70兆円の国際送金市場に殴り込む「トランスファーワイズ」

海外送金には手間とお金がかかるというのが常識で、メールアドレスだけで海外送金が出来るペイパルが一歩抜けた存在でした。

しかし海外送金をより安く、シンプルにすることを使命として設立された「TransferWise(トランスファーワイズ)」が出てきたことにより、海外送金の概念が覆され海外送金の情勢が動いてきました。

そこでこの記事では、トランスファーワイズの概要と、メリット・デメリット、登録方法について解説します。

トランスファーワイズの基本概要

トランスファーワイズは、低コストの海外送金サービスを提供するイギリスのフィンテック企業で、2010年に設立されました。海外送金を公正でより安く、シンプルにすることをミッションとしていて、銀行の最大8分の1の手数料で海外送金が可能です。

創業者はskypeを開発したTaavet Hinrikus(ターベット・ヒンリスク)

出典:Twitter(ターベット・ヒンリスク氏)

創業者は、クリスト・カーマンターベット・ヒンリスク で、ともにエストニアの出身です。skypeの社員だったターベットは、ロンドンに住んでいるのでポンドで生活をしていましたが、給与はユーロで受け取っていました。

一方、ロンドンのデロイトで働いていたクリストは、ポンドで給与を受け取っていましたが、エストニアの住宅ローンを支払うためにユーロを必要としていました。二人の状況をまとめると、以下のようになります。

ターベット 受取 ユーロ  生活費 ポンド
クリスト  受取り ポンド  住宅ローン等の支払い ユーロ

彼らは銀行を通すという、一般的な方法で海外送金をしていましたが、時間とお金がかかっていました。そこで、自分たちで早くて安い海外送金サービスを開発しようと考えたのです。

二人はロイターの為替レートを毎月チェックし、ターベットはクリストのエストニアの銀行口座にユーロを、クリストはターベットのイギリスの口座にポンドを支払いました。その結果、為替手数料やコストを支払うことなく、それぞれ必要な通貨でお金を受取ることができたのです。

この手続を他の人にも可能にしたのが、「トランスファーワイズ」です。

毎月40億ドル以上の送金が行われる事業に発展

トランスファーワイズは設立から8年で大きく成長。現在では400万人以上の顧客から毎月約40億ドルの送金に利用されています。また、4つの大陸で21のオフィスを構え、従業員も1300人を超えています。

トランスファーワイズは、フィンテック企業の中で最も成功している企業の一つで、Richard Branson氏やPayPalの投資家であるMax Levchin氏、Peter Thiel氏などの著名投資家や、Virgin、PayPal、Skype、Betfair、Simple.comなどの企業からも出資を受けています。

トランスファーワイズの仕組み

トランスファーワイズでは、海外に現金を送金していません。それでは、どのような仕組みになっているのでしょうか。具体例を見てみましょう。

日本とアメリカでそれぞれお金を送金したい人がいるとします。トランスファーワイズでは、この二人をマッチングさせることによって、国内送金を行っているのです。詳しくは下記の動画をご覧ください。

たとえば、Aさんは日本からアメリカに2000ドル送金したい。Bさんは、アメリカから20万円送金したいとします。1ドル=100円とすると、金額は一致します。

そこで、この二人をトランスファーワイズがマッチングさせることで、Aさんのお金はBさんが指定する日本の銀行口座に振り込まれ、Bさんのお金はAさんが指定するアメリカの銀行口座に振り込まれることで、2国間の送金を可能にしているのです。

トランスファーワイズの特徴

出典:Twitter

トランスファーワイズは、次の三つの点を軸に活動しています。

1.透明性

銀行の海外送金には、手数料や利益について不透明な部分がありますが、トランスファーワイズでは何も隠す部分はありません。手数料などすべてをオープンにしています。

2.手数料を限りなく減らす

ほとんどの企業は自社の利益のため、手数料を顧客に請求する傾向があります。トランスファーワイズはその逆です。顧客の利益を最優先に考えているので、限りなく手数料を減らすようにしています。

3.常に最高のサービスを提供

多くの企業では、プレミアムサービスで多くのお金を取ろうとします。しかし、トランスファーワイズではプレミアムサービスが当たり前だと信じているので、別料金はかかりません。

それでは、トランスファーワイズのメリットについて具体的に見ていきましょう。

トランスファーワイズのメリット

簡単な操作で海外送金ができる

トランスファーワイズの登録はスマホで簡単にでき、後は郵送で書類を受け取るだけなので、銀行に行く必要はありません。支払いも国内口座へ振り込むだけなので、オンラインバンキングでできます。

トランスファーワイズを利用すると、多くの国や通貨間での送金が可能になります。2019年時点では59カ国以上に対応しており、新しい通貨も随時追加しています。

また、オンラインでの送金なので、途中で間違えてもやり直しがききます。一度送金すれば送金先の口座番号などの入力が不要になるので、2度目以降はさらに楽に送金できます。

さらに、トランスファーワイズでは、送金をできるだけ早く完了するようにしています。送金シミュレーターにいくつかの基本的な情報を入力するだけで、どれぐらいの時間がかかるかを見積もることも可能です。

送金手数料が安い

トランスファーワイズでは、「本当の為替レート」を使用しています。本当の為替レートとは、「インターバンクレート」や「ミッドマーケットレート」と呼ばれ、ロイターや Yahoo などで確認できるレートのことです。

一方、銀行の為替レートは、独自のレートを用いています。

「本当の為替レート」にコストを上乗せしているのです。それ以外に、「サービス利用料」として手数料を徴収していることもあります。このように銀行を通じた海外送金には、さまざまな「隠れコスト」がかかるのです。

