコンテンツ、生鮮食品などを含めたエブリシング・ストア化しています。収益構造を見れば、最も重要なのは「アマゾンウェブサービス(AWS)」です。

アマゾンのネット通販事業を支えるために、多大な人・モノ・カネを投じて開発したクラウドコンピューティングの仕組みであり、それを社外に開放してビジネスにしているのです。このAWSは世界のクラウド市場のシェア3割を占めています。このような企業が金融事業を展開すると、どのような影響をもたらすのでしょうか?この記事では、影響について深堀りしていきます。

Amazon経済活動圏の誕生

さまざまな事業展開をするAmazonの誕生によって、すべての経済活動がAmazonの中で完結する、Amazon経済圏が誕生しました。Amazonがなければ生活できないという方も多いでしょう。直近でも、アマゾン経済圏の拡大を表す報道は相次いでいます。

2017年には高級スーパー「ホールフーズ」を137億円ドルで買収、2018年には無人レジコンビニ「Amazon Go」の一般営業を開始しました。これは、Amazonの小売が「オンライン」から「オフライン」に進出して、オンラインとオフラインの統合であるOMOにまで進出していることを意味します。

このように、あらゆる事業を飲み込もうとしているAmazonが、中小企業向けの貸出の「Amazonレンディング」や、オンラインでの決済サービス「Amazon Pay」といった金融関連事業を展開しているのは驚くことではないかもしれませんが「Amazon銀行も誕生するのではないか?」と噂がされています。もし、Amazon銀行が誕生すればAmazon経済活動圏は確固たるものになるでしょう。

Amazonから誕生する金融事業

Amazon経済活動圏について解説しましたが、金融事業を深堀りしていきます。銀行の3大業務は預金・貸出・為替は、疑似的に創造できるものになっています。銀行の免許を取得しなくても、デジタルテクノロジーを使用して、銀行と同じような事業を開始することができるのです。

数ある金融ディスラプターの中でも、Amazonはその先駆者ともいえる存在です。Amazonは、銀行の3大業務である預金・貸出・為替をデュプリケートし、事業展開をしています。

預金:Amazonギフトカード・キャッシュ

銀行の3大業務の中でも、最も規制を受けている業務は預金です。お金を人から預かる業務は、銀行の一番のレゾンデートル(存在意義)といっても過言ではないでしょう。自己資本比率をはじめとする堅い規制が設定されています。

しかし、AmazonギフトカードやAmazonキャッシュは、ユーザーからお金を預かるという点で、広義の預金と説明しても差し支えない機能を持っています。また、金利という方いではありませんが、ポイント付与という形で、銀行預金ではあり得ない水準の実質的な利息をつけています。

Amazonギフトカード

Amazonギフトカードは、Amazon内でのショッピングに使用できるギフトカードです。コンビニで購入したり、オンラインで購入できます。ギフトカードとあるように贈呈用に購入するユーザーも多いですが、自分自身の支払い手段として利用する人も多いです。

好きな金額をチャージできるタイプのギフトカードを選び、コンビニやATM、ネットバンキングで払えば、通常会員は最大2.0%、プライム会員は2.5%のAmazonポイントが貯まるのです。メガバンクの普通預金金利が0.001%、定期預金金利でも0.01%という時代なので、Amazonポイントは魅力的です。

Amazonキャッシュ

Amazonキャッシュは、プリペイド口座です。通常、Amazonで買い物をするためには、アカウントを作成して銀行口座あるいはクレジットカード番号を登録する必要があります。Amazonキャッシュはこの手間を省き、Amazon口座に入金した現金で買い物ができるというサービスです。

Amazonキャッシュのユーザーは、銀行口座やクレジットカードを持たない人たちです。米国には「アンバンク」という言葉があります。アンバンクとは、銀行口座を持たないか、銀行以外の金融サービスを利用している人を指す言葉です。米連邦預金保険公社の調査によると、米国で銀行口座を持たない層は、3,350万世帯と推定されています。

