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医療機関がキャッシュレスに対応する利点と立ちはだかる大きな壁

2015年の国内におけるキャッシュレス比率は約20%。 しかし、政府は2025年の大阪万博までに40%、将来的には80%を目指すという「キャッシュレスビジョン」を打ち立てています。

クレジットカードやデビットカード、 QR 決済など現金大国日本でも少しずつキャッシュレス化は進んでいます。しかし、病院やクリニックで支払う医療費は依然として現金払いが主流です。医療機関のキャッシュレス化を進めるにはどのようにすればいいのでしょうか。

医療機関におけるキャッシュ化の現状と今後の課題について解説・提言します。

医療機関のキャッシュレス対応の現状

現金払いが主流の医療機関でも、総務省の働きかけで大病院ではクレジットカードが普及しています。しかし、中小の病院や診療所・クリニックの動きはまだ鈍いです。 現状では、クレジットカードや電子マネーは、使えるところと使えないところがあると言わざるを得ません。

クレジットカード払い

キャッシュレス決済で代表的な、クレジットカードの利用状況はどのようになっているのでしょうか。

以前は現金払いのイメージが強い国立病院や国立大学病院に対し、総務省がクレジットカード払いの導入について働きかけを行いました。

その結果、総合病院や大学病院のほとんどでクレジットカード払いに対応しています。ただ、中規模の病院はまちまちで、小規模の病院や診療所については対応していないところが少ないのが現状です。

電子マネー払い

クレジットカードに対応する病院が増える中、電子マネー払いにも対応する病院があります。JR東日本の病院であるJR東京総合病院では、Suicaなどの交通系電子マネーが利用可能。 その他、iDやnanaco、楽天Edyなどに対応している病院もあります。

病院のコンビニでは電子マネーを使えるところが多いものの、医療費の支払いに使える病院はまだそれほど多くありません。利用できる電子マネーの種類もまちまちです。

医療機関のキャッシュレス普及の課題

高額なキャッシュレス決済手数料

とくに、キャッシュレスが十分に普及していない中小の医療機関にとって、大きな課題は決済手数料です。

クレジットカードなどキャッシュレスによる支払いが行われると、決済手数料の支払いが必要になるので病院の利益が減ってしまいます。総務省の調査では、大病院の決済手数料は診療費の0.6~1%です。

しかし、中小の医療機関に対するキャッシュレス決済サービスを提供している会社では、手数料3%以上と案内しているところがあります。3%もの手数料は、中小の医療機関にとって大きな負担になります。そのため、カード会社の選別が必要です。

クレジットカードは、決済代行業者を利用するのが一般的です。決済代行業者によって初期費用や維持費、手数料が異なります。入金サイクルも異なるので、経営状況を考え、負担の少ない決済代行業者を選ぶようにしましょう。

次に、カード決済ができる金額を設定することです。

いくらでもカード決済ができてしまうと、少額の支払いにもカードを利用する患者が増えてしまいます。診療費のカード決済できる最低額を決める、自費診療のみカード決済を受けつけるなどの制限を設けるようにするのが良いのではないでしょうか。

キャッシュレス決済には、他に電子マネーやQR コードなどさまざまなものがあります。ただ医療機関の場合、クレジットカードに対応しておけば十分です。基本的に医療機関でのキャッシュレス化は、高額支払いの負担を軽くすることが目的だからです。

その代り、対応できる国際ブランド(VISA・Mastercard・JCB・American Express)数を多く用意しておけば、患者も利用しやすい環境と言えるでしょう。

キャッシュレス対応で変わる医療機関

医療機関がクレジットカードなどキャッシュレス決済を導入する最大のメリットは、高額になりがちな自由診療のハードルを下げられることです。

自由診療では、あらかじめ金額がわからないので、患者は多額の現金を持ち歩かなければなりません。

クレジットカードを利用すれば、患者の利便性も高まり自由診療を受けやすくなります。 クレジットカードを持っておけば、その場で支払いができるので患者にとってメリットとなるからです。歯科や産婦人科、美容外科では自費診療を増やしたい病院も多いので、決済サービスを導入している病院が増加傾向にあります。