トランスファーワイズは金融界に透明性をもたらすため、送金にかかるコストを可能な限り事前に提示しています。顧客にとって不利な為替レートや、隠れコストはありません。

以下のサイトで事前にシミュレーションして、全手数料額の見積もり額も算出できます。

トランスファーワイズの手数料

送金手数料は、金額や通貨によって異なるため、手数料の詳細は、手数料ページで確認するようにしましょう。

 

メールアドレスだけでも送金可能

トランスファーワイズでは、受取人の口座の詳細がわからない時や、銀行口座を教えたくない場合、受取人の銀行口座の詳細を入力しなくても、受取人がトランスファーワイズに銀行口座の詳細を入力することで手続きを完了できます。

もしくは、受取人がすでにトランスファーワイズのユーザーであれば、登録済みの口座へ送金することも可能です。

安心のサポート体制

トランスフォーワイズのオフィスは世界中にあり、顧客のサポートを多言語で行なっています。

また、サイトはシンプルで見やすい構成です。大切なお金を扱うので、わかりにくいと使う気になれません。もちろん、日本語にも対応しています。

トランスファーワイズは、スカイプの創業者が立ち上げたサービスなので、世界中に普及するサービスを開発した技術や経験があります。トランスファーワイズもその経験を活かし、使いやすくてわかりやすいサービスにしているのです。

トランスファーワイズの安全性は?

トランスファーワイズは非常に便利な送金サービスですが、安全性はどうでしょうか。

日本法人のトランスファーワイズ・ジャパン株式会社は関東財務局より、「資金移動業者」として認可されています。送金時に振り込んだお金は、「履行保証金」として法務局に保全されているので、万が一のときでも安全です。

トランスファーワイズのデメリット

現地の銀行口座が必要

トランスファーワイズは、海外の口座がないと送金できません。

これは仕組み上どうしようもないことです。また、日本で保有している外貨を海外に送金することもできません。基本的に国と通貨のペアが決まっているためです。

ただ、トランスファーワイズには、ネット銀行のような「ボーダレス口座」という仕組みもあります(2019年9月時点では、日本ではサービスを開始していません)。

ボーダレス口座とは、世界中の通貨を保有できるサービスで、40以上の通貨で資金を保管でき、必要な時にいつでも両替可能です。このサービスが日本でも使えるようになると、現地の口座の必要もなくなります。

早くサービスが開始されることが望まれます。

一度に100万円を超える送金ができない

日本から海外へ送金する時、一度に100万円を超える金額は送金できません。トランスファーワイズの日本法人は「資金移動業者」として扱われているので、資金決済法により資金金額制限が課せられているからです。

ただし、米国から日本へ送金する際の上限は100万ドル(1億円超)。海外からの送金は問題ないといえるでしょう。

トランスファーワイズの登録方法

それでは、トランスファーワイズの登録方法について見ていきましょう。

アカウント作成をする

出典:トランスファーワイズの使い方

トランスファーワイズは、アプリもしくはWebサイトで簡単に登録できます。必要なのは、メールアドレスもしくはグーグルやフェイスブックのアカウントとパスワードの設定だけです。

送金金額と通貨を決定

個人口座からの送金か、法人口座からの送金かを選択します。送金手続きを始めると、送金額や通貨の指定ができます。送金時は、次の3つを確認します(日米の場合)

1.日本から米国に送る金額と通貨(日本円)
2.米国の海外口座で受取る通貨(米ドル)と米国で受け取れる予定金額
3.為替レート保証

為替レート保証とは、手続きから48時間以内に指定口座の入金が確認できれば、手続きした時点での為替レートが保証されることです。

受取口座情報の入力

受取口座の情報を入力します。受取人は「自分自身」、「その他」、「法人・団体」のいずれかを選びます。

受取人のメールアドレス、口座名義、口座情報を入力します。口座情報がわからない場合、メールアドレスのみで送金も可能です。

本人確認を行う

資金を安全に扱うため、本人確認(免許証やパスポートなど)とマイナンバーの提出が必要です。

ただし、マイナンバーカード(通知カードではなく)を持っている人は、本人確認書類を用意することなく、1枚で済ますことができます。

その後、住所確認のため、トランスファーワイズから簡易書留(郵送)が送られてきます。初回10万円以下の送金は、住所確認の前でもできます。しかし、2回目以降の送金では住所確認が必要です。

一度住所確認が済めば、何度でも送金ができるようになります。

ただし、10万円より大きな金額を送金する時は、アクティベーションコードの4桁の数字が必要です。アクティベーションコードは、本人確認書類に書かれた住所に書類で送られてきます。送られてきたコードを入力しないと、手続きができないので注意しましょう。

送金する

送金の目的や送金内容を確認し、銀行振込で送金します。

振込口座は、トランスファーワイズ・ジャパンの日本口座(三菱UFJ銀行の恵比寿支店)。トランスファーワイズは、国内での銀行間送金を利用した仕組みになっています。

国内での自分の口座→トランスファーワイズ・ジャパンの銀行口座への振り込みが済んで初めて、海外でのトランスファーワイズの海外口座→受取人の口座へと振り込まれるのです。

振り込み後の手続きはトランスファーワイズが行います。送金状況は自分のアカウント上で確認でき、送金が完了するとメールで通知がきます。

まとめ

トランスファーワイズを利用すれば、銀行の8分の1の手数料で海外送金できます。現在では、400万人以上の顧客が、毎月約40億ドルもの送金手段として利用しています。

ドルやユーロなど主要通貨にほぼ対応しているので、利便性は非常に高いです。海外口座が必要なことや、100万円を超える送金はできないなどのデメリットはありますが、今後、国内でもトランスファーワイズを利用する人は増えていくでしょう。

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