オリンピックに間に合うか。急げ!コンタクトレス決済導入

コンタクトレス決済とは

コンタクトレス決済(Contactless Payment)とは、Contact(接触)がless(無い)決済方法のことで、端末にかざすだけで支払が完了する非接触型IC(集積回路)チップによる決済のことです。

交通系ICカードによる決済や、スマートフォンによる決済もコンタクトレス決済です。

端末にかざすだけの非接触決済方法

コンタクトレス決済では、専用リーダーにカードあるいはモバイル端末をかざすことで支払いできます。かざすだけなので、現金よりも支払いの作業が早く、利便性の高い決済方法です。

非接触型決済は、非接触型ICカード(NFC、Felica、RFIDなど)を利用し、現金を使わずにすばやく決済できるのが特徴です。2004年に日本で登場した「おさいふケータイ」は、世界に先駆けてコンタクトレス決済を導入した例であリ、Edy(楽天Edy)などの電子マネーもコンタクトレス決済を牽引する存在です。

コンタクトレス決済とQRコード決済の違い

コンタクトレス決済は、非接触型ICカードを使用するものに限られます。QRやバーコードを利用した決済はコンタクトレス決済ではありません。NFCチップなどの非接触型ICカードを利用した決済を指します。

最近はQRコード決済の注目が高いものの、利便性ではコンタクトレス決済の方が優れています。QRコード決済では、アプリを立ち上げてQRコードを読み取る、もしくは読み取らせる作業が必要です。しかし、コンタクトレス決済では、端末をかざすだけで決済が完了するからです。

決済端末などを導入する初期費用はかかるものの、QRコードよりも決済スピードが早いというのが、コンタクトレス決済の特徴です。

コンタクトレス決済の魅力

端末にカードをかざすだけで会計が完了する

最近は、NFCを搭載したクレジットカードも登場しています。NFCとは、近距離無線通信規格の一つで、搭載されている機器同士を近づけるだけで通信できる技術です。交通系ICカード(SuicaやICOCA)のように、端末にクレジットカードを近づけるだけで決済が完了するコンタクトレス決済です。

クレジットカードによるコンタクトレス決済は、「サイレンス決済」とも呼ばれています。サイレンス決済では、本人確認のサインなしに利用できるので、利用上限額が決められているのが一般的です。紛失や盗難などにより、第三者が高額な利用料を使用することを防ぐような措置がとられているのです。

利用明細に利用店舗が記載される

コンタクトレス決済を使った場合、どの店で購入したのかを確認できます。カードの明細内容をきっちり確認したい場合には、コンタクトレス決済を使うと便利です。

コンタクトレス決済を利用できるのは、クレジットカード会社とサイレンス決済の契約を結んでいるところのみです。スーパーやデパート、高速道路の料金所などではサイレンス決済が使えるところが増えています。

たとえば、VISAカードでの利用法は以下の通りです。

出典:VISA(以下全てVISA画像)
VISAカードを利用したコンタクトレス決済は、店頭やレジに VISA のタッチ決済対応マークのある、国内および海外の VISA 加盟店で利用可能です。

支払いの際、いつも通り「VISAで」と店員に伝えます。リーダーのライトが光ったらカードをタッチするだけです。

タッチしたら支払いは完了。サインや暗証番号は不要です。ただし、一定金額を超える支払いは、セキュリティのためカードを挿入し暗証番号を入力するか、サインが必要です。

世界標準規格のため海外でも利用が可能

コンタクトレス決済は、下記のコンタクトレスのマークがついているクレジットカードやデビットカードをレジの端末にかざすだけで決済できます。 世界標準規格なので海外でも利用可能です。

出典:American Express
ただ、カード会社ごとにコンタクトレス決済の名称は異なります。

世界基準の技術(EMV)の搭載による高いセキュリティ

クレジットカードのコンタクトレス決済が普及した背景には、不正利用問題や偽造問題が影響しています。現在発行されているクレジットカードには、磁気ストライプと 接触型 IC チップの両方が搭載されているものが多くなっています。

