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2020年に「みんなの銀行」を開業するふくおかFGの生き残り戦略とは?

ふくおかFGが開業する「みんなの銀行」とは

ふくおかフィナンシャル・グループは、2019年8月7日、2020年度にインターネット専業銀行の「みんなの銀行」を設立することを発表しました。地銀で初めてのインターネット専業銀行です。

これまでの地銀は、営業エリアが特定の地域に限られていましたが、みんなの銀行は従来の基盤である九州だけでなく、地銀の枠を超えた全国がターゲットです。

人口や地元企業の減少に加え、マイナス金利の長期化や異業種参入など、地方銀行の経営環境が厳しさを増す中、経営統合の動きが相次いでいます。しかし、経営統合の目的はコスト削減が主な目的で、必ずしも攻めの方策にはなりません。

ふくおかフィナンシャル・グループは攻めの姿勢に転じ、インターネット専業銀行で全国展開を狙っているのです。

それでは、みんなの銀行の特徴を見ていきましょう。

店舗を持たないネット専業銀行

「みんなの銀行」は、幼い頃からデジタル技術に親しむ世代がターゲット。デザインや使い勝手が優れたアプリを開発し、今後の金融取引でボリュームゾーンとなる世代を取り込むことが目標です。

危機感の背景にあるのは、「デジタルネイティブ世代」の銀行離れ。デジタルネイティブ世代とは、パソコンやインターネットが普及していた環境で生まれ育ち、デジタルに慣れ親しんだ世代のことです。増加するデジタルネイティブ世代のニーズに応えるために、「新しい銀行」をゼロから作る必要があると判断したのです。

また、イオンやセブンーイレブンなどの小売業やIT企業など異業種による銀行業務への参入が相次ぐ中、地銀自らがネット銀行を設立することで、銀行離れに歯止めをかけるという狙いもあります。

「みんなの銀行」を開業するふくおかFGとは

出典:ふくおかフィナンシャル・グループ

3行を傘下に収めた総資産24兆円越えの巨大地銀グループ

ふくおか銀行を中心とするふくおかフィナンシャル・グループは、九州を地盤とし、地域経済の発展と人々の豊かさを目指す総合金融グループです。

九州内で積極的に地銀再編を行い、熊本銀行・親和銀行・十八銀行の3行を傘下に収め、総資産24超円を超える巨大地銀グループになりました。全国の上場地方銀行・グループで総資産ランキング首位を走ります。

2016年に収支管理アプリ「Wallet+」を開発

ふくおかフィナンシャル・グループ傘下には、フィンテックを手掛ける「iBANKマーケティング」があります。iBANKマーケティングは、収支管理アプリ「Wallet+(ウオレットプラス)」を2016年から提供。80万人超の利用者を獲得した実績があり、2020年度には事業単体で黒字化できる見通しです。

ふくおかFGが成功を収めた「Wallet+」の魅力とは

出典:iBankマーケティング株式会社

夢をインスパイアするお金管理アプリ

Wallet+は、サービス提供会社である「iBANK」のサービスコンセプトである「私を”i”する、マネーサービス」に基づき、毎日の”つかう”をかしこく、将来の”ためる”へつなげる、夢を”inspire(鼓舞)”するマネーサービスです。

Wallet+には、以下のような機能があります。

⦁ 口座残高・月次の入出金明細の表示など、残高照会・収支管理機能
⦁ 総合口座普通預金との振替や、貯蓄預金口座の新規口座開設などの機能
⦁ パートナー企業が提供するクーポンが使える
⦁ 情報コンテンツ「mymo」を提供

賢い暮らしをインフォームする情報コンテンツ

情報コンテンツ「mymo(マイモ)」と連携しています。マイモは、次のようなコンテンツを提供しています。

⦁ MONEY(お金)
節約や貯蓄・資産運用・ローン・保険などお金に関する情報コンテンツ

⦁ LIFE(暮らし)
自己啓発・美容や健康・恋愛・結婚・グルメなど生活に関わるあらゆる情報

⦁ PEOPLE(人)
話題の人を紹介

買い物をイノベートする決済手段

Wallet+は、ふくおかフィナンシャル・グループ傘下の福岡銀行の総合口座普通預金と連携することで、収支を可視化する「お財布機能」や、「ちょこっと預金」・「目的預金」を開設する機能を持つアプリを用いた金融サービスです。

「ちょこっと預金」とは、収支管理した結果、余剰資金が出れば貯蓄用の別口座に移して貯蓄する機能。目的預金とは、「車が欲しい」「旅行に行きたい」など、自分で目的と金額を決めて預金できる機能のことです。

ふくおかFG等の地銀の存続が難しいと言われる理由

日銀は2019年4月に発表した金融システムレポートで、地方銀行の約6割が10年後の2028年に最終赤字になるとの試算を発表しました。人口減少と低成長による資金需要の先細りで貸し出しの伸びが細り、銀行間の競争が激しくなって、利ざやの縮小が続くためです。

地方で商圏が維持できなくなる

多くの地銀では高齢化で預金が積み上がる一方、人口や企業が減って成長見込みのある貸出先が少ないという共通の悩みがあります。

日本は人口減少の時代に入っており、とくに地方ではその影響が顕著です。

人口が減少すると地方では商圏を維持できなくなるエリアが増え、地域拠点への人口集約が進むことになります。九州地方で考えれば、各県の過疎地域から県庁所在地の人口集約が進み、九州全域では、中核都市である福岡市への集約が進む可能性が高くなります。

