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地域通貨はどうなった!?成功事例が少ない地域通貨をどう普及させるか

地域通貨が再び盛り上がりの兆しを見せています。2005年のピーク時には国内で3,000以上もの地域通貨がありましたが、管理者の負担が重いことなどから多くの通貨は姿を消し、ここ数年は600前後での推移が続いていました。

しかし、ブロックチェーンなどデジタル技術を用いた地域通貨が相次いで誕生しています。地域通貨は、再び地方創生につながるのか、普及するにはどのようにしたらいいのかについて解説します。

地域通貨とは

地域通貨は日本円や米ドルなどの法定通貨ではありませんが、特定地域のコミュニティー内で法定通貨と同等の価値、あるいは異なる価値があるものとして発行される通貨で、「 エコマネー」とも呼ばれます。

地域通貨は、中央銀行ではなく市民やNPOが発行します。法定通貨とは別の通貨を発行することで、自分たちで地域を盛り上げていこうとする試みなのです。

地域通貨は、法定通貨では実現しにくい地域経済の活性化や社会問題の解決などのために発行され、特定の地域の企業と個人、企業同士、個人同士など様々な主体でモノやサービスの授受が行われた時の決済手段として利用されています。

地域通貨は、地域経済の活性化や相互扶助を目的に1990年代に広まりました。一時は3,000以上もの地域通貨があったといわれています。しかし、管理コストの負担などから多くの通貨は姿を消し、ここ数年は600前後での推移となっています。

しかし、ブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用し、送金・決済コストを削減した電子地域通貨が普及しつつあります。

近年発行された地域通貨は、

⦁ 地域金融機関が発行主体となっているので、決済サービスや貸し付けも加えた総合的な金融サービスを提供できること
⦁ ブロックチェーンなどデジタル技術の活用が進んでいるので、決済手段としての利便性を高めつつも、管理コストなどを抑制できる

という特徴があります。

日本国内の地域通貨のタイプ

地域通貨の発行方式には、次の2つがあります。

⦁ 集中管理方式

集中管理方式は、価値発行者が通貨を発行する方式で、通常の法定通貨と同じ仕組みです。銀行と同じように、価値発行者が通貨の管理を行います。わかりやすいシステムですが、紙幣の管理をきちんとしないと、インフレやデフレなど貨幣価値が大きく変わる恐れがあります。

⦁ 相互信用発行方式

サービスの価値を個人間で決めて、参加者同士で価値を発行するやり方。ネットや通帳の取引履歴を管理することで成り立っています。紙幣がなくても発行できますが、取引の全部を記帳しなければなりません。

日本国内の地域通貨の種類

地域通貨の種類は、主に以下の4種類です。

⦁ 紙幣発行型

地域独自の紙幣や硬貨を発行して流通させる仕組み。日本紙幣や名刺カードのようなイメージです。誰でも簡単に発行できますが、偽造されやすいというリスクがあります。

⦁ 小切手型

小切手を印刷して発行します。利用者が特定できるよう、小切手の裏にサインをして利用します。

⦁ ICカード型

紙幣の代わりにICカードを発行して取引を行う仕組み。公共施設や商店などに端末を置き、個人がICカードを持って取引します。

利用者の利便性が高く、データ収集も簡単にできますが、読み取り機器などの専用端末が必要です。

⦁ 電子地域通貨型

ブロックチェーンを利用した暗号通貨で、発行や管理コストが紙幣や電子マネーより安い。ブロックチェーン上で非中央集権化されているため、安全性が高いというメリットがあります。

コストの安さやセキュリティ面のメリットから、地域通貨へのブロックチェーンの導入が、官民問わず多くの運営母体で検討されています。

地域通貨のメリット

地域通貨の希少性

地域通貨は法定通貨と異なり、限られた地域でしか使用できません。さらに、通常購入できない地域通貨もあり、希少性があります。

通貨の循環促進

地域外にお金がでていくことがないので、地域内だけでお金を循環させることができ、地域経済を活性化させる効果があります。また、自分の好きな地域のお金を使うことができるため、地域通貨を使うことで、その地域に直接貢献しているという意識が高まります。

消費の促進

地域通貨は金利がつきません。また地域通貨によっては、消費しないと価値が下がったり、期間が過ぎたら使えなくなったりしてしまうので、消費の促進効果があります。

新しいビジネスを生み出す

紙幣だと買い物の取引データを管理することは困難ですが、地域通貨を電子化すればデータを管理でき、消費者の行動を分析できます。

こうしたメリットを活かしたいと考えているのは、店舗や地方自治体だけではありません。

金融機関にとっても、融資先を見つけるために地域通貨はとても便利です。地域通貨の取引情報を利用して、地域内の最適なビジネスマッチングを可能にする効果があるからです。

地域通貨のデメリット

使用できる場所が限定的

地域通貨は、地域内でお金を循環させるために、限られた地域でのみ利用できるようにしています。しかし、ほとんどの地域通貨は、その地域すべてで使用できるわけではありません。
狭い地域でしか使うことができなかったり、使えなかったりする店もあります。

また、交通機関や医療機関などでも使えません。地域内すべてで使えるわけではないという点がデメリットです。

使いたいと思える店や場所がないと、その地域に地域通貨が定着することは難しいでしょう。

導入コストや維持コストが高い

発行者側は偽造されにくくする印刷や安全な保管、発行・管理にお金が必要です。また、地域通貨導入後も、利用者拡大や広報のためのコストがかかります。地域住民側も、受け取ったあとで円に交換するのが面倒だという声もあります。