しかし、店舗では磁気ストライプを読み取るタイプの決済端末がほとんでした。磁気クレジットカードは、情報量が少ないという性質上、不正利用されやすいのです。

とくに海外では不正に情報を抜き取られるスキミング被害が相次いだことで 、1998年にIC チップ型のクレジットカードの統一規格「EMV」が作成され、不正利用に対処するようになったのです。

「EMV」とは、Europay Internationalの「E」、MasterCardの「M」とVisaの「V」を取って名付けられたIC型クレジットカードの統一規格です。イギリスやフランスなどでは、IC型クレジットカード対応率がほぼ100%になっています。

日本でも、2018年6月に施行された改正割賦販売法で、店舗の決済端末の IC 対応が求められるようになりました。経済産業省は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、国内で発行されているすべてのクレジットカード、および決済端末をEMVに準拠させることを義務づけると発表しました。


出典:経済産業省(PDF)

ただ、2017年度時点でEMVを導入したカードの発行は70%程度。決済端末においては17%(2014年VISA調べ)でした。2020年へ向けての普及が期待されます。

コンタクト決済の注意点

日本国内では加盟店が少ない

最近では、日本でもクレジットカードのコンタクトレス決済が広がってきています。2018年3月には、日本マクドナルドが全国の店舗でコンタクトレス決済を開始。同年9月にはコンビニ大手ローソンでも使えるようになりました。

しかし、現在のコンタクトレス決済は、コンタクトレス決済のサービスごとに使える店舗が分かれ相互に利用できない、そもそも使える店舗が少ないという問題があります。

顧客側もコンタクトレス決済のサービスと、サービスが使える店舗の組み合わせを把握するのが困難です。クレジットカードのコンタクトレス決済は、設備投資等の理由から、小規模店舗での普及は難しいかもしれません。しかし、すでにクレジットカードを導入している大手チェーンや大型店舗などでは、今後の普及が予想されます。

紛失時に不正利用される可能性もある

コンタクトレス決済は、商品購入時にカードで決済することを伝えて、カードを端末決済にかざすと使えます。店員にカードを渡す必要がないので安心です。しかし、カードを落とすと簡単に使われてしまうというデメリットがあります。

コンタクトレス決済対応のクレジットカード

VISA payWave

VISAのタッチ決済(VISA payWave)は、国際ブランドであるVISAが提供しているコンタクトレス決済です。レジにあるリーダー(読み取り機)に非接触対応のVISAカードをタッチするだけで支払いが完了。一定金額まではサインも暗証番号も不要です。

世界標準のセキュリティ技術であるEMVを採用しているので、高度な安全性を実現しています。通常のVISAカード同様、安心して買い物を楽しめます。

MasterCardコンタクトレス


出典:Mastercard(以下画像同様)

Mastercardコンタクトレスは、国際規格NFCを用いた非接触決済のことです。利用方法はMastercardコンタクトレス機能が搭載されているMastercardカード、またはデバイスで、コンタクトレスのユニバーサル・シンボルマーク(下図)をタップするだけです。

ワンタッチで支払いが完了するので、カードの紛失や偽造のリスクを減らせます。カードの情報は暗号化され、厳重に保護されています。また、タップを2回してしまっても、請求される金額は1回のみです。

世界中のカフェやレストラン、ファーストフード店などで使えますが、国内ではマクドナルドやローソンなどが対応しています。

JCB Contactless


出典:JCB

JCBコンタクトレスは、JCBカードやJCBカードを登録したスマートフォンなどを店舗の端末にかざすだけで買い物ができるコンタクトレス決済です。主な特徴は次の3つです。