決済:Amazon Pay

決済機能は周知の通り、ワンクリック決済はAmazonを爆発的に成長させたキッカケの1つです。以降もAmazonは、Amazon PayやAmazon Go、そして音声決済であるAmazonアレクサといった、イノベーティブな決済機能を投入し続けています。これらは、カスタマーエクスペリエンスの向上やトラフィックの増大につながるわけです。

Amazonが最も早くに始めた金融サービスは「為替(決済)」関連のサービスです。決済機能の利便性を高めることが、リピートを促し、EC・小売事業の売上を拡大させるためにも最も効果が高いと思われたからです。そのため、Amazonは決済にこだわりました。Amazonの創業は1994年。そして、1997年にはワンクリックを発明しています。

このスピード感から察するに、創業前から「決済を意識させない」というカスタマーエクスペリエンスの実現を目指していたはずです。決済を意識させないサービスは、カスタマーエクスペリエンスの向上に寄与します。

ランザクションの向上の電子決済

Amazon Payは、アカウントに登録されている情報を利用して商品が購入できる決済サービスです。

2017年からは実店舗での決済「Amazon Pay プレイシズ」が始まりました。、また、2018年からは実店舗でのQRコード決済も始まりました。サービス提供から3年後にはAmazon Payを導入するECサイトは数千社を超えました。Amazonは、顧客数を公表しない企業で有名ですが、2016年には170の国と地域の3300万人がAmazon Payを利用していることを公表しました。

Amazonアレクサの音声決済

音声決済手段のAmazonアレクサも存在感を増しています。

Amazonエコーなどアレクサ搭載デバイスを使用して買い物している人は少ないですが、利用者は増加中です。使い勝手も進化の一途を辿っています。文字入力と比較すると音声入力は簡単で、手がふさがっている状態でも使用できるというメリットがあります。音声決済を利用している米国人成人は8%、今後5年間で31%まで増えるとBIIは予測しています。

人数によると1800万人から7800万人に浸透し、米国成人の3人1人が音声決済を使用すると予測されています。

AmazonGoに採用されたIoT決済

Amazon Goは、2016年にAmazon本社のあるシアトルで試験運用が始まり、2019年1月時点では9店舗展開しています。

2021年までには3,000店舗をオープンさせる計画を検討中と言われています。AmazonGoの仕組みを説明すると、買い物客は自動改札機のようなゲートにスマオをかざして、QRコードでAmazon IDを認証させて入店します。あとは、陳列棚から商品をピックアップして、そのまま店を出ていいのです。

店を出る時に自動的に決済され、スマホにレシートが送られてきます。

その技術的背景は詳しく語られていませんが、そこに用いられているIoT技術が最先端のものであることがわかります。コンピュータが店内のカメラを通してお客様の顔などを認識し、どこで何をしているかを観察します。センサーフュージョンは、お客様がどこでどのような商品を手に取ったかを認識します。

そしてディープランニングによってAIがお客様の行動を学習して高速でPDCAを回して、ユーザーエクスペリエンスをさらに高めていくのです。

貸出:Amazonレンディング

Amazonレンディングは、Amazonに出典している事業者(セラー)について、売上の推移、顧客からの評価などを含むデータをもとに信用力を評価します。

この信用力による融資により、販売者が提供する品揃えはより豊富になり、ビジネスを拡大していくことができます。そのため「法人の販売事業者のさらなるビジネス拡大を支援する短期運転資金型ローン」と呼ばれているのです。

このAmazonレンディングのメリットは、オンライン手続きで最短で5営業日で完了するというタイムリーな資金調達が可能である点、販売事業者の売上が決済されるAmazonのアカウントから、毎月自動で引き落としされるというシンプルな返済手続き、そして最大5,000万円までの融資額が挙げられています。

