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通貨覇権争いの勝者は!?Libra(リブラ)に対抗する中国人民銀行のデジタル通貨

中国人民銀行がデジタル通貨を発行

10月28日、中国政府系シンクタンク「中国国際経済交流センター」の黄奇帆副理事長が、中国人民銀行が「世界で初めてデジタル通貨を発行する中央銀行になる可能性がある」と講演で述べました。

中国成デジタル通貨「DCEP」計画で、商業銀行に限定してデジタル通貨の試用運転開始の可能性があるとの発表が正式に行われたのです。

デジタル通貨には暗号資産の基盤技術である「ブロックチェーン」を活用します。国際金融の仕組みは今後本格的なデジタル化の時代を迎えますが、中国がデジタル通貨で先行すれば現行の欧米主体の国際金融の仕組みに波紋を投げかけそうです。

中銀デジタル通貨は現金の代替となる

「人民元のデジタル通貨は現金の代替となる一方、電子マネーを代替する存在ではない」と中国人民元銀行の穆長春決済司副司長は述べています。

現在の現金は偽造がしやすく、テロ資金やマネーロンダリングに使われる恐れがあります。一方、電子マネーも匿名決済などのニーズに対応しきれていません。中央銀行のデジタル通貨は、現金と電子マネーの問題点をクリアするツールになることが期待されています。

現金発行・送金などのコスト削減につなげる

中銀デジタル通貨は、現金の機能を代替することを意識して設計されています。ただし、銀行預金という銀行が提供する決済手段を代替するものではありません。銀行預金を代替してしまえば、銀行の経営に悪影響が及んでしまう可能性があるからです。

中銀デジタル通貨が現金に代わっていくメリットは、現金の発行や送金にかかるコストを削減できることです。

それは、現金の製造や輸送・保管にかかるコストです。その中には、現金自動預け払い機(ATM)の設置・維持コストもかかっています。

中銀デジタル通貨でキャッシュレス化をすすめることによって、コストを削減できるとともに、中国政府の頭を悩ませている人民元紙幣の偽造への対応もできるのです。

キャッシュレス化で経済の効率性を高める

中国では、ウィーチャットやアリペイなど、すでに民間でデジタル通貨やスマホ決済が広がっています。中央銀行が中銀デジタル通貨を発行することでキャッシュレス化を進める必要があるのでしょうか。

これに対して、中国人民銀行は、民間のデジタル通貨は銀行口座の中で決済がされるのに対し、中銀デジタル通貨は銀行口座に依存しないものになる、と両者の違いについて説明しています。

銀行口座を利用せずに決済が完了すれば、中銀デジタルは現金に近いものになります。つまり、中国人民銀行は現金にとって代わるものを、新たに発行しようとしているのです。

これまで、電子決済ツールにおける資金の移動は、必ず銀行口座を経由しなければいけませんでした。しかし、人民銀行のデジタル通貨は、銀行口座を利用せずに価値を移転でき、取引段階での口座への依存度が大幅に低下します。

つまり、人民元のデジタル通貨は現金と同じように流通がしやすく、人民元の流通と国際化にとってもプラスになります。

さらにキャッシュレス化を進めることによって現金にかかる発行・流通コストを削減し、経済の効率性を高めることもできるのです。

中国人民銀行のデジタル通貨の仕組み

二層運営システムを採用

中国人民銀行の中銀デジタル通貨は、以下のような「二層運営システム」を採用します。

上層 中国人民銀行と民間銀行との取引
下層 民間銀行と消費者の取引

民間銀行は、従来どおり顧客からの現金引き出しのニーズに応え、新たに中銀デジタル通貨での受け取りも可能にするのです。

個人は中国人民銀行から中銀デジタル通貨を直接受け取るのではなく、民間組織を通じて入手することになります。民間組織には、中国銀行・中国工商銀行・中国農業銀などの大手銀行のほか、アリババやテンセントも含まれる予定です。

二層運営システムを採用する理由として、中国人民銀行決済精算司の穆長春氏は、「中国は教育やネットの普及具合に差がある。格差が大きい中、中央銀行が直接国民にデジタル通貨を発行するのはリスクが大きい」と述べています。

中銀デジタル通貨誕生による5つのメリット

それでは、中銀デジタル通貨のメリットについて見ていきましょう。

1.匿名で利用できる

中銀デジタル通貨と民間デジタル通貨の違いとして、匿名性があります。チャットペイやアリペイで商品を購入する場合、顧客の取引履歴がチャットペイやアリペイに蓄積されます。そのデータを利用して、企業は利益を上げているのです。

しかし、中国でも個人データが利用されることに抵抗を持つ人が少なくありません。そこで、中銀デジタル通貨では、匿名性の高さを重視した設計になっています。現金のように、誰が使ったのか履歴が残らない仕組みにする予定なのです。