医療現場の経営状況の分析・改善に貢献

2019年10月に予定されている消費税引き上げに伴い、キャッシュレス・消費者還元事業が注目されています。しかし、保険医療機関は補助対象にはなっていません。

ただし、ポイント還元事業をきっかけとして小売りや飲食業界を中心にキャッシュレス化が進み、消費者にとってキャッシュレス決済が日常化することが予想されます。

キャッシュレス決済を希望する患者に対応できないと、患者離れにつながる恐れもあります。キャッシュレスの導入や運用にはコストがかかりますが、 支払い時間の短縮やミス防止、現金管理にかかる手間の減少など、医療機関にとっても多くのメリットがあります。

キャッシュレス化を導入することにより、医療状況の分析や改善も容易になります。今後の病院経営にプラスの効果が期待できるのです。それを考えると、政府は補助対象として医療機関にまで早く拡大するように対策をする必要があるでしょう。

医療現場の生産性の向上

2018年度の診療報酬・介護報酬の改定により、規模の大小にかかわらず経営が楽な医療機関は少ないでしょう。自助努力による経営改善の手段としてキャッシュレス化は役立ちます。

コストを抑えて生産性を向上させることができるからです。 たとえば、キャッシュレス化によって未収金の削減による債権管理コストの低減や、現金管理コストを削減できるでしょう。

医療費後払いサービスの利用が可能

出典:医療費あと払い

医療費後払いとは、病院やクリニックの医療費を後払いにすることで、受診後、会計を待たずに帰ることができるサービスです。会計の待ち時間がゼロになります。通院時に必要なのは、診察券だけ。待機をする必要がないので財布も必要ありません。しかも、会員登録をした本人だけでなく、家族の分もまとめて支払えます。

現在使える支払い方法は、以下の5つです。

1.口座振替
2. NTTファイナンスの電話料金合算サービス
3.ソフトバンクまとめて支払い
4. auかんたん決済
5.クレジットカードで支払い

 利用の流れ

1.会員登録

支払方法によって、会員登録の手順が異なります。郵送もしくは Web から申し込み可能です。

2.窓口で利用を申請

医療機関の窓口で診察券と一緒に「あと払い」利用を申し込みます。

3.会計を待たずに帰宅

受信後は会計を待たずに帰宅。キャッシュレスなので、手持ちのお金を気にする必要はありません。

4.翌日以降に金額を確認

金額は、翌日以降にマイページか電話で確認できます。

訪日外国人の医療費不払い対策に貢献

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控える中、訪日外国人が増えています。2018年の訪日外国人数は3,119万人。前年比8.7%増となりました。そんな中、訪日外国人の医療費の支払いについても考える必要があります。

医療機関でのキャッシュレス決済は、日本の現金をあまり持っていない訪日外国人の医療費不払い対策にもなります。

2015年の世界のキャッシュ決済の比率は、以下の通りです。

出典:経済産業省(PDF)

日本のキャッシュレス決済比率が18.4%であったのに対し、欧米諸国では50%前後、同じアジアの中国は60%、韓国は89.1%にもなります。キャッシュレス決済が一般的な中国人や韓国人と、現金支払いが通常の日本人では支払いに対する考え方は異なります。

医療費の支払いを考えた場合も、医療機関がキャッシュレス化を進めるべき理由の一つになるのです。

ただし、キャッシュレス化を進めるのは訪日外国人だけのためではありません。救急で現金の持ち合わせがない場合や、高額な医療費の場合はすぐに現金を用意できない場合もあります。

医療機関に高額な現金を持ち歩くのは、盗難リスクもあります。大病院だけでなく、中小の病院や診療所も含め、すべての金融機関がクレジットカードや電子マネーなどキャッシュレス決済に対応することが必要なのです。

医療機関向けキャッシュレス決済サービス

HealtheeOneコレクト

出典:HealtheeOne

2019年10月に控えた消費税増税や、 QR 決済サービスの拡大により、キャッシュレス決済が急速に広がっています。そんな中、病院でのキャッシュレス化はまだ進んでいません。

