FinTechとは

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FinTechとは・・・

世界的にFinTechと呼ばれる金融ITスタートアップ企業が数多く出現してきており、既存金融機関が独占的に提供してきた様々な金融業務(預金、融資、為替、クレジットカード、投資信託等)を「チェリーピッキング」しながら、切り崩し始めています。

FinTechとは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。もともとは、金融分野を得意とするITベンダーを指して使われていましたが、2013年頃から、先進的なITテクノロジー(ビッグデータやモバイル技術等)を活用して、金融に関する新しいサービスやソフトウェアを提供するスタートアップ企業を指して使われるようになりました。

海外における代表的なFinTech企業としては、決済分野におけるSquareやPFMサービスのMint、P2P融資を提供するLendingClubなどが挙げられます。これらのFinTech企業は、これまで金融機関が提供してこなかった新たな付加価値(利便性、価格等)を提供しており、既存金融サービスに不満を持つ世界の人々に、広く受け入れられ始めています。

これまでアメリカを中心にFinTech企業が発展してきましたが、ヨーロッパやアジア(日本を含む)などでも急速にFinTech企業が出現しており、2016年時点で、全世界で数千を超える企業が出現していると言われています。また、アクセンチュア社の調査によると、2015年のFinTechへの投資額は世界全体で、計223億ドル(約2兆6700億円)にのぼり、前年と比較すると約2倍に拡大したとされています。

FinTechが普及する背景

世界的にFinTechが急速に普及する背景としては、(1)先進的なITテクノロジーの出現、(2)市場としての金融業界の魅力、(3)既存金融サービスに対する利用者の不満、の3つが挙げられます。

(1) 先進的なITテクノロジーの出現

2010年前後から、スマートデバイスやビッグデータ、人工知能・コグニティブなどの先進的なITテクノロジーが次々と出現し、既存ビジネスと結びついて新しいサービスを生み出し始めています。

特に金融業界は、これまで信頼性や可用性、セキュリティ等を重視して、比較的安定したITテクノロジーを採用してきた側面もあり、これらのテクノロジーが及ぼす影響がより大きく表出している可能性が指摘されています。

(2) 市場としての金融業界の魅力

欧米の大手金融機関は100兆円規模の総資産を保有し毎年1~2兆円の純利益をあげているなど、金融業界は他の業界と比較するとスタートアップ企業にとっては魅力的な業界です。また、一口で金融業界といっても、銀行・証券・保険・クレジットカードなど実に幅広い業態があるほか、サービスも様々なものが提供されているため、「チェリーピック」しやすい構造になっていると言えます。

さらに、インダストリー系の業界とは異なり、スタートアップ起業時に具体的なハード(設備・土地・材料等)が不要であることから、初期投資額を低く抑えることができます。

このような状況から、スタートアップ企業から見ると金融業界は非常に魅力的な業界といえます。

(3) 既存金融サービスに対する利用者の不満

日本では既存金融サービスに対する利用者の不満が高まっている状況とは言えませんが、欧米では、特に世界金融危機(サブプライムローン問題、欧州ソブリン危機等)後に、大手金融機関の高額な報酬や公的資金注入に対する批判が集まったほか、既存金融サービスに対する利用者の不満(口座維持手数料やオーバードラフト手数料、高額な決済手数料、金融危機後の融資基準厳格化など)も高まりました。

多くのFinTech企業では、この利用者の不満の受け皿となる形で、利用者の不満を解消するソフトウェアやサービスを提供してきています。具体的には、口座維持手数料やオーバードラフト手数料ゼロのデビットカード、金融機関から融資を受けられない人(アンダーバンクド層)向けのP2P融資などが典型的な事例です。