会計・バックオフィス

概要

これまで専用の会計ソフトが必要であった企業の会計管理について、クラウド型のサービスが出現しています。また会計以外も、人事給与、経費精算など企業のバックオフィス業務を統合的にサポートするサービスも出現しています。

米国等における具体的な動向

(1) クラウド型会計サービス

これまで企業の会計管理については、専用の会計ソフトや銀行との連携ソフト(ファームバンキングソフト)が必要でしたが、中小企業をターゲットにしたクラウド型の会計サービスが普及し始めています。個人向PFMサービスと同様、銀行口座からの自動明細取得機能や、請求書の管理・消込作業を省力化する機能等が提供されています。

(2) クラウド型バックオフィスサービス

会計だけでなく、経費管理や給与管理、人事管理、顧客管理など、企業のバックオフィス業務を統合的に提供するクラウド型のサービスが普及しつつあります。また、これらのサービスが相互に連携する動きが出てきています。

 

今後想定される影響

中小企業や個人事業主にとっては、請求書と支払データの消込作業が省力化できるなど、会計業務やバックオフィス業務の効率化を図ることができるメリットがあります。またスタートアップ企業は、より簡単に、かつ迅速にビジネスを開始できる可能性があります。

一方、既存金融機関にとっては、これらのサービスと連携することにより、中小企業に対してより高い付加価値サービスを提供できるようになる可能性がある反面、これまで当座預金や決算書等で囲い込んでいた中小企業の財務状況や資金動向等がFinTech企業にも知られてしまうリスクがあります。

また、将来このようなFinTech企業が、中小企業の資金需要をいち早く検知し融資サービスを提供するなど、その他の金融サービスに乗り出してくる可能性も指摘されています。

既存金融機関への示唆

日本においても、クラウド型の会計サービスやバックオフィス業務サービスが普及しつつあります。既存金融機関は、これらのサービスが自行の中小企業ビジネスに与える影響を分析した上で、自行の中小企業戦略に反映させていくことが求められます。

例えば、これらのFinTechサービスと積極的に連携し中小企業をトータルでサポートした上で顧客の財務データ・商流データを囲い込む戦略のほか、より付加価値の高い金融サービス(海外進出支援、事業性評価、キャッシュマネジメント、事業継承支援等)に注力していくなどの戦略が考えられます。

いずれにしろ、今後の中小企業金融については、貸出金利スプレッドの長期低迷の中で、与信企業の財務情報や商流情報などの情報をいかに素早く・正確に把握し、その情報を低コストで有効に活用できるかが大きな差別化要因になってきます。

そうした差別化を行うために、自機関の強み・弱みや外部環境を分析した上で、「自機関として何を目指すか」「内製化する領域、外部と手を組む領域はどこか」「半自動化を行う領域と人的リソースを配置する領域はどこか」「財務データと商流データを如何にして活用していくか」などを明確化する必要があります。