そんな中、モバイルとアナログで地域医療を支援するサービスを提供する、株式会社HealhteeOneは、2017年10月より医療機関向けキャッシュレス決済サービス「HealtheeOneコレクト」に QR 決済、電子決済・ポイント決済機能を追加しました。

これまでは、クレジットカードのみに対応してきましたが、電子マネーや QR 決済などに幅広く対応するようになったのです。病院の現金・未収金集管理コストの削減、高額医療費の支払い対応、日本円を持っていない訪日外国人客の患者による利用など医療機関と患者双方の満足度の向上が望めます。

対応している決済方法は以下の5つです。

1.クレジットカード
2.コンタクトレス決済(タッチ決済)
3.電子マネー(FeliCa)
4. QR コード決済
5.共通ポイント( Ponta、 楽天ポイント、 d ポイント)

CADA(カーダー)

出典:CADA

医療情報のネットワーク化を推進するメディカル・データ・ビジョン株式会社は、2016年10月より医療費専門の決済事業を始めました。そして、患者が自由に支払料決められる医療費後払いサービス「CADA」の提供を開始しました。

CADAは、医療機関で発行される患者の診療記録を統合するための ID カード。CADA同意書を提出することで、医療機関における診療記録が保存されます。

CADAを持っていれば、 CADA医療機関で受診するたびに、診療記録が自動的に保存されるため、 面倒な手続きや自分で情報を管理する必要がありません。

過去の診療記録は、無料インターネットサービス「カルテコ」やスマートフォン向けアプリ「めでぃログ」でいつでも確認できます。そして、医療費あと払いサービス「CADA払いサービス」の利用が可能です。

(画像:カルテコ)

CADA払いサービスは、完全自由返済型の医療費関連後払いサービスで、次の三つの特徴があります。

1.毎月の支払日を自由に設定できるので、保険給付後など資金がまとめてある時に支払いできます。

2.何度利用しても、利用日から40日間は手数料がかかりません。

3.分割払いでかかる手数料は月1%(年率12.0%)

このような特徴があるので、急な入院や病気で出資がかさむときや、手持ちの現金がない、高齢の親の医療費を支払いたいといった時に使える便利なサービスなのです。

スクエア

出典:スクエア

Square(スクエア)は、専用の端末をスマートフォンやタブレットに接続して決済するタイプのサービスです。

据え置き型のサービスと異なり場所を取らないので、病院の受付に適しています。

主要クレジットカードに対応しており、手数料率は3.25~3.95%です。最短で申し込み当日に導入でき、わずらわしさがない点も医療機関にはうれしいポイントとなっています。

AirPAY(エアペイ)

出典:AirPAY

エアペイは、専用の決済リーダーをスマートフォンやタブレットと Bluetooth 接続して利用する決済サービス。主要クレジットカードに対応している他、電子マネーや QR コードにも対応しています。導入や運用費用は無料で、手数料は3.24~3.74%とスクエアと同程度です。

ただ、対応しているレジアプリが、Airレジのみなので、 別のレジシステムを利用している病院ではアプリの変更が必要になります。

まとめ

今回は、医療機関におけるキャッシュレス決済の現状を解説しました。現金払いが主流だった医療機関でも、大病院ではクレジットカードが普及しています。しかし、中小の病院や診療所・クリニックの普及はまだまだ低い状態です。

高額の手数料がかかるというのが、キャッシュレス化の普及しない大きな原因です。ただ、高額医療費に利用できることや、キャッシュレス決済が当たり前の訪日外国人の増加などにより、医療機関においてもキャッシュレス化は不可欠になってきています。

政府は2015年に20%前後だったキャッシュレス比率を2015年の大阪万博までに40%、そして将来的には80%まで高めることを目標としています。

今後、医療機関においてもキャッシュレス決済が使えないというのは大きなデメリットになるでしょう。

先ほど紹介した、HealhteeOneやCADAなど医療費専門のキャッシュレス決済サービスもあります。カード決済を導入することは、医療機関にとってビジネスチャンスを広げることを意味します。 とくに自費診療の売上を増やしたいと考えている小規模の病院や診療所では、導入を考えるようにしたいところです。