その結果、地方銀行の中で収益力が高いのは、首都圏や地方中核都市など大都市圏で展開する規模の大きい銀行で、福岡銀行・千葉銀行・横浜銀行などがこれに該当。これらの「メガ地銀」以外は、収益力を維持するのが難しいのです。

マイナス金利の長期化で収支が見込めない

日銀による異次元の金融緩和でマイナス金利が続いていることも、地銀の収益を圧迫している要因。当初は短期間ということで2016年からマイナス金利政策が導入されましたが、2019年になっても続いています。金利収入の減少が続き、地銀が取引先に貸す際の金利は1%を切っています。

競争が激しい東海地方などでは「名古屋金利」とも呼ばれ、金利ゼロで貸す地銀もあります。お金を貸して利息を受け取るという銀行の収益モデルでが成り立ちにくくなっているのです。

フィンテック企業の異業種参入

地方銀行は人口減少による商圏喪失やマイナス金利の長期化という問題に加え、フィンテック企業の台頭にも対処しなければなりません。フィンテックとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融と情報技術を結びつけたさまざまなサービスのことです。

近年、新興のフィンテック企業が銀行業務にも参入してきています。

たとえば、ソフトバンクのPay Pay や、LINEのLINE Payなど決済サービス業の異業種参入が相次いでいます。これまで預金・決済・融資といった機能を独占的に握ることで、銀行は長い間経済の中枢を担ってきましたが、規制緩和によってこの独占的な立場が崩れつつあります。

とくに給与振込口座を軸として個人顧客を獲得してきました。しかし、電子マネーがさらに普及すると、給与の支払いを銀行だけに限るわけにはいかなくなります。

そこで、厚生労働省はデジタルマネーでの給与支払が可能になるよう規制緩和することを表明しました。デジタルマネーでの給与支払いは、労働者にとって利便性が高まることや、税金や保険料などの自動徴収が可能になるなどのメリットがあります。

しかし、給与振込という独占的な利権を失ってしまうと、銀行にとっては顧客基盤が一気に崩れてしまうことにもなりかねないのです。

さらに、フィンテック企業は銀行業務に参入するだけでなく、積極的に銀行から人材を獲得しています。これは地銀も例外ではありません。地銀は地元では超優良企業なので、これまで転職者が相次ぐなど考えられませんでした。

しかし、若手行員中心に退職が相次ぎ、新興のフィンテック企業に転職する事例がでてきているのです。

ふくおかFGが開業する「みんなの銀行」の狙い

みんなの銀行は、地銀が全国で勝負する初の事例です。地方はマーケットがシュリンク(縮小)しているので、せっかくデジカル化に取り組んでも、サスティナブル(持続的)な成長は見込めないとふくおかフィナンシャル・グループは判断しました。

顧客のニーズに応えるため、まったく新しい将来の銀行をゼロベースで追求し、デジタル時代に向けてグループ会社が研究・開発をすすめる次世代バンキングシステムを採用したのです。

インターネットを活用した商圏エリアの拡大

地方銀行が攻めに転じるためには、首都圏や関西圏など顧客が多い地域に営業エリアを拡大していくしかありません。地方銀行で高収益を上げているところは、大都市圏での営業活動を積極的に行っています。

インターネット専業銀行は店舗を開設する必要がないので、店舗営業エリア外の顧客も獲得できる可能性が十分あります。みんなの銀行は、九州以外の地域における顧客獲得を意識し、商圏エリアの拡大を狙っているのです。

デジタル技術に親しむミレニアル世代の獲得

みんなの銀行が想定する主要な顧客基盤は、インターネットサービスに親しみがある若いミレニアル世代。これまでの銀行ビジネスでは難しいデジタルサービスを好む顧客への対応が目的です。

本来の銀行が持つ「預金・為替・貸付(融資)の三大業務と、「金融仲介・決済・信用創造の三大機能をゼロベースから設計する「まったく新しい銀行(デジタルネイティブバンク)」を設立します。

出典:ふくおかフィナンシャル・グループ

従来のネット専業銀行には、ソニー銀行やセブン銀行、ジャパンネット銀行などがあります。ネット専業銀行は、なんらかの特色がないとシェアを拡大することが難しいので、ジャパンネット銀行はネット通販を意識したサービスを展開しています。

一方、セブン銀行はセブンーイレブンに設置しているATMが強み。ソニー銀行は魅力的な金利と手数料体系を打ち出しています。

みんなの銀行は、今後普及するであろう電子マネーとデジタルネイティブをターゲットにしているという点は、大きな強みになりそうです。ただ、全国区で顧客を驚かせるような新たなサービスを提供できるかどうかがカギとなりそうです。

ディスラプションに乗り出す

みんなの銀行は、流通やITなど異業種の参入が激しい金融業界で、デジタルトランスフォーメーションによるディスラプション(破壊的創造)に乗り出そうとしています。デジタルトランスフォーメーションとは、ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること。

ディスラプションとは、デジタル化の進展で、ある産業が木っ端微塵に破壊されることです。まったく新しい金融サービスの仕組みをつくり、厳しい銀行業界での生き残りを目指すのです。

まとめ

全国展開を目指し、ゼロベースでつくる「みんなの銀行」は顧客獲得もゼロから。将来的にはふくおか銀行のライバルになることも想定しています。

ITを利用したフィンテックベンチャーの参入は今後も続くでしょう。みんなの銀行が既存のライバルを上回るサービスを提供できるかは未知数です。もし、ほかの地銀グループもネット専業銀行に進出した場合、他行との差別化は容易ではありません。

みんなの銀行が、若い世代にいかにメリットを訴求できるかがカギとなりそうです。