1990年代の地域通貨ブームは次第に下火となっていきましたが、大きな原因として、地域通貨の運営母体が抱えた負担の問題がありました。当時の主流は紙幣方式だったので、発行から管理・換金などに多大な労力やコストがかかったのです。

しかし、最近は発行・管理のコストが紙の地域通貨や電子マネーよりも安く済む「ブロックチェーン」を利用した電子地域通貨がでてきています。

電子地域通貨なら、ブロックチェーン上で管理できるため、安全性が高くコストがかからないというメリットがあるので、今後の普及が期待されています。

企業間の取引に使用できない

消費者から受け取った地域通貨は地元のお店に残ることになります。ある一定の地域内でしか利用できないと、企業が地域通貨を導入するメリットは小さくなります。

異なる通貨を利用する地域との取引は不便だからです。異なる地域の企業間でも取引できるようになれば、地域通貨はさらに普及していく可能性があるでしょう。

地域通貨の成功事例と失敗事例

地域経済の停滞やコミュニティー機能の衰退が叫ばれる中、1990年代後半から2000年代前半にかけて多くの地域通貨が生み出されました。

当時は、通常のお金(法定通貨)が評価しづらいボランティアなどのサービスへの対価として利用され、いわゆる「エコマネー」が主流でした。

地域通貨ブームのきっかけは、1999年の「地域振興券」でした。

出典 blogs.c.yimg.jp

当時の小渕内閣が、景気浮揚策として6,194億円を予算化し、全国の市町村区に商品券を全額国費補助で発行させたのです。65歳以上の高齢者や15歳以下のこどもがいる世帯に、一人あたり1000円券20枚・2万円分の商品券が配布されたのです。

地域通貨の発行は2005年あたりがピークで、全国で約3,000種類の地域通貨が存在したといわれています。現在は600種類前後まで減少してしまいましたが、成功している地域通貨もあります。地域通貨の成功事例と失敗事例を紹介します。

成功事例:早稲田のアトム通貨

出典:アトム通貨実行委員会

アトム通貨は、早稲田・高田馬場で街を活性化させるために生まれた地域通貨。2003年4月に高田馬場でアトムが誕生したという設定で、1年後の2004年4月にアトム通貨が誕生しました。

2009年より流通エリアを広げ、地域通貨としては類を見ない全国展開を図りました。アトム通貨は、「未来のこどもたちのために」をテーマに、「環境」「地域」「国際」「教育」の推進を理念に活動しています。

失敗事例:静岡県清水駅前銀座商店街のEGG

EGGは、2001年に静岡県清水駅前銀座商店街で生まれた地域通貨です。通貨のタイプは紙幣ではなく、プラスチック製のコイン。

経済的な利益よりも、地域の社会的幸福の実現を目指してコミュニティーを再構築しようとしましたが、地元の商店街でしか使えないので、わざわざEGGを利用するのが面倒になり、定着せずに終わりました。

世界の事例から見る地域通貨の可能性

欧米では、1980年代以降に地域通貨の発行が盛んに行われました。代表的な地域通貨を見てみましょう。

アメリカの地域通貨

Ithaca Hours(イサカアワーズ)

⦁ 貨幣単位 1イサカアワー=労働1時間10ドル
⦁ 発行方式 集中管理方式

1991年NY州イサカで誕生したアメリカ最古で最大の地域通貨です。当時のイサカは、失業率が3.2%と貧困に喘いでいました。イサカアワーズは、地域の経済活動を活発化させる目的で発行されました。

1イサカアワーは10ドルに相当し、1時間の労働の対価として交換でき、米ドルとも交換可能。イサカアワーズで取引できるのは、スーパーマーケットやレストラン、アパートの家賃支払いなど1000種類を超えました。

1991年から1999年までに行われた取引は1万件以上にのぼり、その経済効果は150万ドルともいわれていますが、2019年現在ではほとんど使われていないようです。

スイスの地域通貨

WIR(ヴィア)

WIRは、1934年スイスのチューリッヒで誕生。中小企業が互いの商品を取引するために発行されました。1936年には銀行免許を有する「WIR銀行」になり、これまで70年以上も運営され続けています。

WIRは会員制の通貨で、入会金や年会費などがかかりますが、数万社の中小企業によって構成されています。

会員になるには「中小企業の経営者」、「スイス国内に経営の基盤を置いている」などの条件があり、スイス国内の中小企業が会員です。

スイスでWIRが普及しているのには、次の2つの理由が考えられます。

1 スイスフランよりも低利率で融資を受けられる
2 地元事業者を保護する役割がある

たとえば、公共事業の入札を行う時、支払い額の一部にWIRを使うことがあります。すると、WIRを使えない企業は入札への参加が難しくなります。このような活用法によって、地域経済の活性化につなげているのです。

まとめ

日本の地方経済は、人口減や高齢化により疲弊が問題になっています。地域通貨が地方創生にどんな役割りを果たせるのかということは、日本のみならず世界中から注目されています。

1990年代のブームのときは紙幣による発行だったので、発行や管理・維持コストがかかり、多くの地域通貨は廃止となりました。

しかし、近年ではブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用し、送金・決済コストを削減した電子地域通貨が普及しつつあります。電子地域通貨はサスティナブル(持続的)な域内経済循環の基盤となるだけでなく、データの連携によって個人のニーズを実現し、地域住民の生活を豊かにすることが期待されています。

法定通貨とは別の通貨を発行し、自分たちの手で地域を盛り上げていこうとい動きが広がっているのです。