対外接続系システム

対外接続系システムの概要

対外接続系システムは、全銀センターなどの外部センターと銀行内部システムとの接続を担う重要システム群です。対外接続系システムでは、外部センターとの通信制御処理(開局処理、閉局処理、プロトコル変換等)や電文変換処理などを行っています。

銀行間を繋ぐ銀行ネットワークシステムは、第2次オンラインの時代における内国為替のオンライン化(全銀システム)を皮切りに、顧客サービスの多様化や業務共同化の進展を受けて拡大を続けてきました。全銀システム以外のセンターして、ATM電文を中継する統合ATMセンターやクレジットカード処理を担うCAFISセンターなどがあります。(詳細は後章参照)

対外接続系システムは、このような複数の銀行ネットワークシステム(外部センター)と各銀行の勘定系システム等の内部システムとを接続するシステム(群)になります。

もともとの対外接続系システムは、外部センターと勘定系システムとの接続を担うことを目的としていたため、勘定系システムとセットでメインフレームを用いて構築されることが主流でした。

しかしながら近年、外部センターが拡大し、各外部センターに応じた業務処理を行う必要が出てきたことから、オープン系システムやパッケージを活用して、複数の個別システムを並列で構築する事例も増えてきています。

なお、信金・信組などの協同組織金融機関では、業態内での電文折返しや処理効率化のために、各業態内に統一的な対外接続系システムを構築しています。

対外接続系システムの概要図

以下に典型的な対外接続系システムの概要図を示します。

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外部センターの種類・概要

対外接続系システムの接続先である外部センターの種類について、代表的なものを説明します。

(1)全銀システム(全国銀行データ通信システム)

全銀システムの概要

全銀システムは、金融機関間の内国為替取引(他行振込)に関するオンライン送受信処理や取引に伴う資金決済額の算出を行うオンライン・ネットワークシステムです。現在では、ほぼ全ての民間金融機関が参画しています。

全銀システムでは、各金融機関から送信されてくる内国為替取引データをリアルタイムで処理し受取人の取引銀行へ送信しているほか、各金融機関単位で1日の受払差額(為替決済尻)を算出し、業務終了後に日本銀行に対して送信しています。

第6次全銀システム

2011年11月に稼働開始した第6次全銀システムでは、1億円以上の振込取引を日本銀行との間で即時に決済する機能(リアルタイムグロス決済(RTGS))や為替電文のXML言語対応などを実現しています。(ただし、実際にXML言語に対応している金融機関は無いと言われています。)

全銀システムの今後

2015年に金融庁で開催された「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」の報告書において、利用者利便性の向上と国際競争力強化を目的とした、決済インフラに関する5つの改革事項が定められました。その1つとして全銀システムの抜本的機能強化に向けた行動プランが表明されています。

この行動プランでは、以下の項目が明示されています。

決済インフラの抜本的機能強化
  • 平成30年(2018年)頃を目途に、全銀システムの加盟金融機関が参加する新しいシステム(「金融・ITネットワークシステム(仮称)」)を構築し、サービスを開始するとともに、平成32年(2020年)までに、企業間の国内送金指図において、現行の固定長電文を廃止し、XML電文に全面移行する。
  • この新しいシステムにおいては、企業からのXML電文による国内送金指図の受付機能を実装するとともに、最新の国際標準の先取的な採用(大量のタグ付きEDI情報の付加)を行う。これにより、企業は、決済情報と商流情報を連携させることによる、決済事務の効率化・高度化や、EDI情報を活用した自社事業の定量分析、新たなビジネスチャンスの発掘などが可能となる。
  • さらに、新システムをベースに、人工知能(AI)を活用したビッグデータ分析・活用機能等の追加を検討する。

このほか、直近では平成30年(2018年)頃を目途に稼働を開始する新プラットフォームにおいて、参加任意の24時間365日運用が行われることが決定しています。各金融機関においては、新プラットフォームへの対応検討(モアタイム対応要否、新システム構築要否、接続時間等)やシステム開発が必要となっています。

(2)統合ATMスイッチングサービス

統合ATMは、各金融機関が保有するATM/CDからの相互取引電文を中継し、他金融機関ATM/CDを利用した現金支払・残高照会を実現しているほか、ATMやインターネットバンキングからの振込先口座確認にも利用されています。

また統合ATMでは、日次で各金融機関の貸借金額の集計を実施した上で資金決済データ(支払金額と取扱手数料)を作成しており、各金融機関では当資金決済データに基づいて、翌営業日に全銀システム経由で資金決済を行っています。

統合ATMへの接続については、都市銀行、地方銀行、信託銀行等が直接オンライン接続しているほか、協同組織金融機関(信金、信組、JAバンク、労金)は、各業態システムを経由してオンライン接続しています。なお、ゆうちょ銀行については、統合ATMとは直接接続していないものの、後述するCAFIS経由等で各金融機関のATM/CDと相互接続を実現しています。

(3)CAFIS

CAFIS(読み:キャフィス)は、NTTデータにより提供されているクレジットカード関連の決済総合サービスです。クレジットカード会社とその加盟店及び各金融機関をオンラインネットワークで接続し、クレジットカードによる決済、キャッシング取引などの業務を実現しています。

また、デビットカード(J-Debit)の決済ネットワークとしても利用されているほか、コンビニATMやゆうちょ銀行ATMとの中継(統合ATMの代替)、口座振替受付サービス(収納機関受付方式)、国際ブランド(Visa/Master)デビットカード接続など、様々な決済サービスに利用されています。