1.簡単・スピーディ

一定額以内なら、端末機にかざすだけでサインせずに買い物が可能。スピーディに支払いが完了します。

2.国際標準規格の決済

近距離通信の国際基準規格に準拠しているので、国内だけでなく海外の店舗でも利用できます。

3.セキュリティも万全

ICカードの国際標準規格「EMV」に準拠しているので、高い安全性を確保。安心して買い物できます。

AmericanExpressコンタクトレス

AmericanExpressコンタクトレスは、AMEXブランドの非接触決済サービスです。店舗のレジにある端末に、AMEXコンタクトレス対応のカードや、AMEXカードを登録したスマートフォンをかざすだけで支払いできます。

ICカードかつカードの表面・裏面にタッチ決済の対応マークが入っているカードであれば、タッチ決済が可能です。

コンタクトレス決済の市場規模

矢野経済研究所は、国内キャッシュレス決済市場の調査を実施しました。この調査の「キャッシュレス決済市場」とは、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードなどの現金以外の支払手段で決済された金額のことです。

2018年の国内キャッシュレス決済市場は約82兆円に達し、2019年に約89兆円を超える規模まで拡大すると予想しています。

そして、クレジットカード端末のIC化による不正使用対策や、海外で普及しているEMVへの対応が進み、コンタクトレス決済が急速に進むと予想。

今後は、クレジットカード決済を中心に、プリペイド決済やデビット決済の拡大が進み、2023年の国内キャッシュレス決済市場規模は約126兆円まで拡大すると予測しています。

出典:矢野経済研究所

日本のコンタクトレス決済事情

海外で普及しているコンタクトレス決済は「NFC Pay」という通信仕様ですが、国内では「Felica」が一般的です。Felicaは、ソニーが開発した非接触型 IC カードの技術方式です。海外で一般的なNFC Payとは通信方式が異なるので、互換性はありません。


出典:ソニー

Felicaが使われている代表的なサービスは以下の通りです。

⦁ 交通系ICカード

FeliCa はカードをかざすだけの使いやすさ、高速データの送受信が可能、データの自由な書き換えなど交通系ICカードに求められる高い課題をクリアしています。2001年に導入されたJR東日本のSuica以来、全国の電車やバスなどの交通機関に採用されています。

⦁ 電子マネー

「楽天Edy」、「nanaco」、「WAON」 など電子マネーにもFeliCaは採用されています。コンビニエンスストアやショッピングセンターから自動販売機・ネットショップまで利用が広がっていて、店舗側でもレジ処理の効率化というメリットがあります。

世界のコンタクトレス決済事情

キャッシュレス社会というと 、QR コードが普及している中国を連想する人も多いでしょう。 しかし、デビットカードやクレジットカードの利用が、一般的なデンマークやスウェーデンもキャッシュレス先進国です。

デンマークやスウェーデンでは、クレジットカードによるコンタクトレス決済に加え、自国の銀行が開発した非接触型のモバイル決済も普及しています。クレジットカードとモバイル決済による両輪がコンタクトレス決済を推進しているのです。

⦁ NFC Pay方式が普及
海外で普及しているコンタクトレス決済はNFC Payです。

⦁ VISAタッチ決済
⦁ Mastercardコンタクトレス
⦁ JCB Contactless
⦁ American Expressコンタクト

NFC Payは、先ほどご紹介した国際ブランドのカードで採用され、世界各国に広く普及しています。

まとめ

今回は、コンタクトレス決済について解説しました。コンタクトレス決済は、専用リーダーにカードあるいはモバイル端末をかざすことで支払いができます。現金よりも支払いの作業が早く、利便性の高い決済方法です。 ただ、カード紛失時に簡単に使われてしまうというデメリットがあります。

またVISAやJCB、Mastercardなど国際ブランドのクレジットカードで使用できますが、国内で使用できる場所はまだ限られています。

ただし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや2025年の大阪万博を控え、今後日本でもキャッシュレス化は大きく進むと見られています。とくに訪日外国人に対応するためにも、海外で普及しているNFC Pay方式のクレジットカードによるコンタクトレス決済の拡大が見込まれています。