Amazonレンディングを支えるビッグデータ

Amazonが融資に際して審査しているのは、事業計画や不動産担保ではありません。

端的にいえば、Amazonが抱える商流・物流・金流に蓄積された莫大なデータが判断材料となります。過去の販売実績や決済データなどを基にして審査しているのです。これができるのは、商流・物流・金融を三位一帯で押さえているからにほかなりません。

Amazonは「フルフィルメント by Amazon」の名で物流機能をセラーに提供しています。事業者の商品販売状況も、在庫状況のAmazonには筒抜けの状態なのです。Amazonレンディングの狙いは、あくまでもAmazonの経済圏の拡大です。販売事業者に融資をすることで利息収入を得られるだけではなく、彼らのビジネスを支援することで、Amazonの増えることを狙いとしています。

Amazon銀行の詳細予測

ここまで、Amazonの金融事情について解説しました。Amazon経済圏の拡大のため、そして「地球上で最も顧客第一主義の会社」という使命の実現のため、金融事業の推進はごく自然な帰結であるように思われます。

それならば、Amazon銀行誕生は予想しない方がおいしいのです。実際のところ、Amazon銀行への本格進出を狙いながらも、複雑で多岐にわたる規制や米銀行業界からの反対などによって、実現できないままでいます。そのような環境でも、クレジットカード事業や、Amazonレンディング、Amazon Payなどの金融サービスを展開してきたのです。

米国の金融機関は中国IT企業の攻勢に危機感を持ち始めているため、銀行と商業の分離を義務づける規制の見直しを検討しています。今後はIT企業の参入も認めて競争を促進し、米国の銀行にも競争力を高めることを求める方向に舵を切り出すかもしれません。そうなると、米金融当局がAmazonを含めたIT大手に銀行業本格参入を認めるのは時間の問題だと予想されます。

ビッグデータ×AIを駆使

Amazonが銀行業に参入した場合は、まずは預貸業務や決済業務から開始するものと考えられます。

Amazon独自の仮想通貨を基軸としてアマゾン経済圏を拡大すること、テクノロジー企業としての技術力を活かしてブロックチェーンとAIを活用した新たな金融・商業のプラットフォームを構築することなどが予想されます。そして、ビッグデータとAIを駆使し、多くの銀行によるAWS活用の知見をフルに活かしたAI銀行としてのAmazon銀行が誕生するでしょう。

Amazonが自社経済圏で使用できる「Amazon コイン」を発行した場合は、まさに巨大なAmazon経済圏が名実ともに誕生すると言えるでしょう。

Amazon銀行を中核とするレイヤー構造

Amazon銀行を中核としたAmazonビジネスのレイヤー構造は次のようになります。

【銀行】Amazon銀行

【ロジスティクス/物流】FBA(フルフィルメント by Amazon)

【クラウドコンピューティング】AWS(アマゾン ウェブ サービス)

【決済】Amazon Pay、アマゾンアレクサ(音声決済)、Amazon Go(IoT決済)

【サービス】EC・小売・エンターテイメント・モビリティサービス・スマートホーム・その他のサービス

蓄えるという観点から、商流・物流・金流を三位一体で押さえていく「情報銀行」としても事業展開できる潜在力を有していると思います。Amazon Pay・アマゾンアレクサ・Amazon Goは、Amazonが展開するさまざまな商品・サービス・コンテンツに顧客を誘導することが可能になるでしょう。

まとめ

Amazon銀行が誕生した時の脅威とは、本業であるEC・小売事業から金融事業を垂直統合できるという強み、サービス全般の中で金融サービスを提供できるという強みなのです。

あなたは、どちらの銀行を選びますか?「AI化する銀行」と「銀行業務も始めるAmazon」。Amazonは、世界で最も顧客第一主義の会社というミッションを掲げ、それと表裏一帯の優れたカスタマーエクスペリエンスの中で銀行業務を展開してくるはずです。

便利・手間がかからない・時間がかからない・わかりやすい・自動・フレンドリー・楽しい・取引している感覚がないというような次世代の銀行が登場するのも間もなくです。金融業界にどのような激震が走るのか注目しておきましょう。