Home > 最新の記事 > P2P保険やオンデマンド保険など新しい保険をつくるインシュアテック

P2P保険やオンデマンド保険など新しい保険をつくるインシュアテック

さまざまな分野でテクノロジーの活用が拡がりを見せています。

その中でも保険サービスは、大数の法則という保険成立の特徴を持っていることなどから、保険分野におけるスタートアップ企業と既存保険会社との関係は、フィンテックとは少し異なる展開を見せています。どのような展開なのでしょうか?

ここでは、インシュアテックの魅力について事例を踏まえながら、分かりやすく紐解いていきます。

インシュアテックとは

保険においても新しいテクノロジーの利用が進んでいます。フィンテックが決済や融資、資産運用など主に銀行の手掛けるサービスへのテクノロジーの活用であるのに対し、保険のテクノロジーの活用は、保険(インシュアランス)×テクノロジーで「インシュアテック」と呼ばれています。

インシュアテックの利用目的

インシュアテックの利用目的は次の通りです。

効率的な保険サービスの提供

保険会社が手にするお金は、保険契約者が支払う金額の合計であり「表定保険料」と呼ばれています。

一方、被保険者に支払われる保険金の合計を「純保険料」と呼び、それ以外に、保険会社が経営に必要とする経費や代理店手数料、企業の利益を合計した金額を「付加保険料」と呼びます。

表定保険料純保険料付加保険料

保険会社にとって、表定保険料の増加、および純保険料や各種経費の減少が利益の増加につながるため、インシュアテックの利用でこれらを実現することも主な目的となるのです。

デジタル化けによる業務プロセスの改善

保険会社にとって、契約や保険金支払いなどに伴う事務作業の効率化は大きな課題です。そのため、保険会社は、ペーパーレス化やRPA(Robotic Process Automation)、AI(人工知能)など、新しいテクノロジーの導入を積極的に進めています。

業務の流れの中に紙を使用したアナログな手続きが入ると、電子データの流通が妨げられ、情報のアウトップットやインプットの作業も必要になります。

紙を利用した手続きをなくすと、こうした作業を減らすことができ、得られる電子データをうまく企業活動に活かせるようになるのです。

また、保険の募集では、営業担当者がタブレット端末を利用することによって、ペーパーレス化が進んでいます。これにより、書類の郵送にかかる時間の短縮や、書類記入・捺印といった顧客にとっての負担を減らすことができます。さらに、申し込みデータと社内システムを自動的に連結させることで、社内の業務効率化にもつながります。

インシュアテックが生み出す新しいビジネスモデル

インシュアテックを活用すると次のような新しいビジネスモデルを生み出すことができます。

販売チャネルの変化

インシュアテックは、保険会社の既存の業務プロセスを改善するだけではなく、保険の新しいビジネスモデルの構築にもつながっています。そのひとつが、保険の販売チャネルの変化です。

現在、保険の販売は、保険代理店に頼るところが大きいですが、今後は、保険会社が顧客に直接的に販売するダイレクト販売、とくにオンライン販売の比率が上昇すると見られています。アクセスもパソコンよりもスマートフォンやタブレット端末などを経由する方法が増加するでしょう。

そのようなオンライン化・モバイル化の動きに加えて、アグリゲーターやソーシャルブローカーといった、新しい販売チャネルの構築も始まっています。

販売チャネル:アグリゲーター

出典:confused.com

アグリゲーターとは、保険の価格比較サイトです。

多数の保険会社の保険商品を集めて、見積価格に基づいてリスト化されており、顧客はさまざまな保険を比較しながら、効率的に必要な保険を見つけ出すことが可能です。

とくに英国ではこの価格比較サイトの利用が進んでおり、2002年のconfused.comが最も古いアグリゲーターとされ、moneysupermarket.comなど多数のアグリゲーターがあります。

販売チャネル:ソーシャルブローカー

ソーシャルブローカーは、保険のオンライン仲介事業です。

その仕組みは、インターネットやSNSをベースに、既存の保険商品では契約できないが、保険ニーズがある顧客層を集め、類似したニーズを持つ顧客をグループ化し、顧客グループの代理人として保険会社と保険組成の交渉を行うというものです。

ソーシャルブローカーの利用によって、顧客は既存の保険商品では満たせない保険のニーズを満たすことができ、さらに集団として購買力を示すことで、保険料を安くさせることも可能です。