(4)ANSER

ANSER(自動照会通知システム、読み:アンサー)は、NTTデータにより提供されている、金融機関と個人・企業間とを接続する金融取引サービスのネットワークです。

固定電話・携帯電話・FAX・パソコン通信・インターネット接続等の複数の通信手段を用いて、顧客(個人・企業)が直接、金融取引(残高照会や入出金明細の連絡、顧客の口座からの振込・振替など)を実施できるようになっています。

以前は、通信手段ごとに10程度のサービスが提供されていましたが、昨今の通信手段の変化により、旧来型のサービスが順次縮小・廃止されており、今後は、インターネットバンキングサービス(個人用:AnserParaSOL、法人用:AnserBizSOL)に集約されていくと考えられます。

(5)日銀ネット(日本銀行金融ネットワークシステム)

日銀ネットは、日本銀行と金融機関を接続し、オンラインで資金や国債の決済を処理するオンライン・ネットワークシステムです。日本銀行により運営されており、資金決済システムである「日銀ネット当預系」と、国債決済システムである「日銀ネット国債系」の2つで構成されています。

日銀ネット当預系では、金融機関が日本銀行に保有する当座預金間の資金決済(短期市場等による資金決済や、内国為替・手形交換制度等による資金決済)が行われており、日銀ネット国債系では、国債の売買に関する決済、国債発行時の入札・発行・払込みなどが行われています。

金融機関からの日銀ネットへの接続については、日銀ネット専用の端末(パソコン)を通じて接続する方法と、回線を経由して金融機関側のシステムと日銀ネットを直接接続する方法(コンピュータ接続)の2つがあります。

新日銀ネット

2015年10月に稼働を開始した新日銀ネットでは、最新の情報処理技術(プログラム言語やシステム連携基盤)を採用しているほか、XML電文や国際標準コード(ISO20022)などの採用を通じて、内外の決済システムや金融機関との接続性の向上が図られています。

また2016年2月には、夜間の稼動時間拡大(19時→21時)が行われ、クロスボーダーの資金・証券決済が迅速化されています。さらに2016年4月現在、利用金融機関や業界団体との間で、新日銀ネットのさらなる有効活用の方法について、議論が続けられています。

(6)マルチペイメントネットワーク

マルチペイメントネットワークは、各収納機関(民間企業、公共機関等)と金融機関とを接続し、税金や公共料金等の納付や口座振替の新規契約等をリアルタイムで処理する決済ネットワークです。「Pay-easy(ペイジー)」の愛称で普及しています。

マルチペイメントネットワークでは、大きく分けて以下の3つのサービスが提供されています。

ペイジー収納サービス

金融機関の窓口やATM、インターネットバンキング等のチャネル経由で公共料金や税金などの支払い可能とし、即時にその支払い情報が各収納機関に通知されるサービス。

ペイジー口座振替受付サービス

公共料金等の口座振替契約の受付を、収納機関の窓口端末やモバイル端末、あるいは金融機関の各チャネル経由で行うサービス。

ペイジー口座振替データ伝送サービス

収納機関と金融機関との間の口座振替データの授受を、媒体経由ではなくネットワーク経由でデータ伝送するサービス。

マルチペイメントネットワークと金融機関との接続については、自前で通信サーバーを置いて接続する方式と、ベンダーが提供する金融機関向け共同利用センターを介して接続する方式があります。

(7)マルチバンクFBサービス(共同CMS、CNS、SDS)

マルチバンクファームバンキングサービスは、顧客企業と複数の取引銀行をネットワークで接続して、一括してファームバンキングデータの送受信を実施できるサービスです。

銀行業態ごとに個別にセンターが構築されており、都市銀行向けに共同CMSセンター、地方銀行向けにCNSセンター、第二地方銀行向けにSNSセンターがそれぞれ構築されています。

各センターごとに提供メニューは異なりますが、総合振込や給与振込などの取引データを複数銀行あてに一括送受信できる一括データ伝送サービスや、複数銀行の取引明細や預金残高を一括照会できるマルチバンクレポートサービスなどが提供されています。

(8)でんさいネット(全銀電子債権ネットワーク)

でんさいネットは、全国の金融機関を接続し、電子記録債権(既存の手形・売掛債権等の問題点を克服した新たな金銭債権とされる)の登録、譲渡、支払等の処理を実施する決済ネットワークです。

でんさいネットは、間接アクセス方式を採用しており、各利用企業は取引金融機関の窓口やインターネットバンキング等を通じて、電子記録債権の発生記録、譲渡記録、自動支払を行います。

でんさいネットと金融機関との接続については、でんさいネットと直接接続する方法と、ベンダが提供するでんさいネット対応ASPサービスを利用して接続する方法があります。

製品・サービス一覧

対外接続系システムの製品・サービス一覧は、以下のページを参照ください。

 

参考文献

参考文献一覧

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  3. 山本統一(2010)『SEが基礎から学ぶ金融システムの教科書』日本実業出版社 328pp
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  5. 克元亮(2004)『SEのための金融の基礎知識』日本能率協会マネジメントセンター 341pp
  6. 室勝(2010)『図解で学ぶSEのための銀行三大業務入門』金融財政事情研究会 438pp
  7. 土屋清美(2008)『基礎から学ぶSEの金融知識 改訂版』日経BP社 256pp
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  10. 調査部(2014)「電子記録債権に関する最近の動向と今後の展望について」『金融情報システム』No.333(平成26年夏号) pp.24-41. 金融情報システムセンター
  11. 調査部(2013)「地域金融機関における電子記録債権への取組み状況と今後の課題」『金融情報システム』No.325(平成25年冬号) pp.104-121. 金融情報システムセンター
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