
中国政府は、国内での仮想通貨取引所の運営を禁じています。しかしOTC(店頭)取引を通じた中国人の仮想通貨取引は続いていて、マーケットの影響も健在です。
中国は厳しい資本統制(資本が海外から流入したり流失したりすることを禁止)をしているので、資金を海外に持ち出したい国民にとって選択肢はほとんどありません。そのため、仮想通貨が国外に資本を移す手段として魅力なのです。
この記事では、中国で人気のある仮想通貨をランキング形式で紹介します。
ランキング1位:EOS
EOS(イオス)は、香港のBlock.one社を創設企業とし、2017年6月に誕生しました。日本国内の取引所ではイオスを取り扱っていないので知名度は低いものの、発行枚数は10億枚、時価総額5位のメジャー通貨です。それでは、EOSの特徴を見ていきましょう。
高速なトランザクション処理速度を実現
イオスの最大の特徴は、「トランザクションの処理速度」です。トランザクションとは、データベース内で情報が処理される速さのこと。イオスの処理速度は、他の通貨よりも遥かに速くなっています。
たとえば、ビットコインは1秒で6件、イーサリアムは1秒で15件の取引を成立させます。処理速度が速いといわれるリップルやネオで1秒1,500件です。
しかし、イオスは1秒間で百万件以上の取引を処理できるのです。この処理速度はクレジットカードよりも速いといわれています。イオスでは、遅延など取引に問題がでたりする可能性は低いと考えられます。
取引手数料が無料で利用できる
イオスは取引手数料がかからないというのも大きなメリットです。ビットコインなど仮想通貨は、銀行などの金融機関と比べると手数料は安いものの、取引を繰り返すと手数料がかさみます。頻繁に取引を繰り返す投資家にとって、イオスは魅力的です。
分散型で公平な取引を実現
イオスの通貨単位は「EOS」。発行枚数は10億枚で7億枚が市場に出回っています。イオスは、分散型アプリケーションを構築するためのプラットフォームで、企業の間で公正に利用されることを想定して開発されました。
分散型アプリケーションとは、ビットコインやイーサリアムのように中央管理者が存在せず、不特定多数の者が自律的に行動した結果、全体のシステムが機能する自律分散型アプリケーションのことです。
メインネットへ移行済みの仮想通貨
イオスは、ICO(新規仮想通貨の公開)で発行されたときは、イーサリアムのブロックチェーンを利用していました。しかし、2018年6月に「メインネット」を開始してイーサリアムから独立。これにより、イオスの高いトランザクション能力などの機能が大幅に進化したのです。
ランキング2位:Ethereum
Ethereum(イーサリアム)は、Vitalik Buterin 氏によって開発されたプラットフォーム。時価総額はビットコインに次いで第2位で、注目度が高い仮想通貨です。
独自トークンを発行できる
トークンとは、既存のブロックチェーン技術を利用して発行された仮想通貨のことです。イーサリアムのトークンは分散型アプリケーションにおいて利用され、発行や分配、交換などの機能を持っています。
イーサリアムのトークンは個人・企業問わず誰でも発行できます。これは、イーサリアム がトークンの存在を考慮したプラットフォームとして作られていて、トークンの仕様や発行手順が広く公開されているからです。
イーサリアム全体では1193種類のトークンが発行されています。時価総額は1.3兆円を超え、トークンの時価総額は、イーサリアムが最大です。
契約を自動で執行できる
イーサリアムの大きな特徴は「スマートコントラクト」です。スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上に契約内容を記録し、期日になると自動で契約内容を実行してくれるシステムのこと。
スマートコントラクトによって、これまで多くの人手を必要としていた契約を自動で執行できるようになりました。
偽造・改ざんから取引情報を守る
スマートコントラクトはブロックチェーンを応用したシステムです。ビットコインのブロックチェーンではお金のやりとりしか記録されませんが、イーサリアムのスマートコントラクトは、金銭契約に関する文面なども全て記録として残せます。
契約の締結結果をブロックチェーンに取り込むことで、偽造や改ざんが難しくなることから、取引情報を守ることも可能です。
分散型で公平な取引を実現
イーサリアムのプラットフォームは、スマートコントラクトの機能を利用して、分散型アプリケーション(Dapps)を構築できます。
Dappsとは、銀行や中央管理者がいなくても稼働するアプリケーションのこと。
参加者全体がデータを分散して管理し、仕様変更などの意思決定に関わることができるので、公平な取引が実現可能です。
ランキング3位:TRON
TRON(トロン)は、クリエイターのためにつくられた仮想通貨で、2017年に公開されました。ブロックチェーンに基づいた世界最大級のオペレーティング・システムです。
デジタルコンテンツの保存・普及が可能
トロンは、世界中にある音楽や写真・動画などのデジタルエンターテイメントを、自由にアップロードできるシステム構築を目指しています。トロンは、ブロックチェーン技術を使うことでデジタル技術を保護し、デジタルコンテンツを多くの人に提供することを目的としているのです。
コンテンツ提供でトークンの報酬が得られる
トロンでは、「TRON20トークン」というトークン発行し、それを個人ICOという形で販売できます。たとえば、クリエイターが作品を作る時にTRON20トークンを発行し、それを売ることで資金調達できるのです。すべてのTRON20トークンはTRONと交換できます。