2.利用者の拡大が可能

中銀デジタル通貨の匿名性が、どのように確保されるか明らかではありません。通常、買い物をすれば取引履歴が残りますが、そのデータに誰もアクセスできないような仕組みになるのかもしれません。

もしくは中銀デジタル通貨を口座で管理するのではなく、個々の利用者のスマホなどの端末に価値が移転・蓄積されるような仕組みになるかもしれないのです。

その場合、中銀デジタル通貨は電子マネーに近い存在になります。顧客が店舗で買い物をして中銀デジタル通貨で支払った場合、取引情報は店舗に残りますが、利用者は特定されないようになるのです。

匿名性を高めることで、デジタル通貨の普及を拡大できます。一方、匿名性の高さは、マネーロンダリング(資金洗浄)など犯罪の温床になってしまう可能性があるという問題点があります。

3.人民元の国際化に貢献できる

中国政府や中国人民銀行は、中国以外の国でも人民デジタル通貨の利用拡大を視野に入れています。デジタル通貨は人民元建てであることから、中国国内と海外の間で人民元建ての送金がなされる場合は、低コストで迅速、さらに中央銀行の高い信頼性が担保された新たな決済手段を提供できます。

中銀デジタル通貨が、人民元の国際化の起爆剤になる可能性があるのです。

4.金融政策の効果を高められる

中銀デジタル通貨発行の目的の一つは、金融政策の効果を高めることです。通常の金融政策は、政策金利の変更を通じて民間銀行の資金調達コストに影響を与え、銀行はそれに対応して貸出金利や貸出姿勢を変化させます。

しかし、中銀デジタル通貨に金利をつけてこれを変動させれば、個人の消費を直接コントロールできます。たとえば、中銀デジタル通貨の金利を引き下げれば、個人が金融資産として持ち続けるインセンティブが低下し、それを消費に使うようになるので金融政策の効果を高めることができるのです。

5.偽札の偽造などの防止が期待できる

人民元紙幣などの現金は偽造が容易で、マネーロンダリングやテロ資金などに使われる恐れがあります。一方、民間の電子マネーも匿名決済などのニーズに対応しきれていません。中央銀行のデジタル通貨は、現金と電子マネーの問題点をクリアするツールにもなり得るのです。

中銀デジタルの開発を促す通貨覇権争い

中銀デジタルが懸念するLibraとは

中国人民銀行は、以前から中銀デジタル通貨の発行に向けた準備を進めていましたが、その動きを加速させるきっかけとなったのが、フェイスブックが2019年6月に新デジタル通貨「Libra(リブラ)」の発行計画を発表したことです。

リブラは、中国以外の地域での利用を想定した設計になっていますが、中国当局はいずれ中国でもその利用が広がることを恐れ、先手を打って中銀デジタル通貨の発行を急いだ可能性があります。

世界のインフラを整えるために発行される通貨

フェイスブックがリブラを発行する目的は、世界の金融インフラを整えるためです。日本では法定通貨である日本円を銀行や「ゆうちょ」などの金融機関に預けるのが当たり前ですが、世界では銀行口座を持っていない人がたくさんいます。その数は17億人とも言われています。

リブラはデジタル通貨なので、個人で簡単に保管や管理が行えるようになっています。つまり、銀行口座を持たなくても資産を保管できるのです。また仮想通貨の財布である「ウォレット」を使うことで、送金や決済も可能になります。

Libraプロジェクトには決済に特化した企業が多数参加

決済面においてもリブラは期待されています。それは、リブラのプロジェクトにおける協力企業が「ウーバー」や「リフト」「アンカレッジ」など、決済が絡む企業が多いからです。
これらの企業の他にも大手eコマースの協力もあるので、さまざまな決済においてリブラの活用が見込まれています。

専用の仮想通貨ウォレットもリリース

リブラでは、専用の「仮想通貨ウォレット」もリリースされる予定です。ウォレットとは仮想通貨を保管する財布のようなものです。基本的にアプリでできているものが多く、無料で入手できます。

リブラは専用のアプリをリリースし、このアプリを通して送金や決済ができる予定です。

まとめ

中国人民銀行は、中央銀行として初めて「デジタル通貨」を発行するとしています。人民元のデジタル通貨は、現金の代替となることを目指しているのです。

民間のデジタル通貨では個人情報が漏れてしまいますが、中国人民銀行のデジタル通貨なら匿名で利用できるので拡大が望めます。

中国がデジタル通貨の開発を急いだのは、フェイスブックのデジタル通貨である「リブラ」の影響です。これまでの国際金融の仕組みは米国が中心で、デジタル通貨では後れを取らないようにと開発を進めたのです。

今後のデジタル通貨の覇権争いがどのようになるかが注目されます。