グループで組成するP2P保険

保険にも利用者が集まるプラットフォーム型の保険があり「P2P保険」と呼ばれています。

P2P保険では、複数の利用者が保険料を出しあい、自転車や家電といった特定の商品の破損や故障時に保険金が支払われるものです。保険会社を通さないことで、ニッチな商品を対象とした保険の組成が可能であり、コストを抑えて純保険料の比率を高くできるのです。

また、利用するメンバーが友達で形成された場合は、不正な保険金請求を行うと他のメンバーから非難されて、ネットワークから追放される恐れがあるため、従来の保険と比較すると、不正な請求の可能性が低くなると言われています。

P2P保険の事例:Lemonade

出典:Lemonade

P2P保険を手掛ける代表的なスタートアップ企業に、2015年創業の米国企業Lemonadeがあります。

Lemonadeは、家財保険を提供していますが、その仕組みは、スマートフォンで保険をかけたい家具や家電の写真を撮影して、住所や家のタイプなどを入力するだけで、保険を契約できます。契約の手続きや保険金請求の手続きを、すべてスマートフォンから行うことができる点が大きな特徴です。

保険金の請求は、スマートフォンのアプリからチャットボットで連絡すると、同社のAIが詐欺対策アルゴリズムを走らせて、請求が認められれば、およそ3分以内に支払いが完了します。

P2P保険の事例:Friendsurance

出典:Friendsurance

ドイツには、2010年創業のP2P保険のパイオニア企業Friendsuranceがあります。

同社のサービスでは、10名程度が参加するグループで保険料をプールし、保険金の請求に対してプールされた保険金から支払いがなされます。現在ドイツとオーストラリアにおいて事業を展開しており、ドイツでは自動車・住宅・家財など、幅広い分野を対象とし、オーストラリアでは自転車用の保険を展開しています。

オンデマンド保険

現在、保険の申し込み手続きにスマートフォンやパソコンを使用することで、スポーツやレジャー、旅行など、保険が必要な時間だけに限定して、手軽に利用することができる「オンデマンド保険」が増加しています。

オンデマンド保険の事例:Warrantee

出典:Warrantee

日本国内の事例では、インシュアテックのスタートアップ企業Warranteeが、発売から3年以内のデジタルカメラ、アクションカメラに対して、24時間単位で加入できる保険「Warrantee Now」を2017年から提供しています。

Warrantee Nowは、保険の加入から壊れた場合の損害報告まで、すべてをスマートフォン上のアプリで行います。

【Warrantee Nowの利用方法】
1.保険に加入したい自分のカメラをアプリ上で検索する
2.補償プランを選択する
3.加入前の状態確認のために保険対象のカメラを撮影してアプリ上で送信
4.クレジットカード情報の登録
5.加入ボタンを押す

上記のような手続き方法で保険を利用することができます。とても簡単な操作です。

オンデマンド保険の事例:Trov

出典:Trov

海外では、米国のスタートアップ企業Trovが有名です。

「Go Pro」や「iPad Air」といったデジタル機器について、対象物の故障・破損・紛失・盗難に対応する保険を提供しています。同社の保険では、スマートフォンアプリの操作で「対象物に対して保険がかかっている状態」と「保険がかかっていない状態」を簡単に変更することができます。

そして、損害にあった場合は、故障・破損であれば修理をして、紛失や盗難であれば同じモデルの製品が代わりに提供されます。

オンデマンド保険の事例:その他

日本国内と海外のオンデマンド保険の事例をご紹介しましたが、その他にも次のような保険があります。

このようなオンデマンド保険は、シェアリングエコノミーの普及に大きな影響を与えていることが事例を見れば分かるでしょう。シェアリングエコノミーは、提供者が使っていないときだけ空いている時間だけ、サービスを提供することができるということが大きな特徴です。

そのため、年単位で契約する保険よりも、オンデマンド保険のように必要なときだけ契約できる保険へのニーズは今後も拡大していくでしょう。

まとめ

ここでは、インシュアテックについて解説しました。

最新のテクノロジーを活用することで、業務効率化だけではなくユニークで効率的な保険サービスが次々と登場しています。とくにシェアリングエコノミーと相性の良いオンデマンド保険は、年単位で契約をする保険よりも、必要なときだけ保険に契約することができるので大変便利です。

このようなユニークなビジネスモデルが、インシュアテックから次々と登場してくるでしょう。そのため、最新テクノロジーの活用法などビジネス感度が高い方は、インシュアテックの動向にも注目をしておきましょう。