投資した人も、クリエイターが有名になればトークンの価格も上昇するので、メリットがあります。
コンテンツホルダーが自由にICOできる
トロンは、コンテンツを作ったクリエイター自身がICOできます。2017年に8月に行われた最初のICOは、わずか30秒で完売。2回目も10秒で完売しています。当時は仮想通貨の人気が高まっていた時期でしたが、人気が高い通貨であることが分かります。
分散型の公平な取引を実現
トロンは分散型ファイルストレージを利用して、エンターテイメント業界を発展させようとしています。分散型ファイルストレージとは、画像や動画・テキストといった様々なデータを、P2Pネットワークでつながったノード(デバイス)間で共有できる仕組みです。
各種データをより安全にオープンな環境で共有することが可能。ブロックチェーンによるファイルストレージは、これまで不正が一度も行われたことがないため、公正な取引が実現できるのです。
ランキング4位:NULS
現在の仮想通貨は投機性が強いものの、実生活で使用できるように、それぞれの仮想通貨が開発を進めています。そんな実用化の中で大きな役割を担うことが期待されているのが「NULS(ヌルズ)」です。
ヌルズは、カスタマイズ可能なブロックチェーンを利用し、企業が独自の分散型アプリケーション(Dapps)を作ることで、信頼性を向上させることを目的としています。
組み合わせ可能なマルチチェーン機構
ヌルズは、必要な機能を組み合わせて完成させる「マルチチェーン機構」を持っています。自由にシステムを組み合わせたDappsが導入されているブロックチェーンをサイドチェーンとして、ヌルズのメインブロックチェーンとつなぐことができるのです。
洗練されたスマートコントラクト
スマートコントラクトは「契約の自動化」といわれ、サービスを利用する際に発生する契約をブロックチェーン上で管理する技術。ヌルズにはスマートコントラクトの機能も実装されていて、ほとんどプログラミング知識がないユーザーでも分散型ネットワークが導入できる仕様になっています。
Proof of Creditを採用
ヌルズは、「Proof of Credit(信用の証明)」という独自のアルゴリズムを採用しています。Proof of Creditは、クレジットスコアによって報酬を手にできる仕組み。
クレジットスコアは、今までそのノードでどれほどのブロックが生成されたのかという「キャパシティスコア」と、正しいブロックが生成されなかった時のマイナスポインである「デュティスコア」によって算出されます。
3種類のレイヤーから成立している
ヌルズのレイヤー(層)は次の3種類から成り立っています。
モジュールレイヤー
開発者たちは、ブロックチェーンやストレージ、アカウントなど様々なモジュールを開発できます。これらは、ヌルズのモジュールレイヤーに保管されます。
ロジックレイヤー
スマートコントラクトは、ロジックの容器のようなものです。様々なアプリケーションがスマートコントラクトによって定義されて稼働しているからです。
これらはロジックロイヤーに保管され、ヌルズの適応性と柔軟性を保証しています。
チェインレイヤー
開発者は、異なるノードをカスタマイズするために複数の適切なモジュールを選びます。
それらのノードは異なるアプリケーションをサポートするために、異なるブロックチェーンによって繋がれています。
ランキング5位:GXChain
GXChainは中国で誕生した仮想通貨です。ブロックチェーン技術を活用することで、金融業界やデータ取引業界のブリッジ的役割を担うXRP(リップル)と似た特徴を持っています。
データ市場向けに商用化したもの
14億人前後と世界の4分の1近い人口を抱える中国では、データ取引量も膨大です。
GXChainのブロックチェーンを活用することで、金融情報を始めとした個人情報などの様々なデータを受け渡しする、プラットフォームの役割を果たすことができます。安全性を確保しながら他社へデータを転送できるので、著作権や情報に対する概念が薄い中国でも安心して利用できるのです。
分散型で公平な取引を実現
GXChainの分散型プラットフォームにおいてやり取りされる情報は、GXChainではなく、情報を所有する企業によって管理されています。つまり、ユーザー間でやりとりされる情報にGXChainは一切かかわることなく、プラットフォームの提供のみに役割を留めています。
また、プラットフォームの利用にはGXChainとの契約が必要なので、安全度は保たれます。
著作権や個人情報などの保護に役立つ
違法データの取引を無くすため、各データの取引はデータ所有者の確認が行われた時に実行されます。これにより、自由にデータの取引が行われることがなくなり、秩序を保てるのです。
豊富なダイレクトソース
現在のGXChainは企業間データのやりとりがメインですが、税務や社会保障など個人の多元的なニーズを満たすことを目指しています。
GXChainは、ビッグデータ時代のデータ取引市場のプラットフォームです。中国という特殊市場を前提として構成されていますが、世界の人口の約4分の1を抱えているので、十分な市場が存在しています。
他国でも応用できれば、その価値はさらに大きくなる可能性があります。
まとめ
中国政府は、国内での取引所の運営を禁止していますが、OTC(店頭)取引を中心に、中国人による仮想通貨の取引は続いています。最近では、米中貿易摩擦の激化と人民元安の進行により、仮想通貨を求める動きは強まっています。中国における仮想通貨のニーズは、今後も続くでしょう。